2011 Fiscal Year Research-status Report
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23500505
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
長嶋 比呂志 明治大学, 農学部, 教授 (50318664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅山 一大 明治大学, 研究・知財戦略機構, 共同研究員 (70342699)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ブタ / 遺伝子組換え動物 / 病態モデル動物 / 糖尿病 / 合併症 |
Research Abstract |
我々は糖尿病を発症する遺伝子改変クローンブタ(雄)を作出し、このブタの精子の凍結保存に成功している。本研究では、この凍結精子の人工授精で作出したトランスジェニック(Tg)後代産仔について、表現型(糖尿病症状)の安定性を確認すると共に、糖尿病合併症の発現に焦点を合わせてその病態の詳細な解析を行い、糖尿病モデルブタとしての特徴を明らかにすることを目的としている。 これまでに4頭のTg後代産仔について病態解析を行った。Tg後代産仔は誕生後約7日齢から200mg/dl以上の随時血糖値を持続し、血中1,5-anhydroglucitol濃度が健常個体に比べて低いことから、恒常的な高血糖状態を表す事が明らかとなった。経口糖負荷試験でも、Tg後代産仔の血糖値回復が健常個体より顕著に遅延したことから、Tg後代産仔は糖尿病を発症していると判断された。また給餌前後の血漿インスリン濃度の変動が血糖値の変動に比べて小さい事、さらに膵臓の病理組織像ではランゲルハンス島の形成不全が確認された事から、Tg後代産仔の高血糖の原因はランゲルハンス島の形成不全によるインスリン分泌不足であると判断された。糖尿病を発症したこれらのTg後代産仔の腎臓病理組織像では、ヒト糖尿病性腎症で観察される結節性病変に良く似た病変が確認された。さらに、眼球では白内障の症状である水晶体の白濁が確認された。水晶体病理組織像では、白内障の原因と考えられる赤道部での水晶体線維の空胞化、後極部位での水晶体線維の膨潤と後極部位には存在しない有核細胞の存在が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tg後代産仔4頭について病態を精査した結果、全頭についてfounder個体と同様な糖尿病の発症が確認できた。これによって凍結精子を用いて作出した後代Tgブタに、安定的に糖尿病症状が出現することが確認された。 糖尿病合併症の誘導条件の決定と症状の解析については、生後4.5ヶ月にヒト糖尿病性腎症で観察される結節性病変に良く似た病変や糖尿病性白内障の病変が起こる事が確認できた。さらに、通常飼料での飼育でも、Nonalcoholic fatty liver disease(NAFLD)様の肝組織病理像が得られる可能性が見出された。 ブタ腎臓の近位尿細管で発現しているSGLT2(Sodium/glucose cotransporter 2)遺伝子については、promoter部分をクローニングし、配列の確認も行った。その結果、HNF-1a結合部位のコンセンサス配列と考えられる配列を確認した。従って、HNF-1aのdominant negative変異体を発現しているこのTg後代産仔も、ヒトの若年発症成人型糖尿病3型患者と同じ様にSGLT2の発現が抑制されている可能性がある事を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究の結果、本Tgブタは高血糖値を定常的に維持し、糖尿病モデル動物として明確な特徴を有している事が明らかとなった。今後も後代産仔を生産して、モデル動物としての特徴や糖尿病合併症について詳細に調べる。 膵臓:このTg後代産仔の糖尿病の原因はランゲルハンス島の形成不全によるインスリン分泌不足である事が明らかとなった。そこで、この形成不全の詳細を調べる為に、ランゲルハンス島を構成する細胞種の比率の確認を行う。さらに、ランゲルハンス島の形成に関与する因子の発現を調べ、この形成不全の原因を明らかにする。 腎臓:これまで、糖尿病性腎症の研究が進展しなかった原因の一つに、ヒト糖尿病性腎症の病態を反映した良い動物モデルが居なかった事が挙げられる。このTg後代産仔は、ヒト糖尿病性腎症で確認される結節性病変に良く似た病理像が得られる糖尿病モデルである。この結節性病変とヒトの結節性病変との類似点・相異点について、免疫組織染色などの手法を使って解析を行う。また、ブタ腎臓の近位尿細管で発現しているSGLT2遺伝子の発現量解析については、当初の計画通り、このTgブタで少なくなっているのかをリアルタイムPCRにて確認する。 肝臓:肥満や糖尿病罹患者に多いNAFLD様の肝組織病理像を、通常飼料で飼育したFounderブタで確認した。後代産仔についても、この脂肪肝の発症頻度と再現性を確認するため、通常飼養条件下で長期飼育実験を行う。その結果を踏まえて、高脂質飼料の給餌実験を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用予定として、Tg後代産仔の作出および解析する為の試薬・消耗品費用として954千円、契約農場への交通費(国内旅費)として126千円、論文校閲費用(謝金など)として100千円、その他の費用(論文投稿費用、屠体処理費用など)として220千円を予定している。
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Research Products
(5 results)