2012 Fiscal Year Research-status Report
小児肥満症の改善、予防の統合研究-基礎から実践へ、エビデンスある介入を目指して-
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23500853
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
田久保 憲行 北里大学, 医学部, 助教 (20306583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 正浩 北里大学, 医学部, 教授 (90222950)
鳥居 央子 北里大学, 看護学部, 教授 (10227671)
加藤 チイ 実践女子短期大学, 食物栄養学科, 准教授 (40461785)
横山 美佐子 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (70439149)
大津 成之 北里大学, 医学部, 助教 (60286341)
木村 純人 北里大学, 医学部, 助教 (40365151)
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Keywords | 小児肥満症 / 肥満関連遺伝子 / 血管内皮機能 / 個別介入プログラム / 栄養介入プログラム / 運動介入プログラム / 家族看護 / 医療チームアプローチ |
Research Abstract |
24年度は市肥満検診事業ならびに、大学病院通院中の中等度~重度肥満患者を対象に、口頭と文書で同意が得られた10名(5歳~12歳、男5名/女5名)とその家族に対し本研究の介入プログラムを実施した。 肥満症における動脈硬化性変化は小児期から生じているという報告から、その病態を検証すべく血管内皮機能評価としてitamar社製EndoPAT2000で検討した。成人のカットオフ値を用いると小児では若干高めの値が得られる傾向にあったため、Baseline correction factorで補正しないF_RHIを用いた。RHIでは非肥満群と肥満群で差が認められなかったが、F_RHIでは肥満群は非肥満群より有意に低値を示し、肥満群で血管拡張能が低下している可能性が示唆された。 運動介入プログラムでは、本年度から和光大学の協力を得てムーブメント療法・教育を取り入れた。楽しく身体を動かすことができたと同時に、改めて肥満児の自己効力感の低さが浮き彫りとなった。また身体活動量としてライフコーダーを用いて歩数、身体活動時間を、運動機能としてHand-Held Dynamometerを用いて等尺性膝伸展筋力の体重比を測定し、各測定項目を2群間で比較検討した結果、肥満児群は平日の学校生活において休み時間の活動性の低下を認めた。また握力と等尺性膝伸展筋力は全身の筋力を反映する指標と報告されており、今回の検討で肥満児群は非肥満児群と比較して全身の筋力が低下している可能性が示唆された。 栄養介入プログラムでは調理実習での体験型の食育を実施し、こどもやその家族の食事への行動特性を観察し、実践的な栄養指導へ繋げる試みをした。また、呼気ガス分析による基礎代謝量に基づく個人に合わせた栄養指導など検討した。 看護からは、数回のグループフォーカスディスカッションにより、肥満や家族のもつ問題点の抽出を試み介入の視点を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行政との調整に遅れが生じ、肥満検診事業で一次検診対象者となった児童への調査票による調査(調査内容は、母子手帳に記載された出生時の体格に関する記録ならびに、健診時の体格に関する記録、新生児期、乳児期の栄養法につき記載するものである。)について実施できていない。 市の肥満検診事業での一次検診対象者に対する調査票による調査に関しては、引き続き行政ならびに学校教育委員会と調整を図ってゆく方針であるが、昨今の個人情報保護の観点から、学校保健の範囲内での身体計測値や出生時の記録などの情報開示も困難となる可能性が生じてきており、データ自体の解析が困難となることが予想される。出来る限り、必要な情報収集に努めデータ解析に繋げたいと考える。 他は上記研究実績の概要に記したように、当初の介入プログラムの内容につき、その安全性や有用性を検討しつつ、各職種がそれぞれの専門性を活かしたプログラム内容を検討し遂行できている。収集したデータ解析も進み、本年の国内外の関連学会で成果を発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
外来受診時の採血から、脂質代謝など生化学的検討や肥満関連遺伝子の解析、検討は引き続き実施する。 運動介入に関しては、今まで実施してきた介入の内容に加え、対象者の股関節・膝関節・足関節・つま先に赤外線発光マーカーを貼付し最適歩行速度で歩行させデジタルビデオカメラで撮影し、歩行周期における股関節・膝関節・足関節角度の解析値から歩行分析を追加検討する。また安静時ホルター心電図で、自律神経活動の解析も行う予定である。 栄養介入に関しては、引き続き調理実習を通じて体験型の食育を実施し、家庭内での食事摂取状況や食行動の変容を追跡調査する予定である。 看護の立場からの家族支援に関しては、引き続き調査用紙でのQOL調査に加え、活動の様子をデジタルビデオカメラで記録し、子どもたちの表情の変化や活動中の発言を通して、こどもたちが事後アンケートなどでの言葉や文字では表現しきれていない介入内容への感想や評価、自分の体型に対する感情の変化などを捉える試みを行う予定である。録画したものを、画像解析ソフトを用いて分析する予定である。なお録画や録音した記録の取扱いについては、病院・医学部倫理委員会で追加申請を行い、審議の結果承認を得ている。 さらにビジネス戦略ツールとして用いられているSoft Systems Methodology(SSM)の探索型アプローチの手法を用いて、小児肥満を取り巻く課題や、この介入プログラムに関わる医療多職種に関する課題を抽出、明確化し、今後のプログラムの内容の検討に活かすと同時に、医療多職種のチームアプローチにおける役割、専門性をより明確化したいと考える。この検討は医療現場、特にチーム医療の現場におけるSSMの有効性への検証に繋がるものであり、より良いチーム医療のあり方を検討するモデルとなるものと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.栄養介入ならびに運動介入に関わる必要経費(食材費、人件費や呼気ガス分析用マウスピース、ムーブメント療法・教育に関わる講師への謝礼など) 2.看護の家族支援に関する質問紙の質的解析に関わる解析ソフト、ならびに解析用ICレコーダー一式 3.歩行分析ならびに子どもたちの活動の様子を記録するデジタルビデオカメラ一式、ライフコーダーの解析ならびに機器整備に関わる費用 4.肥満関連遺伝子解析に関わる試薬一式と、解析に関わる費用 5.調査票の印刷代、郵送費、関連学会での発表のための出張費(平成24年度は国内外学会での発表予定)
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Research Products
(6 results)