2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500347
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
足立 浩平 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60299055)
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Keywords | 多変量解析 / 因子分析 / 母数モデル / 交互最小二乗法 / 同時推定 |
Research Abstract |
「データ=共通因子×負荷+独自因子」と表せ,独自因子を誤差変数と扱う既存の因子分析モデルは,共通因子を変数と見なす変量モデルと母数と見なす母数モデルに大別されるが,本研究では,独自因子をも母数と見なして,誤差を加えた新たな母数モデル「データ=共通因子×負荷+独自因子+誤差」に基づく分析を同時因子分析(JFA)と名づけ,そのアルゴリズムの完成・解の性質の研究・既存の因子分析との関係の明確化を行う.平成24年度は次の4つのことを行った. [1] JPAの独自分散=0という不適解の発生頻度が非常に少ないことを,シミュレーションによって確認した.しかし,独自分散と誤差分散を分離して推定することが難しいことを,数値的かつ理論的に確認した. [2] 不確定性のある因子得点の推定量として,中心推定量を提案した.シミュレーションによって,十分な精度で,真の共通因子得点を近似できることを確認した. [3] 因子分析の新たな手法の試金石として使われる実データへ同時因子分析を適用して,有益な解釈ができる解が得られることを確認した. [4] 同時因子分析のアルゴリズムに,因子負荷行列が完全クラスター構造をとるという機能を加えた新たなアルゴリズムを開発して,シミュレーションと実データ解析によって,その有用性を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,不適解の発生頻度の把握・誤差分散の分離推定の可否の明確化・試金石となる実データへの適用等を目的としたが,これらの目的は達成された.さらに,当初の予定に含めていなかった「完全クラスター構造」をもつ因子負荷量を求められるように,同時因子分析を発展させることを着想し,そのアルゴリズムを予想外の早さで完成でき,有用性も確認された. さらに,本研究に関して昨年度に投稿した論文2篇について,査読結果を得て,コメントに従った再研究と論文改訂に多くの時間を要したが,2篇の改稿原稿がともに採択されて,着実に研究成果を公刊することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次の3つの方向に向けて,同時因子分析の研究を発展させていく. [1] 同時因子分析の特徴は,その基礎になる母数モデルが,データ行列の高階数近似になっていることを明示するため,高階数近似である因子分析と,逆に低階数近似と知られる主成分分析との理論的比較を行い,低階数近似と高階数近似の対置によって,多変量解析の諸方法の体系化をはかる. [2] 同時因子分析のアルゴリズムの特徴は,データフィッテングでありながら,標本共分散行列だけで最適化ができる点にあるが,この部分で重要な役割を果たすのが,因子×変数の共分散行列であることに着目して,その数学的基礎を考究して,因子分析の理論研究に資する諸定理を提示していく. [3] 主成分分析の分野で,負荷量をできるだけスパースにする方法が発展しているが,同時因子分析も,因子負荷量をスパースにできるように発展させることが可能かどうかを検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果を英語論文にまとめて国際学術誌に投稿,および,投稿論文を改稿していく予定であるが,その際に英文校閲を受けるために研究費を使用する. さらに,研究成果を国内外の学会で発表するために研究費を使用する.現在,Latent variablesをテーマとしてイタリアで開催されるSIS2013 Statistics Conference,オランダで開催されるInternational Meeting of Psychometric Society,および,韓国で開催されるISI (International Statistical Institute)のサテライト大会での招待セッションでの研究成果発表を予定している. 以上に加えて,次年度は最終年度であるので,論文・学会以外の研究成果公表に研究費を使用する予定である.
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Research Products
(10 results)