2011 Fiscal Year Research-status Report
無文字社会の伝承染織技術の保存と学校における教育課程最適化プログラムの開発
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23500892
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
下田 敦子 大妻女子大学, 人間生活文化研究所, 助手 (60322434)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生活文化 / 無文字社会の伝承技術 / 教育課程 / 指導プログラム |
Research Abstract |
独自の文字を持たないタイ北部山地民(カレン)は口伝と身体技術の模倣により染織技術を伝承してきた。本研究では、項目反応理論を用いて、染織技術を易しいものから順番に(その最適な年齢において)習得していく「タイ文字による指導モジュール」を開発し、現地の学校において有効性を検証する。これにより、タイ語教育を受けているカレン若年世代(児童生徒)が、学校教育において染織技術を文字によっても習得できるように一般化を図る。本年度は【1】指導者用、生徒用の教材(冊子)を試作した。指導者用:(1)学習環境基準(実習に適した安全条件、衛生条件(照度、温度湿度、通風)、物的条件を含む)、(2)単元数と単元ごとの指導案、(3)マニュアル(生徒用と同一)、(4)実習材料及び物品のリスト。(2)指導案と(3)マニュアルは、技術系統別に、項目反応理論によって求められた「困難度」の値が低い順番に指導、学習できるように作成した。生徒用:(3)マニュアル(指導者用と同一)と、(5)自己評価シートと学習チェックシート、(6)補足資料として音声によるカレン染織技術用語集(DVD)を作成した。【2】染織技術教育活動を実践することが可能な学校(普通科教育の学校、寄宿制の職業訓練校)を選定し、上記教材(1)~(6)を用いて、授業を試行した。その後、現地教育関係者、実践した学校の教員、実際に指導にあたったカレン女性らと授業の内容について協議、検討し、上記教材(1)~(6)を適宜改訂して、次年度に備えた。さらに、普通科教育の学校、職業訓練校における「指導モジュール」試案を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初には年間の研究計画を現地協力者らと確認して、これを基に研究を遂行した。マニュアル等を用いた染織技術教育の授業を、現地協力学校において試行したが、この際、学校側は正課時のカリキュラムとして本授業を導入してくれており、現地の協力が十分に得られている中で本研究は順調に進めることができた。また、現地と日本側との連絡を電話、メールを通じて頻繁に行っていたので、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、「タイ文字による指導モジュール」を開発し、タイ語教育を受けているカレンの若年世代(児童生徒)が、学校教育において染織技術を文字によっても習得できるように一般化を図ることが目的であるので、今後は、タイ政府による教育システムにこれを試験的に活用してもらうことができるように教育省などを通じて働きかける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に試案作成したカレン染織技術の指導モジュールがそれぞれの教育現場において実施可能であるかを検証するために、1)タイ現地教育委員会、学校と協議し円滑に実施できるように交渉し、2)選定された学校(普通科教育の学校、職業訓練校)において指導モジュールを実施する。このために、以下の経費が必要である。指導者(専門知識を持ち技術に熟達したカレン女性)への謝金、現地コーディネーターへの謝金、実施場所の設備、染織技術の指導に必要な用具、材料、日本側研究者の現地への渡航費用である。
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