2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500347
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
足立 浩平 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60299055)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多変量解析 / 因子分析 / 母数モデル / 交互最小二乗法 / 同時推定 |
Research Abstract |
「データ=共通因子×負荷+独自因子」と表せ,独自因子を誤差変数と扱う既存の因子分析モデルは,共通因子を変数と見なす変量モデルと母数と見なす母数モデルに大別されるが,本研究では,独自因子をも母数と見なして,誤差を加えた新たな母数モデル「データ=共通因子×負荷+独自因子+誤差」に基づく分析を同時因子分析(JFA)と名づけ,そのアルゴリズムの完成・解の性質の研究・既存の因子分析との関係の明確化を行う. 平成23年度の研究では,「共通因子×負荷+独自因子×独自分散の平方根」と表せるモデルが,データに出来るだけフィットするように,共通/独自因子得点・負荷・独自分散を推定するJFAのアルゴリズムを開発した.開発したアルゴリズムは,重みつき最小二乗法を計算原理として,着目すべき点は,データ・フィッテング法でありながら,データ行列そのものは要せずに,標本共分散行列さえあれば,因子負荷と独自分散の最適解を推定できる点にある.シミュレーションによって,本アルゴリズムが高い精度で真値を再現できることを確認した. 上記のシミュレーションでは,既存のポピュラーな変量モデル因子分析のアルゴリズム(単純/重みつき最小二乗法・最尤法)との比較も行った.シミュレーションのデータは変量モデルに基づいて生成されたにもかかわらず,JPAは既存法に優るとも劣らぬ挙動を示して,この事は,JPAを確立された因子分析のファミリーに含めることができることを示す.この研究の副産物として,EMアルゴリズムの最尤因子分析が不適解を与えないことを見出して,その後,この事実の数学的証明を与えることができた.この副産物も因子分析研究に寄与する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初,平成23年度は単純最小二乗法を計算原理とした同時因子分析(JFA)のアルゴリズムの開発を予定し,重みつき最小二乗法のアルゴリズムは次年度と計画していたが,平成23年度内に,単純最小二乗法を特殊ケースとして包含する重みつき最小二乗法のJFAを確立できた.これによって,JFAは尺度不変性という望ましい性質を持ちえたことになる. また,既存の主要な因子分析アルゴリズムのほぼ全てとの比較を,シミュレーションで達成しえたことも,予想外に早い進捗と考えられる.この副産物として,EMアルゴリズムが不適解を出さない知見を得たことは,因子分析研究において大きな意味を持つ. 平成23年度中に,本研究テーマに関した論文を2篇投稿できたことは,上記の「当初計画以上の進展」の具体的証左となろう.それらの審査結果を最近得て,公刊に向けて,見込みある結果を得ている.しかし,改稿指針を示したコメントも得ており,これに基づく論文の改稿が今後の研究の一部を占める.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,JFAで推定される因子得点は,既存の因子分析と同様に,回転の不定性以外の不確定性を持つが,一意に定まるJFAの因子得点の推定量を考案する.現時点では,因子得点はデータ行列と負荷行列の転置行列の積の特異値分解で表されるが,その分解の中の一意に定まる部分を推定量とすることを考えている.この推定量がどの程度真の因子得点を再現し得るかをシミュレーションによって評価する. アルゴリズム関係の課題として,同時因子分析(JFA)の長所の一つは,独自分散が負になる不適解が発生しない点であるが,独自分散が0になるケースの発生頻度を評価する. 同時因子分析の最尤法による定式化の検討も課題となる.最尤法は,JFAは「データ=共通因子×負荷+独自因子×独自分散の平方根+誤差」というモデル化に基づくが,誤差の分散と独自分散を分離して推定できるか否かの検討を行う. また,理論的研究として,JFAが高階数行列によってデータ行列を近似する方法と見なせるため,このことが,低階数近似である主成分分析とどのように異なるのかを理論的に整備する.さらに,データ・フィッテングでありながら,共分散行列だけで解を求めうるのがJFAの特徴であるが,そこで中核的役割を果たすのが,変数と因子の間の共分散の行列であり,この行列が持つ数学的性質を考究することも重要な課題となり,EMアルゴリズムなどとの比較を通して,因子分析のアルゴリズムの本質を見出せる可能性がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果を英語論文にまとめて,国際学術誌に投稿,および,既に投稿した論文を査読結果に基づいて改稿していく予定であるが,その際に英文校閲を受けるために研究費を使用する. さらに,研究成果を国内外の学会で発表するために,研究費を使用する.現在,キプロスで開催されるCOMPSTAT2012(国際計算機統計学会2012年大会)への出席と,スペインで開催され,その中で主催者に依頼されて因子分析に関するセッションを開くERCIM2012(科学技術計算・統計学会2012年大会)への出席がほぼ確定しており,他の国内学会においても発表を行う. また,現在保有しているコンピュータでは,シミュレーションに多大な時間を要する事態が生じれば,高速のコンピュータを購入して,演算の高速化,および,複数コンピュータを用いた計算によるコンピュータ間の演算作業分担を考慮している. 必要があるたびに,研究に必要な基礎数学・統計学・行動計量学関係の図書,および,ノート上での数式の展開などに有用な文房具などの購入に研究費を使用する.
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Research Products
(10 results)