2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500382
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
勝山 成美 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00291906)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 奥行き知覚 / キャストシャドウ / 単眼性奥行き手がかり / 両眼視差 / V3A野 / 頭頂間溝 |
Research Abstract |
本研究の目的は、キャストシャドウによる物体の奥行き方向の動きの知覚について、その脳内メカニズムを解明することである。初年度は、ヒトを対象とした心理物理実験と、機能的MRI実験を行なった。キャストシャドウの動きによって、画面中央の正方形の物体が奥行き方向に往復運動をしているように見える錯視動画(square-over-checkerborad錯視)を用い、これを観察している時の脳活動と、両眼視差(ランダムドットステレオグラム)によって、同じ大きさの正方形が実際に浮き上がって往復運動をしているように見える動画を観察している時の脳活動を比較した。その結果、錯視動画を観察している時は、両側のMT野、V3A野などの視覚前野に加え、頭頂間溝の後部に有意な活動が観察された。ランダムドットステレオグラムによる物体の動きを観察している時も、これと同じ脳部位に活動が認められた。次に、錯視動画から正方形が浮き上がって見えるカットを静止画として提示し、同様に正方形が浮き上がって見える静止状態のランダムドットステレオグラムを観察している時の脳活動を調べると、動きに反応するといわれるMT野の活動がなくなり、V3A野と頭頂間溝にのみ共通の活動がみられた。これらのことから、キャストシャドウによる奥行き知覚は、V3A野から後部頭頂間溝に至る経路で処理されており、これは両眼視差による奥行き知覚と同じ領域であることが示唆された。しかし機能的MRI実験の結果のみでは、V3A野と頭頂間溝では、同一のニューロンがキャストシャドウによる奥行き方向の動きと、両眼視差による動きの両方に反応するのか、あるいはそれぞれに反応特性をもつニューロンが混在しているのかを知ることができない。この問いに答えるため、次年度以降はサルのV3A野と頭頂間溝から単一ニューロン活動の記録実験を行なう予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、初年度にヒトを対象とした機能的MRI実験を行ない、次年度からは機能的MRI実験で得られた結果をもとに、サルによる電気生理実験を行なう予定である。平成23年度は機能的MRIを行ない、キャストシャドウによる奥行き知覚には、ヒトの脳では後頭葉から頭頂連合野に至るV3A野と後部頭頂間溝が関与していることが明らかになった。この結果をもとに、現在はサルの脳の相同部位からニューロン活動を記録する実験を準備中であり、本研究はおおむね計画通り進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、サルを用いた電気生理実験を中心に研究を進める。 まず、ヒトにおける機能的MRI実験で使用したのと同じ、両眼視差(ランダムドットステレオグラム)とキャストシャドウの動きによって物体が奥行き方向に動いて知覚される動画を用い、物体の奥行き方向の動き(接近・離反)の弁別課題を行なわせることで、サルもキャストシャドウによる奥行き知覚を行なっていることを行動学的に示す。 次にサルの脳において、ヒトの脳で活動が観察されたV3A野、頭頂間溝後部の相同部位から単一ニューロン活動を記録する。まず、両眼視差(ランダムドットステレオグラム)によって表現された奥行き方向の物体の動きに特異的に反応するニューロンを同定し、次にそれらがキャストシャドウの動きによってもたらされる物体の奥行き方向の動きにも反応するかどうかを調べる。 ニューロン活動の記録が終了したら、記録部位にニューロン活動を抑制する薬物を局所注入し、弁別課題の成績にどのような影響を与えるかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、研究費をサルにおける電気生理実験にために使用する。備品としては、サルに両眼立体視を行なわせるための3Dディスプレイと眼鏡型シャッター、およびその周辺機器が中心となる。消耗品としてはニューロン活動を記録するための電極、外科的手術や術後のケアに必要な薬物などが中心になる予定である。
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Research Products
(2 results)