2011 Fiscal Year Research-status Report
ロジスティックモデルに基づく感覚・知覚実験法の研究
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23500257
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
降旗 建治 信州大学, 工学部, 准教授 (90021013)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 許容等価騒音レベル / うるささ尺度 / ロジスティック曲線 / 弁別閾値 / 精神疲労 / 感覚特性 / 長期蓄積疲労 / 補聴器 |
Research Abstract |
物理尺度に対応する各言語応答の累積分布曲線は、ロジスティック曲線で近似できる。しかしながら、7段階の心理尺度の場合、範ちゅう7の上限と、範ちゅう1の下限だけは、それに対応する比率がそれぞれ1と0で、その偏差値は無限大であるから、尺度化できな い。その問題点を解決するために、環境騒音評価法確立を目指して、「非常にうるさい」の上限「耐えられないうるささ」と「全く気にならない」の下限「聞こえない閾値」を、11名の学生を対象として室内実験により検討した。その結果から、個人個人の許容等価騒音レベルを推定する完全なロジスティックモデルが再構築できた。 疲労現象と密接な関係がある感覚特性として、過渡現象の影響を受けない2パルス刺激による新たな測定法を提案した。測定を高速化するため、可聴音、骨導超音波、振動に関する各ロジスティックモデルを構築し、数回の応答から検知閾値を推定することができ た。その推定値は短時間に連続して測定した場合、自己調整法よりも安定していることが分かった。疲労調査は、一般企業の労働者を対象として実施した。被験者は株式会社イチカワ群馬工場の従業員40名である。測定は、被験者一人につき一日に朝、昼、夕の3回実施し、1週間継続した。一人の被験者のデータ数は、仕事の都合があり、6回から15回まで分布した。総データ数は446である。調査項目は多岐にわたり、すべての測定項目に関して因子分析を行ったところ、「感覚特性」、「性別・睡眠時間・可聴及び触覚特性」、「循環器・年齢」、「視覚・年齢」、「短期疲労感」、「長期蓄積疲労・唾液アミラーゼ活性」、「睡眠」という7因子で構成されていることが分かった。新しい疲労評価法は,この7因子に関するレーダーチャートによる方法を提案した。 カクテルパーティ効果を補聴器にも実現するため、自然な頭外定位感が得られる新たな頭部伝達関数測定法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に予定していた一般企業における感覚疲労検査装置による調査と新しい耳栓型低周波マイクロホンを用いた非侵襲頭蓋内圧測定が、平成23年度に実施できた。現在、データ整理と論文纏めを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の口頭発表、集大成としての論文を投稿し、採録されることを中心課題と考えている。また、自動車運転シミュレータと立体テレビを組み合わせ、感覚疲労特性を中心に、入力頸動脈から出力外耳道内脈波までの伝達関数特性に及ぼす影響等を測定する。社会調査研究は、騒音問題が発生している地域住民の「フィールドワーク」を中心にデータ収集を実施する予定である。 (1)人間系の諸感覚に関する閾値、弁別閾値、許容値および主観的判断を求めるための統一的ロジスティックモデルの構築、および1回の測定結果だけから推定した各値の統一的測定誤差論に関する計算統計学を確立する。(2)環境騒音問題に関する「うるささ」の敏感度特性と地域特性(慣れ効果、苦情等)や職場環境との関連性を明確にする。(3)融合弁別閾値は、ヒトそれぞれの固有の感覚感度特性と疲労現象の関連性を明確にし、疲労の観点から見た許容限度閾値が得られるかどうかを検討する。(4)外耳道を閉塞した「イヤホン・マイクロホン」システムのモデルは、脈波などの生体信号モデルと楽音再生モデルに分けて、外耳道容積や鼓膜の音響インピーダンス等の個人差情報との関連性を明確にする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。 そこで、本年度は最近社会問題となっている「疲労に起因する居眠り運転による交通事故防止」を目的として、昨年購入した自動車運転シミュレータを利用して「感覚疲労現象に関する研究」を格段と進展させるために、リハビリテーション向け運転能力評価サポートソフト(Hondaセーフティナビ522,900円)を購入する。また、提案する「イヤホン・マイクロホン」システムは、DSPを用いてリアルタイム処理(逆フィルタと外耳道伝達関数補正)できるように設計・試作する。
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