2011 Fiscal Year Research-status Report
神経伝達物質のG蛋白質共役型受容体刺激によるErbB4の制御とシナプス機能
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23500451
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山本 秀幸 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60191433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲嶺 三代美 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20381105)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | Cキナーゼ / ErbB4 / GnRH / Gタンパク質共役型受容体 / GT1-7細胞 / ニューレグリン1 / 神経細胞 / siRNA |
Research Abstract |
応募者らは、培養神経株細胞であるGT1-7細胞を用いて、Gタンパク質共役型受容体の短時間の刺激ではErbB4の活性化が起こり、長時間の刺激では、ErbB4の限定分解が起こることを見いだした。今回、ErbB4の限定分解反応について、その生理的意義と細胞内情報伝達機構について検討した。 (1)細胞膜に存在するErbB4が分解されるかを、細胞膜蛋白質ビオチン化法により検討した。細胞膜外に露出したタンパク質のリシン残基のみをビオチン化した後に、GnRHで細胞を処理し、ビオチン化タンパク質を回収したところ、ビオチン化ErbB4が減少していた。すなわち、細胞膜に存在するErbB4が選択的に分解されることが明らかになった。(2) GnRH処理後に細胞を再度GnRHで処理すると、初回のGnRH処理に比べてERKのリン酸化が減少した。また、GnRH前処理後に、細胞をニューレグリン1で処理した場合のERKのリン酸化も著明に減少した。これらの結果から、ErbB4の限定分解により、ErbB4の脱感作が起こることが明らかになった。次に、GnRH処理からErbB4の限定分解にいたる細胞内情報伝達機構について検討した。(1)関与するGタンパク質を同定するために、薬理学的実験とsiRNAを用いたノックダウン実験を行った。その結果、調べた全てのGタンパク質は、本反応には関与しないことが明らかになった。対照実験として行ったErbB4の活性化反応には、G11タンパク質のみが関与することが明らかになった。(2)薬理学的実験により、反応にCキナーゼが関与することが明らかになった。さらに、ノックダウン実験により、関与するCキナーゼのアイソフォームを決定した。その結果、classicalタイプのCキナーゼは、ほとんど関与せず、novelタイプのCキナーゼが主に関与することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた細胞膜外に露出したタンパク質のビオチン化実験から、細胞膜に存在するErbB4のみが分解され、細胞質や小胞体膜に存在するErbB4は分解されないことが明らかになった。また、GnRHやニューレグリン1による応答の変化からErbB4の脱感作が起こることが証明された。これらの実験から、当初の目的の通りに、ErbB4の限定分解の生理的意義が明らかになった。また、siRNAを用いたノックアウト実験から、当初の予想通りに、ErbB4を限定分解する蛋白質分解酵素としては主に、tumor necrosis factor-α-converting enzyme (TACE)が関与することがほぼ明らかになった。次に、ErbB4の限定分解に関与するGタンパク質の同定を試みた。当初は、Gqタンパク質かG11タンパク質が関与すると予想していたがどちらも関与しないことがわかった。GnRH受容体がGタンパク質共役型受容体であることから、関与する可能性のあるGタンパク質を全て検討したが、どれも関与しないことが明らかになった。対照実験により、実験は正確に行われていることは明らかであり、これらの長期間の実験から、Gタンパク質には共役しない細胞内情報伝達機構が、GnRH受容体刺激により活性化されることが示唆された。さらに、関与するCキナーゼについては、当初予想していたclassicalタイプではなく、novelタイプに属するCキナーゼが関与することが明らかになった。Novelタイプに属するCキナーゼの活性化機構については不明な点が多い。これまでの研究結果は、未知の細胞内情報伝達機構がnovelタイプに属するCキナーゼを活性化することで、最終的にErbB4が限定分解されることを示唆している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ErbB4の限定分解の分子機構の検討Tumor necrosis factor-α-converting enzyme (TACE)が関与する可能性を過剰発現実験によりさらに検討する。さらに、novelタイプに属するCキナーゼの活性化機構について詳細に検討する。ノックダウン実験からは、現在、デルタアイソフォームの関与が最も考えられる。デルタアイソフォームは様々なリン酸化酵素によりリン酸化されて活性化されることが知られていることから、デルタアイソフォームの活性化とその活性化機構について詳細に検討する。さらに、その活性化機構の検討の中から見いだされた分子がGnRH受容体刺激により活性化される機構を詳細に検討する。2.ErbB4の活性化機構の検討とニューレグリン1(NRG1)の産生・放出の測定法の開発 ErbB4の活性化反応を研究する目的で、NRG1前駆体の細胞外領域にアルカリフォスファターゼを融合させた融合タンパク質を安定に過剰発現するGT1-7細胞を作製する。本細胞を用いて、NRG1の産生・放出を細胞培養液中のアルカリフォスファターゼ活性を測定することで定量する。アルカリフォスファターゼの測定法が有効に機能しない可能性もある。その場合は、NRG1のELISAによる定量を検討する。また、ErbB4の活性化反応を検討する。ErbB4の活性化反応は、チロシン残基が自己リン酸化されたErbB4を認識する抗体を用いた免疫ブロット法により検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
TACE、Cキナーゼの各種アイソフォーム、NRG1、ErbB4等に対する抗体は市販の抗体を購入する。培養細胞の刺激や免疫ブロットおよびELISAには、高純度の試薬が必要である。また、TACEやNRG1のクローニングや融合タンパク質の作製には、高価な分子生物学的実験用の試薬が必要である。PCRに使用するプライマーとsiRNAも多数注文して購入する。ほとんどの実験が培養細胞を用いて行うため、無菌的な操作に必要な実験器具が大量に必要である。特に、GT1-7細胞の培養には、通常の培地に加えて特別なロットの牛胎児血清と培養試薬が必要である。
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Research Products
(6 results)