2011 Fiscal Year Research-status Report
形状仮説および変化点仮説への2重累積和統計量に基づく総合的接近法とその様々な応用
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23500362
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
広津 千尋 明星大学, 連携研究センター, 研究員 (60016730)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 形状制約 / 変化点モデル / 多重累積和 / 時系列解析 / 容量反応解析 |
Research Abstract |
医薬品副作用自発報告のモニタリングを想定し、独立なPoisson系列の平均に対する凸性仮説とスロープ変化点仮説の検定理論および解析方法に関する研究を行った。凸性検定の完全類に属する統計量のうち、まず、2重累積和に基づく基準化最大対比を取り上げ、それが同時にスロープ変化点仮説に対するエフィシェントスコア検定であることを示した。この場合、帰無仮説の下での完備十分統計量は系列の総和と発生時刻を重みとする線形和の組となる。このうち系列の総和だけを与えた条件付き分布は多項分布で、それが相続く2項分布の積に分解されることはよく知られている。しかしながら、総和に併せて荷重和が条件変数となる分布についてよく知られた結果は無い。そこで、成分統計量の2階マルコフ性に基づき、同時分布を条件付き分布の積へ分解する理論を完成させた。これは、単に本ケースの分布を与えたのみならず、このような条件付き分布を求めるための方法論をも与えるものであり、分割表を含め様々な応用場面がある。次に、その理論に基づいて、条件変数を満たす標本空間とその確率を逐次的に計算する効率の良い正確アルゴリズムを得、そのソフト化を行った。副作用自発報告の例では系列の大きさが100に達し、標本空間が爆発して同時分布に基づく解析は不可能であり、この逐次法は不可欠である。これらの途中経過については、2011年度応用統計学会、2011年度国際統計学会 (58th Session of International Statistical Institute)で発表するとともに、Prof. L. Hothorn (Leibniz University of Hannover)、Prof. S. Mejza (Poznan University of Life Science)等と研究交換を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医薬品副作用自発報告のモニタリングにおいては、特定の医薬品と副作用のコンビネーションについて日々発現情報が集積され、頻度の増大等異常な変化の検出に興味が持たれている。それについては、単調増大傾向を対立仮説とするmax acc. t 法を実装し、その試行を重ね、種々問題点に対する改良を施している。一方、医薬品機構における安全管理の現場から、異常を検出し、対策を施した後に実際に効果があり、発生頻度が減少したことを確認する方法への強い要望があった。それに対して、本研究課題の凸性仮説とスロープ変化点仮説の検定が有用と思われた。2011年度において、解析ソフトが完成し、2,3の例について実際に解析を行い、不具合の無いことを確認した。しかし現場は、今、単調仮説問題(異常検出)の方法の実用性を精力的に検証しており、本研究で開発した方法の大規模な検証は2012年度に行うとしている。すなわち、本年度目的としたPoisson系列の平均に対する凸性仮説とスロープ変化点仮説の検定理論と解析ソフトはほぼ完成し、現場での検証を待つ状況にある。その後、検定棄却域の反転から、変化点に関する信頼集合を求めることとする。一方、凸性の仮定は入出力関係を表す用量反応曲線の解析において本質的である。その場合、基本分布は2項分布が想定されることが多いため、検定理論を2項分布へ拡張する研究を開始した。拡張の要点は、確率のカーネルの変更の他、逐次的に条件付き分布を構成するために必要な逐次変数間の不等式の変更である。これについてもほぼ理論を完成し、次年度最初にソフト化を行う予定である。今後、不等間隔系列への拡張、累積χ二乗型統計量への拡張、S字性仮説と変局点仮説への拡張等を行う予定であるが、初年度計画については十分達成されたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は、2011年度の研究成果を引き継ぎ、凸性仮説とスロープ変化点仮説検定の医薬品副作用自発報告のモニタリングにおける実装を目的とした有用性検証を行う。併せて、変化点推定のための信頼集合の理論と解析ソフトを完成させる。一方、前年度終盤に、用量反応曲線解析への応用のため2項分布への拡張を行っておりその拡張はほぼ完成したものの、一つ重大な問題点として、観測点が不等間隔である場合への対応がある。これは時系列解析には無い新たな問題である。それには、まず、逐次的に確率分布を構成するための逐次変数に関する不等式を再構成する。ここで、時系列の場合と異なり、逐次変数が不等式を満たす全ての整数として定義できないことが確率分布の逐次構成法を大変困難なものとする。そこでこの問題を解決し、凸性を利用した用量反応曲線の極低用量への外挿方法を提案する。これは食品の癌源性のように、実験範囲に無い極低用量におけるリスク推測に有用である。さらに、凸性の適合度検定には最大対比型統計量に加えて、累積χ二乗型統計量も有用と思われるため、その研究を開始する。これは、従来の平均、分散を超えて4次モーメントまでの計算を必要とし、計算上の困難をどう克服するかが課題である。2013年度は形状制約問題に関して、凸性の拡張としてS字性(Sigmoidal)推測に取り組む。統計量としては3重累積和、統計的性質としては3階マルコフ性を扱い、ソフト化は計算時間、記憶容量に関し細心の注意を要し、困難も予想される。しかしながら、前2年間の研究の蓄積を基に問題解決を図る。3年間で得られた各ソフトを出来るだけ使いやすい形で世の中に提供する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度は、国際会議 COMPSTAT 2012(Cyprus)に参加し研究発表の後、Padova大学を訪問し、講演を行う。さらに、Professor Fortunato Pesarin、およびProfessor Luigi Salmasoと研究打合せを行う。その国際会議登録料、航空運賃および滞在費として900,000円を予定する。また、国内研究集会参加旅費として100,000円を予定する。これらの発表資料作成、および整理費用として100,000円を予定する。一方、本年度は凸性検定の用量反応曲線解析への応用のためのソフトを完成させる。元来、本研究で扱う2階マルコフ性を利用した計算プログラムは、メモリーの節約、計算時間の短縮に様々な工夫を要する。用量反応曲線解析では基礎の確率分布として2項分布を想定し、観測点が不等間隔である場合への対応を要するため、さらに高度な技術が要請される。その開発費として300,000円を予定する。次に、計算機関連消耗品費として100,000円を予定する。以上の総計は1,500,000円である。
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