2012 Fiscal Year Research-status Report
恐怖記憶の消去学習を司る扁桃体シナプス伝達の特性と調節機構の解明
Project/Area Number |
23500474
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
関口 正幸 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所疾病研究第四部, 室長 (80260339)
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Keywords | 情動性感覚記憶 / オプトジェネティクス / シナプス / 神経回路 / 扁桃体 |
Research Abstract |
動物が恐怖や強いストレスに遭遇すると、それらに対して潜在型の負情動性感覚記憶が形成される場合がある。この記憶はしばしば行動や認知を制約したり歪めたりすることがあり、それゆえ、負情動性感覚記憶の修飾に重要な脳内メカニズムの解明は『不安障害等の精神疾患のエビデンスに基づいた治療法開発』に有用な基盤情報となりうる。応募者は『負情動性感覚記憶の修飾(再固定・消去・リモート化)に重要な神経回路・脳内分子の解明』を大目標としてマウスを用いた研究を行っている。平成24年度には以下の実験を行った。 (1)負情動性感覚記憶のひとつと考えられる『恐怖記憶』の獲得、固定化や再固定化に重要な脳部位として最近注目されつつあるanterior cingulate cortex (ACC) から扁桃体基底外側核(BLA)錐体細胞へのシナプス伝達をオプトジェネティクスを用いて選択的に誘発するスライスパッチ実験系を開発した。当該シナプス伝達を選択的且つコンスタントに記録できる実験系を確立した。 (2)上記実験系を用いて、学習性無力感(learned helplessness)誘発ストレスを経験したマウスのACC → BLAシナプス伝達をコントロールマウスと比較した。その結果、ストレス負荷マウスでは興奮性アミノ酸受容体のひとつのサブタイプを介するシナプス電流の有意な増加が見られた。この結果は、当該ストレスによりACC → BLAシナプスが変化する可能性を示唆していた。 ACC → BLAシナプス伝達の増強は恐怖記憶の獲得、固定化や再固定化を促進することが考えられ、これがシナプスレベルでの恐怖記憶の強化に繋がる可能性が考えられた。現在この可能性に関して検証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ACC → BLA シナプスをオプトジェネティクスにより選択的且つ安定に活性化するスライスパッチ実験系を確立した。 (2)ストレス負荷マウスとコントロールマウスで、上記シナプス伝達に違いを見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ストレスによる消去学習鈍化に当該シナプス伝達の変化が関与しているかどうかの検討。 (2)ストレス負荷マウスの消去学習以外の行動の検討。 (3)ハロロドプシンを用いてACC → BLAシナプス伝達を抑制することにより個体のストレス感受性に変化が起きるかどうかの検討。 これらの点を明確にすることにより、本研究の大目標である『負情動性感覚記憶の修飾(再固定・消去・リモート化)に重要な神経回路・脳内分子の解明』に近づくことが出来ると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年の報告書に記したように、1年目の平成23年度に使用額を低く抑えることができたが、2年目の平成24年度は概ね計画どうりの研究費使用状況であった。次年度平成25年度は、ハロロドプシンを用いた実験系に予算を充てることを計画している。
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Research Products
(4 results)
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[Patent(Industrial Property Rights)] 恐怖記憶の軽減方法2012
Inventor(s)
関口正幸、山田大輔、竹尾仁良、関和佳子、和田圭司
Industrial Property Rights Holder
関口正幸、山田大輔、竹尾仁良、関和佳子、和田圭司
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
PCT/JP2012/066817
Filing Date
2012-06-29
Overseas