2012 Fiscal Year Research-status Report
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23500505
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
長嶋 比呂志 明治大学, 農学部, 教授 (50318664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅山 一大 明治大学, 研究・知財戦略機構, 准教授 (70342699)
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Keywords | ブタ / 遺伝子組換え動物 / 病態モデル動物 / 糖尿病 / 合併症 / 糖尿病腎症 / 糖尿病網膜症 |
Research Abstract |
昨年度までに、我々は糖尿病を発症するトランスジェニック(Tg)クローンブタ(雄)の凍結保存精子を使った人工授精でTg後代産仔を作出した。そして、これらのTg後代産仔が恒常的な高血糖状態(随時血糖値:200mg/dl以上)の表現型(糖尿病症状)を安定的に示すことを報告した。今年度は、このTg後代産仔の糖尿病合併症の発症に焦点を合わせ、その病態の解析を進めた。 糖尿病モデル動物は齧歯類を中心に多数存在するが、ヒト糖尿病腎症の特徴であるKimmelstiel-Wilson結節(KWN)類似の病変を呈するものは殆どみられない。本Tg後代産仔はこのKWN類似の病変を有する。1ヶ月齢、4.5ヶ月齢における腎組織病変を免疫組織化学的、電顕的にwild typeと比較した。1ヶ月齢において、Tg後代産仔は既に複数の糸球体結節性病変を形成している事が明らかとなった。4.5ヶ月齢で、結節は数・大きさ共に増加し、皮質深部において優位に分布した。免疫染色の結果、結節はCollagen IV、V、VI主体の膠原線維から成り、Advanced glycation end-products及びCarboxymethyl lysineの沈着を認めた。電顕像からは直径46 nm、周期50 nmの横紋を有した間質型の線維性Collagenが主体であることが確認された。一方でヒトにみられる糸球体基底膜の肥厚や尿細管間質・血管病変はみられず、メサンギウム融解や滲出性病変は稀であった。 糖尿病合併症の1つである糖尿病網膜症については、4.5ヶ月齢のTg後代産仔の眼球病理組織標本から単純網膜症病期の病変である網膜浮腫、毛細血管瘤、毛細血管基底膜の肥厚を確認した。さらに、病態の進行を追跡する為に蛍光眼底造影検査による経時的観察を行ったところ、約5ヶ月齢で軟性白斑の増加を伴う増殖前網膜症を発症するTg後代産仔が確認出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、糖尿病を発症するトランスジェニック(Tg)クローンブタ(雄)の凍結保存精子を用いた人工授精により作出したTg後代産仔について、表現型(糖尿病症状)の安定性を確認すると共に、糖尿病合併症の発現に焦点を合わせてその病態の詳細な解析を行い、糖尿病モデルブタとしての特徴を明らかにすることを目的としている。糖尿病症状(高血糖状態)の安定性については、昨年度に確認済みである。また、本年度より腎臓病理学研究者、眼科学研究者(専門:網膜)との共同研究が始まり、糖尿病合併症をより詳細に研究する環境が整った。その結果、腎臓についてはヒト糖尿病腎症の特徴であるKimmelstiel-Wilson結節(KWN)類似の病変の継時的変化と詳細解析、網膜については糖尿病網膜症で確認される病変(単純網膜症、増殖前網膜症)の継時的変化と詳細解析が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では「高脂肪飼料給餌による心血管系の合併症誘導」「ブタの腎臓におけるSGLT2発現量の計測」を進める計画であった。しかし、高脂肪飼料給餌を行わなくてもヒト糖尿病腎症特異的なKimmelstiel-Wilson結節(KWN)類似の病変とヒト糖尿病網膜症と同様の病変が確認される事、また腎臓病理学研究者、眼科学研究者と協議した結果、臨床現場での問題解決に繋がるKWN類似の病変、網膜症の病変の詳細解析を先行して行った方が良いと判断された事から、一部予定を修正する事にした。 腎臓における合併症研究については、経時的に腎生検を行い、高血糖に暴露され続けた腎組織がどの様に変化して行くのかを確認する予定である。さらに、これらのデータを論文にする為に症例数を増やす予定である。 網膜における合併症研究についても経時的に蛍光眼底造影検査を行い、このブタの糖尿病網膜症モデルとしての詳細を検証する予定である。さらに、これらのデータを論文にする為に症例数を増やす方向で研究を進める計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用予定として、Tg後代産仔の作出、飼育および解析する為の試薬・消耗品費用として610千円、契約農場への交通費(国内旅費)として100千円、論文校閲費用(謝金など)として100千円、その他の費用(論文投稿費用、屠体処理費用など)として200千円を予定している。
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Research Products
(2 results)