2012 Fiscal Year Research-status Report
ブラインドサッカーにおけるコーチ・コーラーの指示内容とプレーヤーの理解について
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23500755
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
橋口 泰一 日本大学, 歯学部, 講師 (90434068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶽 真人 日本大学, 文理学部, 准教授 (90338236)
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Keywords | 障がい者スポーツ / コーチング / コミュニケーション / パラリンピック / ゲーム分析 |
Research Abstract |
23年度は、予備的な調査も含め国内リーグ及び日本代表におけるゲーム中の指示内容と言語指示についての調査を行った。日本代表戦及び国内リーグ戦における分析では、ゲーム中の指示内容と言語指示に対しての問題点の調査、試合時のシュートシーンにおけるコーチ・コーラーの発言についてのデータ収集及びデータ分析を行った。 24年度では、これまでの調査結果をもとに、第4回IBSAブラインドサッカーアジア選手権大会に出場した4カ国におけるシュートエリアに着目し,各国の違いを明らかにするとともに、今後のブラインドサッカー日本代表の競技力向上ならびに普及のための手がかりを見出すことを目的とした。シュートエリア及びゴールスローの分析から、6m以内からのシュートが、中国は32.3%(得点;2得点)、イランは30.4%(得点;1得点)、韓国は33.3%(得点;1得点)の割合でシュートしている。日本はこのエリアから、他の国の2倍以上の72.7%ものシュートをしているのにもかかわらず、得点は正面からの2点のみであった。上位国との得点力の違いが示唆された。世界ランキング上位国である優勝した中国のゴールスロー成功率は他の国に比べ低いものの、ゴールスローからシュートまでの割合は22.3%であり、他の国に比べて高い確率でシュートまで至っていた。基本的な攻撃のスタイルは、4ヶ国ともドリブルからのシュートであるが、中国を除く他の3ヶ国はランキングが下がるにつれて、パスの割合が多くなっていることが示唆された。また、日本が出場することができなかったロンドン2012パラリンピックにおいて、全試合の映像撮影を行い、分析のための資料収集を行った。 しかし、シュートシーンにおけるコーチ・コーラーの発言については、分析途中であり、詳細な分析を行っている。今後に繋がる興味深い知見も得られ、今後の検討に可能性を示すものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ロンドン2012パラリンピックの最終予選である第4回IBSAブラインドサッカーアジア選手権大会におけるシュートシーンに係わるゲーム分析を中心に行った。映像によるアジア諸国における試合運びや得点シーンの分析から、ブラインドサッカーの競技特性に関する分析を行い、これまでの研究成果について、関連学会への発表及び論文投稿を行った。同時に、今年度開催されたロンドン2012パラリンピックにて、多くの研究協力者に協力していただき、全ての試合を撮影することができた。音声データの収録状況及び映像の確認を行い、現在分析を行っている。 しかし、国内外におけるゲーム分析からみたシュートシーンの分析は順調に進んでいるものの、シュートシーンにおけるコーチ・コーラーの発言と選手との連携については、分析途中であり、時間がかかっている状況である。国内での学会発表を予定していたが、分析結果について発表するまでには至らなかった。現在、25年度の関連学会論文投稿に向けて準備を行っている。 本研究費が主催となり、視覚障害者スポーツ競技団体関係者ならび多くの研究者とともに2012年10月と2013年3月に「アダプテッドスポーツ研究会」を開催した(開催場所は共に慶應義塾大学)。ブラインドサッカーの攻撃に関するゲーム分析や、障がい者スポーツにおける各国の強化事情について話題提供していただき、多くのディスカッションの中から、ブラインドサッカーの競技に関する現状とその問題点について明確になった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で本研究費は最終年度となるため、これまでの調査・分析データの整理と、第4回IBSAブラインドサッカーアジア選手権大会及びロンドン2012パラリンピックにおける詳細な分析を行う予定である。また、これまでのシュートシーンに係わる分析では、シュート位置からみた考察であったが、シュートに至る経緯も含め、詳細に分析を行う。残念ながら、日本代表はパラリンピックに出場できなかったため、パラリンピック出場各国の映像撮影を実施し、各国代表のゲーム分析及び日本代表へのフィードバックを行う。平行して、日本代表における練習マッチ及び国内リーグ戦におけるゲーム分析とゲーム中のコーチ・コーラーの指示内容と言語指示についての分析を行う。 本研究においてパラリンピック出場国との比較を行い、世界の強豪国と肩を並べるためのゲーム内容及び、試合中の指示内容と言語指示について日本の指導現場へフィードバックすることは、今後のブラインドサッカーの競技力向上と国際大会での活躍、普及に関して大変意義のある研究であると考えられる。また視覚障害者スポーツのみならず、健常者における指導においても、コーチングスキルにおける相互理解やイメージの共有など大いに期待される。 これまでの調査・分析を踏まえ、ロンドン2012パラリンピックにおける振り返り、日本ブラインドサッカー協会の協力のもと日本の好敵手である「アジア圏諸国」を対象に調査・分析を行い、今後日本代表が強豪国の仲間入りをするための強化対策の提案、ブラインドサッカー競技が発展するためプログラム構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に引き続き、調査及び測定の実施には、選手の関係者や競技団体などの、理解や協力が欠かせない。また調査対象となる選手はもちろんのこと、監督・コーチ、競技団体など、多くの関係者の理解が必要である。この研究を進めるにあたっては、練習場ならび試合会場への出張費、心理テスト用紙の購入費用、映像編集などの経費が必要となる。 分析に関わる経費については、個人情報にも当然ながら配慮し膨大な量のデータ処理とその管理、調査におけるフィードバック資料の作成等にかかわる専用機器や処理ソフト、研究補助者による協力がなければ不可能である。また、調査を実施する上でのサポート補助も必要となり、研究補助者に対する謝金も計上されている。 最終年度である25年度は、ロンドン2012パラリンピックにおける分析、これまでの研究成果の発表にかかる費用、海外での発表や投稿に係わる翻訳費、国内外の関連学会に発表を行うにあたり旅費等も含まれる。専門的な知識の提供に関しては、専門分野における外部講師のレクチャー及び、競技団体や指導者、選手等との意見交換も含まれている。
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Research Products
(5 results)