2012 Fiscal Year Research-status Report
長期家計記録による家計動態と家族経済史の実証的研究
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23500874
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
重川 純子 埼玉大学, 教育学部, 教授 (80302503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 英子 宇都宮短期大学, 人間福祉学科, 教授 (70352573)
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Keywords | 家計簿 / 長期家計 / 家計動態 / 生活史 / 事例調査 |
Research Abstract |
平成24年度は主に①専業農家世帯の家計実態と収支の変動への対処方法の分析と②都市居住雇用者世帯の食料購買行動の変化の分析を行った。結果の概要は以下の通りである。 ①年々の収入変動や年功的ではない収入変化に対し定期的継続的に積立貯蓄が行われており、長期的な家計の安定が図られている。各年間の月別収入の変動、費目別支出の変動ともに家計調査の雇用者平均に比べ大きい。各費目の月別支出の変動は大きいが、各年の月別変動パターンは類似している。収穫時期の分散化するような栽培作物の検討など収入の安定化を図るだけでなく、記帳記録を参考に変動を予測しながら家計管理が行われている。家計管理者である妻は地域の農家の主婦の家計管理学習活動に参加し、学習を進める中で他地域での講師役なども務めている。家計記帳により家計を具体的に可視化し、講師役を務めることが自分の管理方法や生活を振り返る機会にもなったと考えられる。 ②食料購買行動については、穀類、肉類、乳卵などから27品目を取り上げ、昭和30年代から50年代にかけての購入頻度・購入金額の集計・分析を行った。この間、社会的には食生活や購買環境が大きく変化したが、分析対象家計では、同一品目について購入頻度は概ね安定している。居住地立地(都心に近い私鉄沿線駅から徒歩圏内にあり日々の買い回りが容易)に加え、早い時期からパン食や動物性たんぱく質摂取など時代を先取りした食生活であったことや食重視の価値観が影響していたと考えられる。本家計の食生活の場合、あまり変容は観察されなかったが、このことは個別世帯の中では生活様式は変化しにくい可能性も考えられる。他品目や他の家計の分析による検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、雇用者世帯の家計簿分析と専業農家世帯の家計簿分析、生活様式の変化の分析に着手し日々記録データからの抽出方法の検討を予定していた。雇用者世帯1件分について費目調整を継続中であるが、専業農家世帯分については家計実態の分析、記帳者へのヒアリングを実施し、収支の変動、家計管理上の対応を明らかにしている。また、生活様式分析についても、購入頻度・金額の分析を実施した。以上より、概ね順調に研究が進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き家計動態の分析を進めるとともに、生活様式の変容の分析を行う。専業農家世帯だけでなく雇用者世帯についても、年ごとの月別費目別支出の変動の分析を行う予定である。専業農家世帯については、前年度の記帳者ヒアリングの際に記帳者にとって記帳初期となる昭和40年代の家計簿を追加貸与いただき、資料の複写を終え、分析に着手している。ヒアリング時に記帳者は地域の家計簿記帳学習会に参加していたことを確認しており、管理手法が改善している可能性が考えられる。さらに分析をすすめ、既に分析を行っている昭和50年代以降の家計状況と比較する予定である。 生活様式の変化について、昨年度までは対象家計の食料品27品目の購入頻度、金額を抽出し、変化を捉えた。今後はさらに対象家計のライフステージの推移や社会経済環境の変化との関わりを含め、生活様式の変容過程の分析を行う予定である。 本研究の分析対象家計の記帳期間とは経済環境は変化したが、対象家計がどのように日常的に家計管理を行い、予定されたライフイベントや予測しなかった出来事にいかに備え、対応してきたのか、収入変動、支出変動への家計管理の具体的対応を家計データで明らかにし、これらを総括し今後の生活設計方法の検討に資することを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は引き続き家計動態と家計の変動、並びに個別家計の生活様式の分析を行う予定である。最終年度であるので、これまでの研究の総括を行うとともに、当初計画通り、これまでの研究成果報告として家計動態と家計管理の分析結果について国内の学会と国際学会で報告を行う予定である。
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Research Products
(5 results)