2011 Fiscal Year Research-status Report
側頭葉てんかん・海馬硬化と局所皮質異形成との関連性の解析
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23500498
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高瀬 敬一郎 九州大学, 大学病院, 特任講師 (00467903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
重藤 寛史 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (50335965)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 実験てんかん |
Research Abstract |
側頭葉てんかんの一因として皮質異形成が注目されている。私たちはこれまでの研究で、ラット胎児大脳に寒冷傷害を加えることで大脳皮質に局所皮質異形成を作成することに成功し、電気キンドリング刺激により海馬のてんかん原性獲得が早まることを証明した。本研究ではこのモデルを用いて側頭葉てんかんが発生する機序と、側頭葉てんかんと皮質異形成との関連を明らかにすることを目的とした。そのためにこの多発性皮質異形成モデルを用いて、自発的側頭葉てんかんが生じるか否かを長時間脳波ビデオモニタリングで検討するともに、その機序を免疫組織学的、神経生化学的手法により解明する。皮質異形成がヒトでみられる海馬硬化を来すことを証明する。 平成23年度行った実験は、皮質異形性ラットの作成と、電極設置手術、脳波・ビデオ記録、記録後の組織染色である。皮質異形成ラットは胎児期に冷却プローブで大脳皮質の一部を寒冷傷害することで作成した。異形成群 (グループA:左半球傷害, B:両側傷害, C:両側広範囲傷害)、sham群 (グループD)、コントロール群 (グループE) それぞれの左右前頭葉に硬膜外電極、左右海馬に深部電極頭蓋内電極を挿入し、1日6時間、P77まで脳波ビデオモニタリングを行った。皮質ないし海馬からのてんかん発射とビデオ上のてんかん所見を観察したところ、両側広凡傷害のグループC群のうち4匹に深部電極よりの自発的発作波と側頭葉てんかん類似の意識減損発作を観察し得た。それ以外の個体には明らかなてんかん波型・発作を認めなかった。モニタリング終了後P78、P98、P118、P138までラットを飼育した上で、ラット脳を取り出し組織学的・免疫組織学化学的検索を行った。染色法はHEとKB染色にて行った。グループA-Cの傷害下皮質に皮質層構造の乱れ、大型錐体細胞の消失を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度は皮質異形性ラットの作成と、電極設置手術、脳波・ビデオ記録、記録後の組織染色を予定していた。各グループそれぞれ7匹ずつ作成、電極埋め込み手術、ビデオ脳波記録を行う予定であったが、異形成群 (グループA:左半球傷害,B:両側傷害,C:両側広範囲傷害) において、母ラット出産時に流産する個体が増え、しかも電極設置手術の際に過麻酔や術後脳内出血 (と思われる) 合併症にて死亡する個体が増えた。またそれ以外の個体にも、脳波記録時や通常の飼育時に電極抜去する個体が出現した。故に未だ規定数に達しておらず、現時点でP138までの実験が終了している個体がグループA:4匹、グループB:3匹、グループC:2匹、グループD:3匹、グループE:5匹にとどまっている。またHEとKB染色にて行った組織染色は皮質の観察しか為し得ておらず、海馬や周辺組織の観察は今後行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、未だ規定数に達していないモデルラットの作成、脳波記録を行い、予定数に達するよう努力する予定である。また海馬組織の組織学的検討と、NMDAR1、NMDAR2A、 NMDAR2B、 GAD65/67、 GLAST、 GLT-1での免疫組織学的検討を行い、NMDA受容体、GABAニューロン、グルタミン酸トランスポーターの変化を観察すると共に、画像処理ソフトを用いたSemi-quantitative densitometric analysisを用いて定量し、各群間で比較検討する予定としている。また上記で組織学的に検討した皮質・海馬組織の受容体やトランスポーター蛋白の発現遺伝子の検討と、TBR1、FOXP1、SATB2、OTX1、CUTL1、CTIP2といった正常皮室構造と一致する蛋白の免疫染色をもって、最終的にこのモデルラットの組織異常の形態学的・機能的解明と、てんかん発症のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物、実験用電極・電線、組織染色、染色用抗体 (NMDAR1、NMDAR2A、 NMDAR2B、 GAD65/67、 GLAST、 GLT-1、TBR1、FOXP1、SATB2、OTX1、CUTL1、CTIP2) の補充・購入。またラット脳よりの遺伝子定量のための組織RNA抽出キット、cDNA合成キット、rtPCR用試薬、プライマーを新規に購入する予定である。その他ラット用ケースや餌の補充。学会発表の旅費に使用する。
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