2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500261
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
茅原 拓朗 宮城大学, 事業構想学部, 教授 (00345026)
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Keywords | 雰囲気音 / 二重符号化仮説 / 聴感評価 / 情動 |
Research Abstract |
H24年度は、本課題の作業仮説である雰囲気音の二重符号化仮説(映像作品等で場の雰囲気をあらわす効果音(雰囲気音)は大きく後景音と前景音の2要素によって構成されているとする仮説)の検証に向けて、H23年度成果から新たに研究の必要性が浮上した後景音の情動的効果について検討し、後景音が確かに情動を方向付けることが可能なことを確認できた。 方法としては、情動的反応をより直接的に喚起することが知られている嗅覚を指標として、事前に実験的に検討し分類した前景的情報としての「良いにおい」「中性的なにおい」「良くないにおい」に対して、H23年度に実際のドキュメンタリー・ニュース映像に付加されていることを見いだしたネガティブな情動を喚起する効果音と同じ種類の後景音(ドローン音)およびポジティブな情動を喚起すると考えられる音楽的な後景音が及ぼす影響をSD(Semantic Differential)法を用いて多次元的に検討した。その結果、被験者には特に音には注目させなかったにもかかわらず後景音の種類によってにおい対する評価が系統的に変化し、しかも、一般にポジティブな後景音よりネガティブな後景音の法が効果が大きいことを見いだした。この場合の音と臭いは特に物理的次元が一致するわけではないことから、情動のような高次の心理的反応によって媒介されたと考えざるを得ず、従って、後景音は確かに高次の何らかの好悪的反応を引き起こしそれが前景となる情報の判断に影響を与えることが確認できた。また、後景音の時間次元における視知覚への影響についても効果音のデザインにも資する新たな現象を見いだし欧州の学会で発表を行った。 さらに、音のより無意識的な影響を検討するために情動反応のよい指標となることが知られているPGR(PsychoGalvanic Response)の測定装置を購入し、H25年度以降に向けた予備的検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の成果となる知見から本課題の可能性を広げる新たな要因(後景音の情動的効果)を見いだしたため、当初計画からは若干内容が異なるものとなっているが、「研究実績の内容」でも述べたようにH24年度にはH23年度の知見を受けまたH25年度の方策にも繋がるような成果が得られており、最終年度であるH25年度には一定の結論も見込めることから、本課題の研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に後景音の情動的効果が明らかになり、また、PGR測定器の導入により背景的(無意識的)な情動の測定に向けて設備面でもある程度準備が整ったことから、最終年度であるH25年度では、後景音と前景音を組み合わせてそれらの相互作用について検討して、本課題が検証しようとしている雰囲気音の意味性・情動性における二重符号化仮説について一定の結論(モデル化)を得る。特に、後景音の背景的(無意識的)な情動喚起作用と前景音の「場のラベリング」作用(雰囲気をトップダウンに決める作用)の相互的影響関係に注目して検討し、雰囲気音の作成に一定の指針を得ることを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前述の推進方策に従い、H25年度は実験遂行のための機材(ただしH24年度に購入したPGR測定器を活用するための補助的なものが中心)と実験協力謝金を中心に研究費を使用する。また、外部への成果報告をさらに加速するため発表に係る旅費や資料・校閲等への使用割合も増加させる予定である。
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Research Products
(1 results)