2011 Fiscal Year Research-status Report
癌放射線治療の線量時間効果関係を表す時間組込一般直線2次モデルの確立と応用
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23500369
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
関根 広 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40187852)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 直線2次モデル / 分割照射 / 放射線治療 / 乳房温存療法 / シミュレーション / 時間線量分割関係 |
Research Abstract |
一般直線2次モデル(GLQ model)として、分裂死と間期死の時間関係を包括し、致死しなかった細胞の再増殖も包含したモデル式を完成した。このモデルは分割照射の時間線量分割関係を一般化したモデルであり、一般化直線2次モデル(Generalized Linear Quadratic model; GLQ model) と命名した。GLQモデルは腫瘍に照射したときは、致死しない腫瘍細胞は指数関数的に再増殖するとする第Iモデルと、正常細胞は致死しない細胞は定常状態までシグモイドに回復するとする第IIモデルを作成した。 この第IIモデル式が利用できるかを検証する目的で、乳癌の温存術後の全乳房照射に伴う皮膚紅斑の時間的変化をGLQモデルで表すことを試みた。皮膚紅斑の程度を定量化するために分光測色計で皮膚紅斑を経時的に測定した。色は色相、彩度、明度の3要素で決定でき、各要素は分割照射の集積線量の増加に伴ってGLQモデルに従って推移すると仮定して、それぞれの要素のα,β値を導いた。それぞれの3要素の線量効果関係は異なるために、パラメーターの値も異なった。α/βは色相(Hue)で2.63, 彩度の逆数(1/Sat)で2.21, 明度(Brightness)で2.42であった。紅斑の発現の1/2時間は12日、回復の半回復時間は15日LabelingIndex 1%とした。 これらの値を用いて、視覚的に表すために、乳房の形状を関数的にディスプレイ上に再現し、乳房照射(50Gy/25fr/5week)に伴う皮膚紅斑の経時的推移を、表面の色調変化として逆投射することを行った。これにより、皮膚紅斑の推移をGLQ第IIモデルで表せることが分かった。この成果はHP(www/radbiolog.jp/)にアップロードした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一般直線2次モデルの概要を数式化することを集中的に行った期間があり、予想以上に早くモデル化できた。一つの理由として、正常組織反応の時間・線量・効果関係のモデル化がうまくいったことである。乳房温存療法における皮膚紅斑は正常組織反応であり、定量測定を経時的に行ったデーターがすでにあったことで研究が進展した。照射後の回復は定常状態まで回復することをもとに、パラメーターを決定しモデル化した。 悪性腫瘍の再発モデルは上記のモデルの回復関数を再増殖関数として指数モデルに変更することで表せることの見通しがたった。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線感受性の不均一な腫瘍塊に対して分割照射した場合の時間線量分割の効果はGLQモデルで表すことができるかを検討する。 臨床的にはある体積に放射線を均一に照射することは困難である。このことが再発の一因と考えられている。そこで、不均一に照射された腫瘍体積での時間線量分割の効果がGLQモデルで表せるかを検討する。 臨床では照射開始日は必ずしも月曜日ではない。そこで、照射開始日が異なることによる照射効果の差をGLQモデルで分析する。週間の分割回数による照射効果について分析する。 LQモデルを変形して生物学的効果線量BEDを算出しているが、GLQモデルを用いて生物学的線量を算出することが可能か検討する。 ホームページを随時更新し、英文のホームページを作成する。平成23年度の予算執行では、最終的に「残金1,835円」が計画的に使用していたにも関わらず発生したが、微々たる端数であり、来年度の研究経費の一部として使用する予定である。」
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
放射線感受性の不均一な腫瘍塊に対して分割照射した場合の時間線量分割の効果はGLQモデルで表すことができるかを検討する。 臨床的にはある体積に放射線を均一に照射することは困難である。このことが再発の一因と考えられている。そこで、不均一に照射された腫瘍体積での時間線量分割の効果がGLQモデルで表せるかを検討する。 派生研究として、小さな腫瘍を安静呼吸下で照射をする場合には、呼吸の位相を考えないと腫瘍への線量低下を起こす恐れがある。近年、高精度な照射では呼吸移動に対する対策が検討されている。そこで、呼吸移動する腫瘍に対する照射を、呼吸波の閾値を変化させて呼吸の位相と同期させて照射する、シミュレーションモデルを作成する。以上の研究成果を、国内の学会、および国際学会で発表する。また、ホームページの更新をする。なお、平成23年度の予算執行では、最終的に「残金1,835円」が計画的に使用していたにも関わらず発生したが、微々たる端数であり、来年度の研究経費の一部として使用する予定である。」
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Research Products
(4 results)