2012 Fiscal Year Research-status Report
ロジスティックモデルに基づく感覚・知覚実験法の研究
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23500257
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
降旗 建治 信州大学, 工学部, 准教授 (90021013)
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Keywords | ロジスティックモデル / 心理学的側面 / 許容等価騒音レベル / 弁別閾値 / 最適受聴レベル / 感覚疲労 / 生理学的側面 / 頭蓋内圧 |
Research Abstract |
心理学的側面におけるロジスティックモデルは、物理尺度に対応する各言語応答の累積分布曲線がロジスティック曲線で近似できる点に着目し、1回の測定結果からでも、閾値、許容値、最適値等が推定できる新しいロジスティックモデルを提案した。具体的に①個人の許容等価騒音レベルモデル、②最小可聴限界(閾値)モデル、③自動車内楽音最適受聴レベルモデル、および ④ 2パルス刺激による感覚特性モデルなどを構築した。特に④は、感覚疲労の観点から、企業労働者の一週間連続測定、学生による24時間連続測定、フラッシュ効果(聴覚による視覚の錯覚現象)、3次元立体映像、およびアルコールの影響等に関して詳細に検討してきた。これらの結果から、生きるために必要な感覚特性は、個人差が存在するものの、眠らない限りある程度保持される傾向が示唆された。具体的に、因子分析結果から、各種疲労要因(測定時間帯、性別、年齢、主観的疲労度、疲労度チェックリスト、睡眠時間、起床時間、最高血圧、最低血圧、脈拍、唾液アミラーゼ)と感覚特性(聴覚 [可聴音と超音波骨導音]、視覚、触覚)とは統計的に独立な因子であると言える。したがって、このような感覚特性だけで疲労現象を把握することは困難であることがわかった。 そこで、新たに生理学的側面から、慢性疲労症候群のリスクファクターの一つと考えられる頭蓋内圧推定ロジスティックモデルを構築した。頭蓋内圧と容積の関係が指数関数で表されることは周知の事実である。その導関数を頭蓋内エラスタンスと定義する。指数関数は微分しても係数が変化するだけである。このエラスタンス特性は、内頸動脈脈波が微少容積変化に関係し、および外耳道内脈波が頭蓋内微少圧変化に関係していることから実測できる。これらの各分布はロジスティック曲線で近似でき、頭蓋内圧を推定するモデルを提案している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した心理的側面のロジスティックモデル構築に関する学生を対象とした室内実験は平成23年と平成24年度で全て実施し、目的とした全データが収集できた。また、調査研究は、「騒音が問題と考えられる幹線道路周辺地域住民」および「企業における慢性疲労度チェック」などのフィールドワークを中心にデータ収集を実施した。具体的には、 (I)人間系の諸感覚に関する閾値、弁別閾値、許容値および主観的判断を求めるため、各心理尺度の言語応答に対するロジスティック曲線の適合性(決定係数が0.9前後)を明らかにし、物理尺度を基準とした各被験者の言語応答に対応する感度から、対応する境界値を推定する共通なロジスティックモデルが構築できた。 (II)環境騒音問題に関する「うるささ」の敏感度特性と長野地域の幹線道路周辺の地域特性(慣れ効果、苦情等)との関連性を明確にした。 (III)視覚、聴覚、触覚に関する2刺激遅延時間に対する融合弁別閾値は、ヒトそれぞれの固有の感覚感度特性と疲労現象の関連性を明確にし、疲労の観点から見た許容限度閾値が得られるかどうかを検討した。この結果から、生きるために必要な感覚特性は、個人差が存在するものの、眠らない限りある程度保持される傾向が示唆された。つまり、疲労現象のリスクファクターと考えた睡眠、職場における時間帯、自動車運転、立体(3D)画像とTVゲーム、およびアルコールの影響等の要因と調査した感覚特性との明確な相関が得られなかった。 (IV)補聴器に関連した外耳道を閉塞した「イヤホン・マイクロホン」システムは、聴覚障害者を対象にして明瞭度試験を実施した。しかし、このシステムは満足のいく明瞭度が得られなかった。そこで、最初に聴覚障害者が使用して最良の明瞭度が得られる各構成要素を検討した。次に、新たな補聴器システムを再構築した結果、文章了解度が96%前後得られる補聴システムが開発できた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、集大成としての論文を投稿し、採録されることを中心課題と考えている。また、新たに生理的側面から提案している、慢性疲労症候群のリスクファクターの一つと考えられる頭蓋内圧推定ロジスティックモデルは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の平成24年度研究開発費補助金(ベンチャー企業への実用化助成事業)において、具体的な研究開発テーマ「非侵襲的頭蓋内圧モニタ装置の開発」が採択された。そのため、科学研究費の成果は、新たな商品化・企業化の可能性を拡大したと言えよう。今後の目標は、以下に示す。 目標1:ICP実測値との相関係数0.7以上、誤差±10%以内のシミュレーション可システムを構築(相関係数0.7以上であれば、次のステップの臨床試験に進む事が可能であり、相関係数0.7以上であれば、救急救命センターでの試用も可能である。 目標2:簡便かつ確実なセンサー装着方法の開発(医療用バルーンカテーテルを採用した耳栓センサー、スポイトの蛇腹部分とセンサーが一体化した頸動脈センサー) 目標3:救急搬送時の振動でも測定可能なアクティブノイズキャンセリングシステムの開発(救急車走行時や体動時の振動だけをピックアップできるセンサーの開発、有効な信号処理のためのソフトウェア開発、ワイヤレス通信方式の開発)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画案の研究費では20万円を論文掲載料(英文校正を含む)と研究成果報告書作成のために計上している。また、前年度未使用額の35万円は、次年度の研究遂行上必要な補助員の謝金として残したものである。
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[Presentation] 外耳道内音響式頭蓋内圧推定法に関する基礎的検討2012
Author(s)
中野 博斗、降旗 建治、多田 剛、中野 順、安本 智志、小池 徳男
Organizer
電子情報通信学会技術研究報告 EA2012-70, pp.31-36
Place of Presentation
牛岳温泉リゾート「山田交流促進センター」2F 研修室・実習室
Year and Date
20121027-20121028
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