2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23500688
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石垣 健二 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20331530)
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Keywords | 間身体性 / 身体的対話 / 身体的経験 / 身体的な感じ / 身体的なわれわれ |
Research Abstract |
本研究課題は,体育(身体教育)およびその他身体運動によって,「間身体性」が育成されるその根拠を解明することである.「間身体性」とは,端的に述べるならば,身体的に「他者をわかる」ということを可能にしている身体の働き(身体作用)であり,その構造の総体である. 本研究課題にかかわる本年度の研究成果として,まず日本体育学会体育哲学専門領域夏期合宿研究会における口頭発表(「体育学における『間身体性』の問題領域」)[2013年7月]がある.ここでは,メルロ=ポンティ,M.の身体論を中心に検討しながら,体育学として「間身体性」を解明するための問題領域が整理された.この内容の一部は,「メルロ=ポンティ, M.における『間身体性(あるいは『肉』)」についての検討」として,「体育哲学研究」第44号に掲載予定[2014年3月]である.そこでは,「間身体性」や「肉」の概念が「主体―客体」「能動―受動」といった自己と他者の関係性を転換する働きとしてとらえられ,それらが体育(身体教育)における自己と他者の関係性の基盤として位置づく可能性を論じている. また本年度の研究成果として,日本体育学会第64回大会における口頭発表(「身体的経験」の領域:身体的対話と間身体性についての考察)[2013年8月]がある.ここでは,体育(身体教育)における経験が,「身体的な感じ」を経験するという意味での「身体的経験」であることを論じながら,その領域が明示された.そして,身体教育のなかにおいては,自己と他者との「身体的対話」が成立し,そこにおいて「身体的なわれわれ」としての「間身体性」が育成されることを論じている.この内容は,学術誌に投稿しており現在審査中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は,「間身体性」の概念を検討するための予備作業として「間主観性」の概念について考察がすすめられ,そして分析方法としての「現象学的方法」について検討がされた.前者では,「間主観性」の問題領域がいかなる射程をもつのかが明確となり,後者では,そのような問題領域を分析する方法として,「現象学的方法」の概要が明らかとなった. また,研究2年目には,体育(身体教育)やスポーツ実践における「かかわり」を「身体的対話」と位置づけたうえで,その内実として「身体的な感じ」があることをつきとめ,その定義づけをおこなった.そしてさらに,「身体的対話」が単なる「対話」とどのように異なるのかを吟味し,その「身体的対話」によって「間身体性」が育成される可能性を検討した. このような考察の進展をふまえ,研究3年目となる本年度は,体育(身体教育)やスポーツ活動において,「間主観性」とは異なる「間身体性」がいかにして独自な問題領域として設定されるかを探った.そして,それらが「身体的経験」あるいは「身体的対話」の領域を射程にしており,その領域を明示するための考察が展開された. これら研究の進展は,「間身体性」の問題領域の確定とそれを分析するための「身体的経験」「身体的対話」あるいは「身体的な感じ」などの視点の獲得であり,大きな意義をもっている.今後は,体育(身体教育)における「間身体性」をいかなる「身体の働き(身体作用)」として抽出するのかに焦点をあて,これら領域と分析視点をもとに検討してゆくことが不可欠になるだろう.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度では,これまでに明らかになった「間身体性」の問題領域を考慮しながら,そして「身体的経験」「身体的対話」などの分析視点を勘案しつつ,「間身体性」の構造が体育(身体教育)やスポーツ活動のなかにおいて具体的にいかなる「身体の働き(身体作用)」として抽出されるのかを問う必要がある.このことについては,昨年度中から検討をおこなってるが,そこには眼前の他者(具体的な他者)の身体運動に対する「身体的なまなざし」や「身体的共感」「身体的了解」の働きがあると考えられる.また,そこでは同時に抽象的な他者に対する「身体作用」もあるように思われる. 最終年度には,「日本体育学会」あるいは「体育・スポーツ哲学会」およびその他関連学会・研究会において,「間身体性」が具体的にいかなる「身体作用」であるのかその詳細について口頭発表をする予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた最大の理由は,調査研究のため予定していた「国際スポーツ哲学会(カリフォルニア州立大学,米国)」への参加が,本務大学業務のため遂行できなかったことによる. 翌年度分として繰り越された助成金は,今年度中に,スポーツ哲学の領域で現象学を専門とする研究者のもとで調査研究をするための国外旅費として使用するつもりである.具体的には,ゲバウアー教授(ベルリン自由大学),あるいはイボ教授(プラツキー大学)などを考えている.というのも,今年度に投稿した論文の審査過程において,現象学的な鍵概念を使用した「間身体的なわれわれ intercorporeal we」という表現の是非が問われており,その検討をすすめたいと考えているからである.
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Research Products
(4 results)