2011 Fiscal Year Research-status Report
物体の持ち上げ時に知覚される重さに関する基礎的研究-慣性力情報の処理機構-
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23500336
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
川合 悟 帝塚山大学, 心理学部, 教授 (90177634)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 重さ / 重さ知覚 / 慣性力 / 長さ / 電動アクチュエーター / 振動特性 / 力特性 |
Research Abstract |
平成23年度は、平成23年度研究計画を実施する前に、今後3年間に渡る研究のための実験統制・環境を整えるための予備実験を行った。すなわち、(1)慣性力刺激装置の刺激強度の決定(平成23年度)、(2)持ち上げ実験装置(平成24年度)の試作、(3)刺激発生装置の刺激強度・刺激部位の決定(平成25年度)であった。(1)について、慣性力を生じる物体の内在要因(質量、重心、距離)と知覚される重さとの関係を調べる方法として、十字型直交刺激装置を製作することが目的だった。そこで65%以上の被験者に効果的に刺激できる刺激強度(質量、重心、距離)を決定するための予備実験を行った。健常な成人14名(19.5±2.0歳)が、同意後、リング(直径14mm)を介してワイヤーで吊り下げられた立方体を持ち上げた。被験者は、前方のスクリーンによって、立方体やワイヤーの長さ情報は得られなかった。重心-作用点の距離、質量、大きさを調整した5種類の立方体が2つずつ提示され1つ1つ持ち上げ、両者の重さを三件法(重い、軽い、類似)で比較した。各組み合わせ4試技、計80試技(30分)を行い、分散分析の結果、距離の主効果(F(2,26)=9.414, p < .001)がみられ、ワイヤーの長さで知覚される重さが異なることが明らかになった。次に(2)について、振動・力特性を検出するための持ち上げ装置を試作した。当初設計とは異なり一軸方向(左右)だけでなく、二軸方向(上下・前後)の振動・力特性が記録できるよう改良し、現在挙上速度(100mm/s)と高さ(50mm)を一定にした持ち上げ運動条件で、(1)で用いた立方体で生じる振動・力特性を現在、解析中である。最後に(3)について、振動発生装置の刺激強度と刺激部位を決定するために、被験者10名を用いて物体挙上時に知覚される物体の重さと振動の刺激強度および刺激部位との関係を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」とした理由は、平成23年度研究計画を実施する前に、今後3年間に渡る実験の実験統制・実験環境(特に、実験刺激の強度)を整えるために、3つの予備実験を行ったことによる。その背景は、各年次の実験はそれぞれ独立しているものではなく、相互に関連し合うためである。すなわち、23年度に用いられる持ち上げ刺激は、24年度には持ち上げ装置の刺激として、そして25年度の振動発生装置による実験にも用いられるからである。実施された予備実験は(1)慣性力刺激装置の刺激強度を決定する(平成23年度)ための予備実験、(2)持ち上げ実験装置製作(平成24年度)のための予備実験、(3)慣性力および重さの情報処理機構解明(平成25年度)のための予備実験であった。(1)については、申請当初では、十字型プレート3枚を3次元方向に直交させた持ち上げ装置を製作予定だったが、装置の大きさ、質量、重心が、異なる感受性を有する被験者の多く(65%<)に十分に効果的であるか検証する必要があった。特にワイヤーを介した持ち上げでは、直接把握による重さ知覚よりも弁別が曖昧になることも報告されている。そこで、まず立方体を用いて適正な刺激量を決定することにした。 (2) については、申請当初、持ち上げ装置から記録する振動・力特性は、垂直方向(上下方向)のみを想定していたが、精密把握では左右・前後の振動・力特性を考慮するべきとの示唆を得た。そこで、振動特性を3次元でとる工夫を重ねた。 (3)については、被験者に、どの筋群に、どの程度の振動刺激を与えると、大多数の被験者の固有受容器への適刺激となり得るか、その刺激強度と刺激部位の同定をするための予備実験を行った。以上のように、本研究の連続する研究のもっとも重要な、刺激強度の決定と、指標の選択によって「平成23年度の研究」については遅れが出たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の3つの予備実験により、本研究の大テーマである「人間は如何に物体が生じる慣性力を重さに反映しているか」がより明白に視覚化できるようになった。そこで、平成24年度では、予備実験の結果に基づいて、まず、十字型直交プレートの慣性力刺激装置を作製し(平成23年度の研究計画(1))、次に平成23年度研究計画(2)に従い、20名の健常成人被験者を用いて、「慣性力と知覚される重さの順位づけ実験」を実施する。すなわち、アイマスクの被験者は、ワイヤーを介して、錘の操作により重心を変化された2つの十字型直交プレートを持ち上げ、重さを比較する。そして、知覚される重さと錘の重心距離との関係に関する詳細なデータを収集する。次に、平成23年度より着手した平成24年度の研究計画(1)について、持ち上げ実験装置(Lifting Simulator:LS)を完成させ、被験者を対象とした上記の実験データ(質量、重心、距離と知覚される重さとの関係)および実験装置を用いて、今度はLSでそれらを持ち上げた際にLS把握部分周辺で生じる、振動特性および力の3次元的な特性を記録し、人間が知覚する重さと、その重さを生じる物体の手先部分で生じるであろう振動・力特性との関係を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の方針に示すように、平成23年度の予備実験の結果に基づき、平成23年度の研究計画(2)に必要な十字型直交プレートの慣性力刺激装置を製作する(100千円)。平成24年度の研究計画(1)に基づき、LSを製作するが、当初計画では、「位置センサー」による振動特性の検討を予定していたが(160×3千円)、予備実験の結果から、振動特性は、「力センサー」の方が、より精度が高いこと、また、2次元ではなく、「3次元」での検出が必要であることが明らかになった。そのため、3次元で振動特性が検出できる小型力センサー(400×2千円)および力センサーの3次元解析ソフト(300千円)および検出装置用のパーソナルコンピューター(200×1千円)を購入する。
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Research Products
(1 results)