2012 Fiscal Year Research-status Report
衝動的反応の制御メカニズムの個人差の解明に関する認知科学的研究
Project/Area Number |
23500329
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60399011)
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Keywords | 衝動性 / 報酬・罰 / セロトニン神経系 / 遺伝子多型 |
Research Abstract |
本研究は5-HT2A受容体遺伝子多型に注目し,その反応の成否にともなって与えられる報酬ないし罰の構造および特性不安が運動反応衝動性に与える影響の差異について,Go/Nogo課題中の行動指標ならびにVLPFC活動を測定することによって検討した。 実験の結果,5-HT2A受容体遺伝子多型が特性不安と関連すること,および罰条件下において運動制御衝動性およびこれを担うVLPFC活性に影響することが明らかとなった。まず,行動指標においてAA型の方がG型に比べてRTが短いことが見いだされた。この結果は,AA型の方がより衝動的エラーが多いという先行知見と,反応時間の観点から整合するものである。また,VLPFC活性および特性不安については,トリプトファン枯渇法による5-HT活性低下によって特性不安は減少する一方で,罰感受性は増加するという報告(Cools et al., 2007; 2008)と一致する。すなわち本研究によりは,特性不安の減少と罰感受性の増加という5-HT機能と関連する一見矛盾する知見を同一の実験系において示しえた。 興味深いことに,特性不安の低いAA型はG型に比べてRTが短く,罰条件におけるVLPFCの活性も高い一方で,AA型のみに着目すると特性不安が高いほどRTが短く,さらにVLPFCについては特性不安が高いほど活性が高かった。この特性不安とVLPFC活性および運動反応との関連については,今後,5-HTに加えてドーパミンその他の神経情報伝達の影響も加味して考慮する必要があるだろう。以上,本研究により,5-HT2A受容体遺伝子多型(A-1438G)による,特性不安および環境中の報酬や罰によるその運動制御衝動性,それらの基盤となる脳活動への影響が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は遺伝子解析のサンプルデータを蓄積を行った。続く平成24年度は,NIRSを用いた衝動性測定課題実施中の前頭前野の活動,および行動指標に対するセロトニン神経系遺伝子多型の影響について示しえた。 いずれも本申請計画に沿って,順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の作成したデータベースをさらに強化するために,サンプルを収集しその塩基配列を同定するとともに,これまでに行動指標,脳活動の指標において得たデータを,セロトニン神経系(セロトニン神経系遺伝子多型((1)5-HTTLPR{serotonin-transporter-linked promoter region (SS, L carrier)}, (2)5-HT2AR{serotonin 2A receptor(A-1438G)})以外の遺伝子多型との関連において検討する。 加えて,衝動的行動の制御への関与が明らかとなっている前頭前野腹外側部、前頭眼窩皮質、背側・腹側線条体を仮説領域とし,それらの領域がセロトニンによっていかに調整され,相互に協調しているのかについてfMRIを用いて明らかにする。 さらに,神経情報伝達物質および脳活動に関する知見を総合し,システム全体の振る舞いが、個々の脳領域のいかなる活動と関連するのかを明らかにし,衝動的行動の制御に関わるシステムの作動原理について,個人差を包括した統合的なモデルを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同一の実験課題において,fMRIを用いて観測される脳部位の活動へのセロトニン機能の影響について検討し,衝動的行動の発現と抑制に関わる作動原理を明らかにする。そのための研究費の使用計画は以下のとおりである。 ① 消耗品: 爪・毛根等よりDNAを抽出するために必要な試薬、遺伝子多型を同定するためのPCR(polymerase chain reaction)等に用いる試薬類、測定用品を計上する。 ② 旅費: 研究成果を公表し、最終的な研究成果へと反映させるための、国内学会1回、海外で開催の国際学会1回への参加旅費を計上する。 ③ 謝金: fMRIによる脳画像撮像につき、実験参加者への謝礼を1時間1200円として計上する。 ④ その他: 論文掲載料、および最終年度には報告書を印刷するための費用を計上する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] COMT Val 158 Met influences the perception of other's pain.2012
Author(s)
Himichi, T., Kaneko, M., Nomura, J., Okuma, Y., Nomura, Y., Nomura, M.
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Journal Title
Psychology Research
Volume: 2
Pages: 185-195
Peer Reviewed
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[Presentation] Involvement of the 5-HT2A receptor gene polymorphism in trait anxiety, in activity of VLPFC and in impulsivity: a NIRS study
Author(s)
Kajimura, S., Kaneko, M., Nomura, J., Canli, T., Koyama, T., Nomura, Y.
Organizer
Internationale Neuro-Psychopharmacologium (CINP)
Place of Presentation
Stockholm
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