2011 Fiscal Year Research-status Report
スポーツクラブに対する公的助成に関する日独比較研究
Project/Area Number |
23500715
|
Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
黒須 充 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (50170121)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | スポーツクラブ / 公的助成 |
Research Abstract |
国家及び地方公共団体が節約政策(緊縮財政)を強いられ、そのために多くの公的支出が検討の対象になっている。スポーツクラブはそれでもいろいろな形でスポーツとスポーツクラブに対する公的助成の恩恵に預かっている。クラブスポーツに対する公的助成の削減について行われている政治的議論に目をやると、次の3つのことが目に留まる。(a) クラブスポーツに対する公的助成の範囲及び具体的意味が十分理解されていないこと、(b) スポーツに対する公的支援が公的支出として極めて一面的に費用の大きさの面からしか議論されてないこと、(c) 複数の財源から支援を得ている組織であるスポーツクラブが実際に公的支援に依存しているかどうか、それはどの程度の依存なのかが十分理解されていないことである。 それゆえ本年度は次の4つの問いを立て研究を進めてきた。(1) 公的なスポーツ支援はスポーツクラブにとって具体的にどのような意味を持っているか。(2) スポーツクラブが公的支援から利益を得るだけでなく、公的予算の側もスポーツクラブから税金収入による利益を得ているとすれば、どの程度のものになるのか。(3) 公的なスポーツ支援が果たす相乗効果は、例えば地域の価値創造に関してどの程度の重要性を持っているか。(4) 公的なスポーツ支援が削減されてもスポーツクラブは生き延びることができるか。 調査のため訪問したクラブは、カンシュタット体操クラブ1846(Turnverein Cannstatt 1846 e.V.)、ピヴィッツハイデ体操クラブ09 (Turnverein 09 Pivitsheide e.V.) ミュールハイム障害者スポーツクラブ (VBGS Mülheim an der Ruhr e.V.)等であり、クラブ関係者や行政関係者からヒアリングを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツのスポーツクラブの76.2 %は、公的機関によるスポーツ支援から直接助成金を受け取ることを念頭に置いて活動している(スポーツ団体から受け取る助成金を含む) 。公的支援を受けているクラブは総じて69,000クラブに昇ることが明らかとなった。 また、助成金の大半は地域公共団体の財源が基になっている。スポーツクラブの54 %(49,000クラブ)が市町村または郡から助成を受けている。52 %近くのスポーツクラブはまた、それ自身も公的な資金から財政的援助を受けているスポーツ連盟または各種スポーツ団体から助成を受けている。州から直接資金援助を受けているスポーツクラブはこれまでの所わずかであり、全体の19 %(17,500クラブ)にすぎない。その他の支援プログラムやヨーロッパの振興資金を受け取る道はこれまでの所ほとんど閉ざされている。公的機関によるその他の振興プログラム(例えば労働局を通した資金など)から助成を受けているのはスポーツクラブの約4.5 %にすぎず、またヨーロッパの振興資金に関しては0.5 %にすぎないことが明らかとなった。ドイツのスポーツクラブは、スポーツ及びクラブに対する公的助成の削減に対し、それを他の仕方で補うことに限定的にしか成功していない。公的助成の削減にあったクラブでは、その63.3 %がどうにか赤字を出さずに済んでいるにすぎない。これに対し公的機関によるスポーツ助成が逆に増えたクラブでは、赤字を出さずに済んでいるスポーツクラブの割合が全体の71.8 %に昇る。それゆえクラブ全体について、公的助成の削減と共に赤字を出さざるを得ないリスクが明らかに上昇していると言うことができる。多くのクラブが公的助成の削減を十分に調整することができないでいる。すなわち、クラブそのもの及びその非営利活動の存続を公的助成に頼っているのが実情だということが明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
スポーツクラブはスポーツを通して公共の福祉を実現するための制度的保障である。 スポーツクラブを通したスポーツ活動は、制度的基盤を基に行われるために、他の形のスポーツ活動(例えば非組織的スポーツ活動や商業施設を利用したスポーツ活動)に比べて明らかに社会的により積極的な意味を持つものとなっている。スポーツクラブを基礎とするスポーツ活動はそれゆえ単なる私的な活動ではなく、社会的な有益性を持った活動である。このために国家と地方自治体によってスポーツクラブを奨励する政策が取られてきた。これには直接的な助成金による方法、税制上の優遇策による方法、公的施設をわずかの使用料で利用させる方法と、様々なやり方がある。このような助成がなければスポーツクラブの大半は生き延びることができず、スポーツも非営利性を失い、他の制度的な形で行われることになるであろう。 平成24年度は、わが国、特にクラブ先進県である富山県の総合型クラブを事例にアンケート調査やヒアリング調査を中心に行い、ドイツのスポーツクラブとの財務状況に違いを明らかにしたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費200,000円 (福島-富山2泊3日×2回、福島-東京1泊2日×2回、福島ー静岡1泊2日×1回ほか)人件費・謝金200,000円(ドイツ語→日本語の翻訳)その他100,000円(アンケート印刷及び郵送費)
|