2011 Fiscal Year Research-status Report
同種培養真皮と上皮成長因子含有創傷被覆材の併用による新規治療法の確立
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23500545
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
黒柳 能光 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80170140)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 同種培養真皮 / 上皮成長因子 / 創傷被覆材 |
Research Abstract |
本研究は同種培養真皮と上皮成長因子(EGF)含有創傷被覆材の併用による新規治療法の確立を目指すものである。先ず、ラットの熱傷創および糖尿病性マウの全層皮膚欠損創に対してEGF含有創傷被覆材の治癒促進効果を調べた。表皮形成を伴った良好な肉芽組織形成を顕著に促進することを確認した。この研究成果を2報の論文として発表した [S. Kondo, Y. Kuroyanagi : J Biomater Sci, 23:629-643,2012および S. Kondo, H. Niiyama, A. Yu, Y. Kuroyanagi : J. Biomater Sci, in press] 。これらの基礎研究と平行して、平成23年4月に当該被覆材の臨床研究の承認を受け[承認番号C倫10-656:難治性潰瘍、熱傷創に対する上皮成長因子含有ヒアルロン酸・コラーゲンスポンジの創傷治癒効果の検討]、北里大学病院形成外科において難治性皮膚潰瘍を対象とした臨床研究を行っており優れた治癒効果を確認している。EGF含有創傷被覆材の研究と同時進行で、凍結保存した同種培養真皮の性能を高める最適な条件を調べた。解凍直後の線維芽細胞の細胞活性は解凍前の約60~70%であり、再培養3日後からサイトカイン産生能が回復することを確認した。EGF含有被覆材はEGF非含有被覆材に比べて約3倍量の血管内皮成長因子(VEGF)および約8倍量の肝細胞成長因子(HGF)を産生した。VEGFおよびHGFは血管新生促進因子であり、創傷治癒促進効果の指標となる。解凍後の再培養およびEGF含有被覆材との併用はCDSの機能を最大限に向上することが示唆された。この研究成果を1報の論文として発表した[M. Sawa, Y. Kuroyanagi : J Biomater Sci in press]。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGF含有創傷被覆材については、ヒト線維芽細胞を用いた培養系で安全性を確認し、ラットおよび糖尿病マウスを用いた動物実験で有効性を確認した。これらの研究成果を基に北里大学病院倫理委員会の承認[承認番号C倫10-656:難治性潰瘍、熱傷創に対する上皮成長因子含有ヒアルロン酸・コラーゲンスポンジの創傷治癒効果の検討]を受け、難治性皮膚潰瘍を対象とした臨床研究を展開している。既に17症例において優れた結果を得ている。 一方、同種培養真皮(CDS)に関しては、厚生労働科学ミレニアムプロジェクト(2001年~2005年)で北里大学病院倫理委員会の承認を受け、優れた結果を得ている。このプロジェクトにおいては、CDSのトップドレッシングとして市販の軟膏ガーゼを使用した臨床研究であった。培養系の実験において、EGF含有創傷被覆材をCDSのトップドレッシングとして使用した場合、軟膏ガーゼよりもCDSのサイトカイン産生能を顕著に高めることを確認している[M. Sawa, Y. Kuroyanagi : J Biomater Sci in press]。それゆえ、本研究の目標である同種培養真皮と上皮成長因子(EGF)含有創傷被覆材の併用による新規治療法の確立は最終段階に進むことが可能となり予定通りの達成度と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標である『同種培養真皮と上皮成長因子(EGF)含有創傷被覆材の併用による新規治療法の確立』を達成するために、新たに北里大学病院の倫理委員会の申請を行う予定である。同種培養真皮の臨床研究に関しては、既に、厚生労働科学再生医療ミレニアムプロジェクトの際に倫理委員会の承認を受けている。また、EGF含有創傷被覆材の臨床研究に関しても既に倫理委員会の承認を受けている。それゆえ、同種培養真皮とEGF含有創傷被覆材の併用に関しては、倫理委員会の承認は受けやすいと考えている。凍結保存同種培養真皮の製造量を増やして臨床研究の推進に備える。 EGF含有創傷被覆材を使用した昨年度の予備的な臨床研究は、主に、北里大学病院形成外科を受診する小範囲の難治性皮膚潰瘍の患者さんであった。EGF含有創傷被覆材の安全性と有効性が確認できたので、次のステップとして、北里大学病院救命救急センターに入院する重傷熱傷患者さんを対象とした臨床研究を慎重に進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)ヒアルロン酸購入費:200,000 円(2)コラーゲン:250,000 円(3)上皮成長因子(EGF):150,000 円(4)細胞培養試薬:200,000 円(5)ウシ胎児血清:200,000 円(6)細胞培養器具:200,000 円を使用予定であり、総額:1,100,000円の使用予定である。
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Research Products
(24 results)