2011 Fiscal Year Research-status Report
武道必修化に向けた科学的エビデンスに基づく新資料の提供-柔道の衝撃負荷定量化-
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23500709
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
河鰭 一彦 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00258104)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 運動生理学 / バイオメカニクス / 身体教育学 / 武道学 / 骨形成 / 柔道 |
Research Abstract |
骨形成に重要なことは(1)身体に対する衝撃負荷を如何に強く作用させるかに依存している。そして、そのツールとして(2)身体運動が最も適しているということになる。この2点は骨を研究対象とする国内外の研究者の共通認識である。活動負荷が高く同時に衝撃負荷も高い柔道競技選手は当然骨に関する指標が高くなると考えられる。実際、高い骨密度や骨強度を柔道選手が持つという報告は多くみられ、柔道競技者の高骨密度は研究者間において共通した知見である。しかし、柔道競技の障害発生頻度が高く,重篤度も高いことが指摘されている。このことは、衝撃負荷が高いという柔道の競技特性を背景とした功罪といえる。 本研究は、これまで以上により多くの青少年が柔道に接する機会が訪れる「平成24年度武道完全必修化」に向けて、バイオメカニクス的手法を用いて柔道中に収集された衝撃負荷に関する資料を収集・解析し、新たな視点からの「武道論」確立の一助とすることを目的とする。これまで、武道論は人文科学、社会科学的手法を用いて展開されてきた。これら形而上的研究成果から得られた結果は重要な知見を、我々武道に携わるものへ示してくれた。この研究の方向性は今後とも変わることはないであろう。この主流に加え、研究代表者のように科学的手法を用いて得られた研究成果を柔道の行く末に警鐘を鳴らしてくれる各種個人・団体に対して明示することができれば、現代社会における柔道の存在は揺るぎないものになると考えられる。研究の目的「(1)柔道練習中や授業中にみられる動作を類型化する。(2)各動作の衝撃負荷を同定する。(3)各動作パターンの衝撃負荷がどの程度柔道学習者に課されているかを導出する。」のうち現在は、「(1)のうち特に受け身動作を類型化する。」を試みている。実業団・大学選手、高校生選手、中学生選手、小学生選手のそれぞれのカテゴリーにおける乱取りを分析対象としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究目的は、柔道の有効性の基準となる「これ以上柔道を通しての衝撃負荷等を青少年に課すことは危険である」と示すことのできる衝撃負荷の臨界点(危険臨界点)をあきらかにすることである。具体的な研究手順は「1)柔道練習中や授業中にみられる動作を類型化する。(2)各動作の衝撃負荷を同定する。(3)各動作パターンの衝撃負荷がどの程度柔道学習者に課されているかを導出する。」である。当該年度は、「(1)のうち特に受け身動作を類型化する。」を試みている。実業団・大学選手、高校生選手、中学生選手、小学生選手のそれぞれのカテゴリーにおける乱取りを分析対象としている。実数としては各カテゴリ-10資料(男女別にできるカテゴリーは5資料ずつ10資料)集めることをパイロットスタディーとしての機能を持つ本研究の目標資料収集数である(計40資料となる)。このうち実業団・大学選手カテゴリーの資料収集はほぼ目標の10資料に達している。しかし、高校生選手、中学生選手、小学生選手カテゴリ-の資料収集は「交渉」「日程調整」の困難さから目標資料数には達していない。高校生選手、中学生選手、小学生選手カテゴリ-の資料収集が目標に達していないことが主因となり、現在までの達成度 「区分(4)遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的は、柔道の有効性の基準とこれ以上柔道を通しての衝撃負荷等を青少年に課すことは危険であると示すことのできる臨界点(危険臨界点)をあきらかにすることである。具体的な研究手順は「(1)柔道練習中や授業中にみられる動作を類型化する。(2)各動作の衝撃負荷を同定する。(3)各動作パターンの衝撃負荷がどの程度柔道学習者に課されているかを導出する。」であり、平成23年度は、「(1)のうち特に受け身動作を類型化する。」を試みている。実業団・大学選手、高校生選手、中学生選手、小学生選手のそれぞれのカテゴリーにおける乱取りを分析対象としている。実数としては各カテゴリ-10資料(男女別にできるカテゴリーは5資料ずつ10資料)集めることを目標している。実業団・大学選手カテゴリーの資料収集はほぼ目標数を平成23年度中に達成することができた。しかし、実業団・大学選手カテゴリーの資料収集以外の高校生選手、中学生選手、小学生選手カテゴリーの資料収集は「交渉」「日程調整」の困難さから目標数には達していない。平成24年度は高校生選手、中学生選手、小学生選手カテゴリーの資料収集の速度を上げるため平成24年度の早い時期から各団体に「交渉」「日程調整」行い、高校生選手、中学生選手、小学生選手の活動が盛んになる夏期休暇中に必要な資料数を確保することを平成24年度の研究の推進方策とする。さらに(2)の目的を達成するために購入したフォースプレートを使用して人体を対象とした基礎計測を繰り返し行うことも研究推進の方策とする。特に柔道球技を対象としたフォースプレートの使用はフォースプレートに使用される鋼材と人体とが測定・実験中に接触する際に生じる傷害の可能性から研究モデルが適切に構築できなかった背景がある。本研究においては「畳の緩衝力」「人体そのものの緩衝力」を計測するための測定モデルを構築し測定・実験を遂行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究旅費はこれまでの研究上の助言を得るために執行してきた。加えて平成24年度はこれまでの測定・実験に加えフォースプレートを使用して人体を対象とした基礎計測を繰り返し行う。これまでの先行研究において柔道球技を対象としたフォースプレートの使用は一部の測定・実験のみに限定されてきた。なぜなら本研究を例ににすると、ここではフォースプレート上にて「受け身」をとる実験モデルを構築している。この際、フォースプレートに使用される鋼材と人体とが測定・実験中に接触することになる。結果、人体にかなり重篤な傷害が発生するということ自明である。そのため各種「緩衝材」を人体とフォースプレートとの間に設置しなければならない。その際、使用した「緩衝材の緩衝力」と「人体の緩衝力」を考慮しないと測定・実験の精度を担保するはできない。この点は明確にするためにはさらなる理工系研究者の助言が必要になる。平成24年度はこの点を視野に入れて研究費の使用計画立案する。また、資料収集はこれまで研究代表者の近隣を対象としてきた。しかし、これでは高校生選手、中学生選手、小学生選手カテゴリーの資料収集の速度を上げることはできない。資料収集を遠隔地に広げるための研究旅費の使用計画を立案する。人件費、特には謝金(被験者)は資料収集のための測定に参加してくれたは高校生選手、中学生選手、小学生選手に対して謝礼としてふさわしい物品選択しこれを購入する研究費の使用計画を立て執行を予定している。
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