2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500280
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
古川 徹生 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 教授 (50219101)
|
Keywords | 自己組織化マップ / SOM / テンソル分解 / 自己言及 |
Research Abstract |
(1) カノニカル位相保存写像 (CTM) と高次知識の自己組織化 (1-a) 基盤理論となるCTMに関して,2012年度は新たなプレイク・スルーを得た.従来用いていたベイズ理論の枠組みでは解の多重性を考慮していなかったため,適切な学習が行われないことがわかった.この問題を回避するには,解の多重性まで考慮したベイズ理論を用いる必要がある.この新たな理論より導出されるアルゴリズムの近似手法が経験的に得られた自己組織化マップ(ニューラルネット)になる可能性があり,本研究は新しい展開を得た.これは当初の計画にない新たな知見である.(1-b) 形状の集合をリーマン幾何学に基づき数学の体系とした形状空間論とわれわれの高階化自己組織化写像との理論的関連性を明らかにした.またわれわれの手法は形状空間論の工学的実装であり,高次知識を自己組織化する具体的なアルゴリズムになっていることも示した.(1-c) 新たな高階化手法として,非線形テンソル分解である「テンソルSOM」の開発を行った.またテンソルSOMを用いて欠損データを推定する方法も開発した. (2) 自己言及が可能な知的情報処理技術 2012年度の取り組みにより,「潜在因子分解法」という新しい情報処理のコンセプトを発見し,そのプロトタイプを実現することができた.これは観測データ集合から,観測対象の本質を表現する潜在変数と,観測者の視点を表現する潜在変数の両者を同時推定するものである.このアイデアにより「観測者の視点」を自然な形で情報処理に織り込むことが可能になった.この延長に「自己を観測する観測者の視点」があり,自己言及につながる成果である. (3) 知的ロボティクスや情報処理 (3-a) テンソルSOMを用いてE-mailトラフィックを解析し,コミュニティの人間関係解析に応用した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 当初の計画以上に進展 (1-a) 位相保存写像のベイズ的学習理論において,解の多重度を考慮することが本質的に重要であることを見出した.これは当初予想していなかったブレイクスルーであり,統計的機械学習の分野においても重要な発見につながる可能性がある.(1-b) テンソルSOMの発明に成功した.高階SOMを元に,非線形テンソル分解であるテンソルSOMのアルゴリズムを開発することができた.これはビッグデータ解析をはじめとして,他分野で応用可能な重要な技術と考える.(1-c) 潜在因子分解法という概念を発明した.単なるアルゴリズムの提案ではなく,観測データに潜む本質(潜在因子)をベイズ推定すると同時に,その推定結果をさらに因子分解するという概念の発見でもあり,今後の研究に重要な鍵を握ると考えている. (2) やや遅れている 当初予想しなかった重要な発見が相次いだため,申請時の進行計画どおりに進んでいない.特に正準位相保存写像の学習理論 (CTM) は解の多重性問題という重要な発見により深く掘り下げられた.そのためCTM理論の完成自体は最終年度まで持ち越すことになった.しかしこれは問題が生じたことによる遅れではなく,新しい発見による研究計画見直しであると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
いくつかの重要な発見・発明が相次いだため,これらを確立することを最優先する.特に優先するテーマはCTM理論とテンソルSOMの2点である. (1) CTM理論については,解の多重性というブレイク・スルーを得たため,全体的な理論構築を行う.(2) テンソルSOMは実応用性も高いため,理論だけでなく応用面も含めたアルゴリズム確立を行う. これら2点を最重要課題とし,さらに以下の取り組みも行う. (3) 潜在因子分解法については,概念とプロトタイプアルゴリズムまではできたものの,まだ未完成状態であり,試行錯誤を重ねる必要がある.また単に自己言及できれば良いわけではなく,知的情報処理にどうつながるかも明らかにしつつ研究を進める.(4) テンソルSOMを用いたコミュニケーション解析.テンソルSOMはE-mailやSNSなどのデータを元にコミュニティにおけるコミュニケーション解析に用いることができる.これは社会的知能にもつながるため,本年度も引き続き実施する.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
理論研究が主となるため,設備備品の購入は予定していない.当初の計画通り消耗品・旅費・謝金および論文作成に研究費を利用する. なお予定より物品費が少なくて済んだため25年度への持ち越しが生じた.しかし研究遂行には影響していない.
|
Research Products
(7 results)