2013 Fiscal Year Annual Research Report
服飾流行における模倣論構築のための社会・文化史的研究
Project/Area Number |
23500875
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
徳井 淑子 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (80172146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 直子 お茶の水女子大学, 生活科学部, 非常勤講師 (00194639)
新實 五穂 お茶の水女子大学, 生活科学部, 非常勤講師 (80447573)
角田 奈歩 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (10623209)
内村 理奈 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 准教授 (00401597)
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Keywords | 服飾 / 流行 / 模倣 / 異文化接触 / 身体表象 / 近代化 |
Research Abstract |
模倣という行為を服飾流行および服飾様式変容の要因として位置付け、東西の史的事象から地域・時代による流行と模倣のメカニズムの特質を解明する本研究において、今年度は特に服装規範の生成における模倣行為に着目した。また最終年度としてこれまで明らかになった事象を総括、模倣とは何かの概念化を試みた。 分担者・小山は、近代日本の礼装規範に関わる模倣行為について、個人レベルの調達動機に焦点を当てた。国家は近代国家形成のために西洋の習俗や服飾を真似るという方法で、国家行事への男子参加者の礼装を定めたが、形態上の模倣が拡大し、規範が形成される現場の調達動機を見ると、西洋文化摂取としての洋服礼装という認識は希薄になり、宮中が認めた礼装としての価値が強められた。模倣行為の拡大過程には時代が選び取った価値が付加されていく構造を明らかにした。 分担者・内村は、17世紀フランスで大量に刊行された礼儀作法書が、宮廷人の生活習慣が模倣されていく過程を示し、モードの伝播の機能を果たしていることに注目した。すなわち作法書の文言が読み継がれることによって規範の身体化が促された一方で、作法書は作法であるモードの伝播を意図しながらも、その奥義を宮廷内部にとどめ続けていた側面があることを指摘、模倣ゆえに逆説的に、宮廷占有のものとして特権化され、モードとしての価値を高めたことを明らかにした。 代表者・徳井と分担者は、これまで明らかになった日本近代、および西洋中世から近現代における服飾流行や身体規範の生成に関する諸事象を総括し、模倣行為には時代に特有の社会構造や政治文化、また経済状況が関わるとはいえ、最終的にモードあるいは規範として成立させるのは衣服を着る個人の価値判断であること、つまり模倣現象とは個人の価値判断の集積であり、時代の心性の証としてその概念を深化させる必要を結論とした。
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