2012 Fiscal Year Research-status Report
形状仮説および変化点仮説への2重累積和統計量に基づく総合的接近法とその様々な応用
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23500362
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
広津 千尋 明星大学, 連携研究センター, 主幹研究員 (60016730)
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Keywords | 2元表プロファイル解析 / 2項分布 / 2重累積和 / 不等間隔時系列 / スロープ変化 / 凹性検定 / 用量反応曲線外挿 |
Research Abstract |
前年度に行った独立なPoisson系列に対する凹性仮説検定に関する研究の拡張を行った。前年度は凹性検定の完全類に属する統計量のうち、2重累積和に基づく規準化最大対比を取り上げ、帰無仮説の下での完備十分統計量の組を与えた同時分布を、条件付き分布の積へ分解する新たな理論を完成させた。さらに、その理論に基づいて、条件を満たす変数の標本空間とその確率を逐次的に構成する効率の良い正確アルゴリズムを得た。その際、応用場面として、医薬品副作用自発報告のモニタリングを想定したため、時系列の到着間隔は等間隔とした。今年度は、応用場面として、より一般に用量反応曲線の一般線形モデルに対する適合度検定を想定した。この場合、到着間隔に当たる用量水準は一般に不等間隔になり、それへの対処が必要となった。そこで、逐次的に確率分布を構成するための逐次変数に関する不等式の再構成を行った。ここで、逐次変数が不等式を満たす全ての整数として定義できないことが、確率分布の逐次構成法を前年度に比し大変困難なものとしたが、それを解決しソフト化も行った。併せて、用量反応解析で想定されることの多い2項分布への拡張も行った。さらに、次年度に行う予定であった、2元表データプロファイル解析について、大規模データを扱う必要性からストッピングルールの定式化を行い、副作用モニタリングデータに試行的に適用した。これらの結果については、2012年度応用統計学会、2012年度国際計算機学会 (20th International Conference on Computational Statistics)で発表すると共に、Prof. F. Pesarin (University of Padova)、Prof. S. Mejza (Poznan University of Life Science)等と研究交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医薬品副作用自発報告のモニタリングを対象として開始した凹性仮説検定を用量反応曲線一般線形モデル適合度検定へ拡張する研究を行った。用量反応曲線としてパラメトリックモデルの提案はいろいろあるが、現実問題に良く適合する例は多くない。とくに、パラメトリックモデルはリスク評価をデータの無い超低用量に外挿する際に多大の誤差を蒙る。この問題は、癌原生動物試験で許容用量を推測する場合に生じる。その場合、用量反応曲線の凹性が想定できれば、線形外挿により効率の良いリスクの信頼上限が得られる。基礎となる確率分布が正規分布についてはある程度の結果が得られているが、むしろ実験データとしては2項分布の方が多い。そこで、基礎とする確率分布を2項分布とし、同時に事象到着間隔を不等間隔に一般化する理論を完成させ、ソフト化もほぼ完了した。現在、各種例題で有効性を検証中である。 並行して行う予定であったカイ二乗型統計量への拡張に本質的困難はないが、副作用モニタリングに関連して最終年度に行う予定であった、プロファイル解析における大規模データに対処するためのストッピングルール開発を急ぐ必要性が生じ、その研究を前倒しで行った。そこで、カイ二乗型統計量への拡張はS字性および変曲点仮説検定への拡張と共に最終年度に行う。 なお、副作用自発報告のモニタリングについては、医薬品関係者において、増加傾向検出のための単調仮説検定と処置後のスロープ変化検出のための凸性仮説検定をセットで使用することに興味を示す者が多く、今年度はその普及対策も行った。このように、一部予定の変更はあったものの、前倒しで行った研究の成果、および前年度の成果の普及活動に鑑み研究は順調に達成されていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は、2012年度の研究成果を引き継ぎ、凹性仮説とスロープ変化点仮説検定の用量反応解析における有用性を検証し、実データに応用する。本年度は新たにS字性仮説、および変曲点仮説検定の理論とソフト化に取り組む。統計量としては3重累積和、統計的性質としては3階マルコフ性を扱い、ソフト化は計算時間、記憶容量に関し細心の注意を要し、困難も予想される。しかしながら、前2年間の研究の蓄積を基に問題解決を図る。用量反応曲線の凹性は、リスクの信頼上限をデータの無い超低用量に外挿する際に不可欠な性質である。この場合、パラメトリックモデルは多大の誤差を蒙ることが知られている。もしS字性検定によりS字性が検証されると、用量反応曲線全体では凹性が仮定出来ない場合でも、変曲点の下方では凹性が保証され、超低用量への外挿可能性が一気に拡大する。 次に、これまで集中的に行ってきた最大対比型統計量に替えて、二乗和型検定統計量の研究を行う。変化点推測には、最大対比型が適しているが、適合度検定としての検出力はむしろ二乗和型の方が高いことが期待される。前2年において作成した計算ソフトを利用するが、これまで2次モーメントまでの計算が求められたのに対し、3次および4次モーメントの計算が必要になる。とくに、S字性問題でこれがどれだけの計算量を要することになるのかは未知の領域である。最後に両者の検出力比較を行い、使い分けの方針を定める。なお、3年間で得られた各ソフトを出来るだけ使い易い形で世の中に提供する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は、三つの国際会議 7th International Conference on Simulation(Rimini, Italy), 8th International Conference on Multiple Comparison Procedures (Southampton, UK), International Conference : Simultaneous Inference 2013 (Hannover, Germany)に参加,研究発表を予定する。その国際会議登録料、航空運賃および滞在費として1,200,000円を予定する。また、国内研究集会参加旅費として100,000円を予定する。これらの発表資料作成、および整理費用として70,000円を予定する。 一方、本年度はS字性検定の用量反応曲線解析への応用のためのソフト、および新たなストッピングルールを盛り込んだ2元表プロファイル解析のソフトを完成させる。本研究で扱う3階マルコフ性を利用した計算プログラムは、過年度に増してメモリーの節約、計算時間の短縮に様々な工夫を要する。また、プロファイル解析も本年度は大規模データへの適用を想定し、高度に自動的なプログラムを開発する。これらの開発費として300,000円を予定する。
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