2012 Fiscal Year Research-status Report
実用化を目指した血液脳関門透過型高分子医薬デリバリーシステムの開発
Project/Area Number |
23500547
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
近藤 哲朗 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (30344229)
|
Keywords | 薬物送達システム / 血液脳関門 / 指向性進化工学 / 医薬分子設計 / 薬物輸送担体 / ドラッグデリバリー / バクテリアディスプレイ / ファージディスプレイ |
Research Abstract |
近年、抗体医薬や核酸などの高分子医薬が癌・癌関連疾患や自己免疫疾患をはじめとする種々の疾患の標的分子に対して創出され、リポソームや高分子ミセルといったDDSキャリア―・デバイスの発展と共に、これらの高分子特性を利用した薬物送達技術が急速に進歩してきている。しかしこれらは中枢神経系以外の組織を標的としたものが多い。 本研究計画では、高分子医薬を脳へ非浸襲的に送達する新しいドラッグデリバリーシステムを開発することを目的とする。血液脳関門に発現している膜蛋白・受容体を介して脳へ送達することが可能な中枢標的型の蛋白医薬を、種々の指向性進化工学的手法を駆使して創出することを目指す。 平成24年度は、血液脳関門上の受容体に特異的に結合するポリペプチドのアミノ酸配列のスクリーニングを、バクテリアディスプレイ法を応用して大腸菌内膜上に発現させた受容体とペリプラズム内に発現させたランダムペプチドライブラリーとの結合を指標に進める一方、in vitro血液脳関門モデルを透過するポリペプチドアミノ酸配列の探索をT7を用いたファージディスプレイ法を応用して行った。多孔質膜を挟んでマウス脳毛細血管内皮細胞とアストロサイトの共培養を行い、高い経上皮電気抵抗値(Trans epithelial electric resistance: TEER)を示す in vitro 血液脳関門(BBB)モデルを作成した。高次構造に一定の束縛条件を付与したランダムペプチドファージライブラリーを作成して、これを上記 in vitro BBBモデルに添加して内皮細胞とアストロサイトを透過してくるファージを採取、増幅し、このサイクルを繰り返すことにより、in vitro BBBモデル透過能を示すアミノ酸配列モチーフの創出を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血液脳関門(Blood-brain barrier: BBB)透過能を持つ中枢標的型蛋白医薬を作成するために、 血液脳関門上の受容体に特異的に結合するポリペプチドアミノ酸配列のスクリーニングを、バクテリアディスプレイ法を応用して進めるとともに、in vitro 血液脳関門 (BBB)モデルを作成してこれを透過するアミノ酸配列モチーフの探索をT7を用いたファージディスプレイ法を応用して行った。多孔質膜を挟んでマウス脳毛細血管内皮細胞とアストロサイトの共培養を実施して高い経上皮電気抵抗値を示す in vitro BBB モデルを作成した。一方で、高次構造に一定の束縛条件を付与したランダムペプチドファージライブラリ-を作成し、これを上記BBBモデルに添加して内皮細胞とアストロサイトを透過してくるファージを集めて増幅、このサイクルを繰り返すことにより、BBBモデル透過能を示すペプチドのアミノ酸配列モチーフの探索を行い、現在は目的とするモチーフのさらなる収束化を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
抗体医薬および蛋白医薬はその劇的治療効果から世界の医薬市場で大きな位置を占めているが、ほとんどは末梢組織の癌や関節リウマチ等が標的であり、脳を標的とした蛋白医薬は世界的にも開発が遅れている。本研究では、静脈注射など患者にとってストレスの少ない方法で蛋白医薬を脳に非浸襲的に送達する新しい技術の開発を目指す。種々の指向性進化工学的手法を駆使してBBB透過機能を示すアミノ酸配列モチーフを創出し、これを種々の神経疾患に対する阻害抗体や組換え機能蛋白に組み込むことによりBBBを透過する革新的な中枢標的型蛋白医薬を作成すること、さらにそれらのin vivo での効果を検証することを目標にする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
In vitro血液脳関門モデル透過能を示すアミノ酸配列の収束化をさらに進め、BBB透過モチーフをニューロトロフィン等の機能蛋白に組み込んだ融合蛋白を作成する。作成した蛋白質のin vitro血液脳関門モデル透過を確認後、マウス尾静脈に注射してこの蛋白質が実際にマウスの血液脳関門を透過して脳実質に送達されているかを組織学的に検証する。さらにこのBBB透過型蛋白医薬が脳内で生理活性を示すかどうかを検証する。
|
Research Products
(1 results)