2012 Fiscal Year Research-status Report
人工炭酸泉浴が身体の柔軟性を改善させ遅発性筋肉痛を軽減させる可能性の検討
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23500678
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Research Institution | Japanese Red Cross Hokkaido college of Nursing |
Principal Investigator |
山本 憲志 日本赤十字北海道看護大学, 看護学部, 准教授 (70299329)
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Keywords | 人工炭酸泉 / 全身浴 / 脈波伝播速度 / 血管弾性 |
Research Abstract |
動脈は血管壁の慢性炎症を基盤に、様々な因子が関与し硬化が進行することが知られている。動脈硬化は、高血圧、血圧の変化による血管の破裂・出血など、循環器疾患の大きな危険因子であり、血管壁の伸展性が維持されることが好ましいと考えられている。動脈壁の伸展性を維持するための運動トレーニングや、高温サウナ風呂後の冷水浴など温熱性の血管伸縮トレーニングなども広く行われている。しかしながら、入浴による血管弾性への効果については統一した見解が得られていない。炭酸泉はヨーロッパにおいて古くから心臓・循環器系疾患への治療目的に利用され、国内においても「心臓の湯」と言われ、血圧の低下、心拍数低下や心血管疾患の改善に利用されて来た。本年は、高濃度の二酸化炭素(1000ppm以上)を含む人工炭酸泉全身浴(炭酸泉浴)による血管弾性のへの効果を検討すべく、泉浴前後において、動脈の硬さ評価の標準的指標となっている脈波伝播速度を計測した。健康な男子大学生を対象に動脈の硬さ評価の標準的指標となっている脈波伝播速度により血管弾性の変化を水道水浴と炭酸泉浴において検討を行った。その結果、単回の入浴では、血管弾性の指標に有意な変化は見られなかった。動脈スティフネスは血管平滑筋やコラーゲンなど結合組織によって規定される。体の柔軟性も同様で骨格筋と腱、靭帯、筋膜などの結合組織で決定される。我々は、炭酸泉浴により運動後の筋硬度の回復が促進され、柔軟性が向上することを報告した。また、体の柔軟性とbaPWV値には中高年以降有意な相関関係を示すとの報告がある。このことから動脈硬化などに炭酸泉連浴とストレッチを負荷することで血管弾性の改善が期待できる。また、天然の炭酸泉(大分県長湯温泉)での被検者の連続浴実験では、2週間目でbaPWVが有意に減少したと報告されており、人工炭酸泉における連続浴の効果は今後の検討課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は脈波伝播速度の測定機器の導入により、遅れていた人工炭酸泉全身浴による血管弾性への影響について実験を行いデータを得ることが出来た。このことにより一昨年までの遅れを取り戻し、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
炭酸泉浴の効果は、その科学的根拠の不足から、特に医療分野での応用が進んでいない。実験科学的手法による詳細なメカニズム解析とそのエビデンスの欠如により温泉浴を正規の療法として受け入れがたい物としているように思える。本研究は、天然炭酸泉浴の効果として知られる現象を、炭酸ガス濃度はもちろん、温度や含有物も制御可能な人工炭酸泉作成装置を用い、被検者で効果の再現性を確認し、効果の実証とそのメカニズムの解析を可能にする実験系を確立しようとするものである。浸漬部の筋で血管弾性効果や筋硬度低下のメカニズムや筋肉痛への影響などが解明されれば、全身的な柔軟性改善への応用も期待できる。これらの検討課題について着実に実験を積み重ねデータを蓄積していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めて行く上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、計画に変更はなく、前年度の研究費を含め、当初予定している人工炭酸泉浴による血管弾性への影響についてさらにデータを蓄積し、加えて高強度レジスタンス・トレーニング後の炭酸泉浴が筋肉痛にどのような効果をもたらすかを誘発筋電図の測定等から検討する予定である。さらに国内、国際学会での成果発表を行う予定である。
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Research Products
(9 results)