2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500375
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
青西 亨 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (00333352)
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Keywords | カルシュムイメージング / 状態空間モデル / ベイズ統計 / 細胞外刺激 / 樹状突起 / カルシウムウエーブ / 粒子フィルタ / 非負因子分析 |
Research Abstract |
近年、蛍光イメージング装置の発達により、細胞内の分子動態を時空間的に高解像度で計測可能となった。しかし、この手法は以下の問題を内包している。1 : ノイズを如何に除去するか。2 : 蛍光色素とカルシウムイオンの化学反応を経た2次的な情報である蛍光シグナルから、如何にカルシウムイオン濃度を定量的に求めるか。3 : 大量の時空間データから如何に重要な情報を抽出するか。これらの問題を解決するため、以下の研究を行う。研究(I) : 蛍光シグナルからカルシウム濃度を推定する統計的較正法を確立する。研究(II) : (I)を空間的に拡張し、時空間カルシウム動態の定量的推定法を確立する。研究(III) :多細胞イメージングのためのマルチスケール統計解析法を開発する。 平成24年度は、研究(III)を中心に研究を行った。共同研究を行っている東京薬科大学生命科学部宮川研究室では、複数の細胞を蛍光色素で染色するボーラスローディング法を用いて、多細胞のカルシウムシグナルを同時計測する実験手法を確立している。この手法を用いて計測された海馬CA1領域の高解像度動画像データに、我々が開発した統計解析法を適用して、詳細なカルシュウム動態の解析を行った。本解析法により、各CA1錐体細胞の樹状突起と細胞体、グリア細胞などの機能単位ごとのカルシュウムシグナルに分離できることを確認した。次に、脳波を模擬した細胞外交流電場を海馬スライスに与えた場合の海馬CA1領域の多細胞イメージングデータに本解析法を適用した。微弱な細胞外交流電場に対して、樹状突起や細胞体のスパイク状のカルシュウムシグナルが位相引き込みを起こすことが分かった。これは、化学シナプスを介した神経間相互作用とは異なった細胞外電場を介した非シナプス的相互作用が存在する可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究(I):アルゴリズムを開発し、数値実験によるアルゴリズムの有効性の検証が完了している。また、東京薬科大学生命科学部宮川研究室の協力のもと生理実験も完了しており、実データに対する本アルゴリズムの有効性の確認も行っている。現在、これらの結果をまとめ、国際論文誌への投稿準備中である。 研究(II):アルゴリズムを開発し、数値実験によるアルゴリズムの有効性の検証が完了している。既に国内会議と国際会議での発表を行った。しかしながら、生理実験による樹状突起内のカルシウムウエーブの測定が進んでおらず、実データへの適用ができていない。 研究(III): アルゴリズムを開発、数値実験によるアルゴリズムの有効性の検証、実データへの本アルゴリズムの適用も完了している。国際論文誌へ2編の論文を投稿する準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究(I):論文の執筆を完了し、英文論文誌に投稿する。 研究(II):樹状突起内のカルシウム波の実データの提供を受け、我々が開発したアルゴリズムを適用する。 研究(III): 我々が開発した非負因子分析を用いた手法では、細胞以外のバックグラウンド成分も非ゼロ成分の因子として検出してしまう問題が起きる。実データに本解析法を適用する際、手動の閾値処理によりこの細胞外の非ゼロ成分を消去しないと、機能単位ごとのカルシュウムシグナルに巧く分離することが出来ない。そこで我々は、非負因子分析の目的関数にスパース項を導入した手法を開発する。スパース項が閾値の役割を果たし、今まで手動で行ってきた閾値処理を自動化できるものと期待される。また、スパース項の導入により、解の不定性が減少し、検出性能が向上することが予想される。 検出した機能単位毎のカルシュウムシグナルから、機能単位間の相互作用を推定するアルゴリズムを開発する。平成24年度、微弱な細胞外交流電場に対して、細胞体や樹状突起のスパイク状のカルシュウムシグナルが位相引き込みを起こすことを示した。我々は、この位相引き込みに着目する。機能単位ごとの位相関係よりこれらの間の有効相互作用を推定するアルゴリズムを開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(30 results)