2011 Fiscal Year Research-status Report
脂肪性肝炎モデルを用いた抗酸化物質投与の発症予防及び治療効果について
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23500969
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
中村 強 福岡女子大学, 人間環境学部, 教授 (30581912)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 |
Research Abstract |
生活習慣病のうち、特に肝脂肪化は肥満や糖尿病などを要因とし、次いで酸化ストレスを主体とする二次要因が重なり、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)及び肝硬変等へと重症化することが知られている。現時点では、本疾患の的確な治療法は存在しないこと、二次要因を軽減するための抗酸化療法が研究されつつあるが、使用する抗酸化物質はサプリメント等を用いた研究が主体であり、食生活の面における改善や治療という観点からの研究は見られない。 そこで、本研究ではNASHの予防や治療を目的とし、食生活や食品に含まれる抗酸化物質に着目して検討することとした。また、動物実験にて使用するモデルは新規なヒトNASHモデル(STAMマウス)を用いることとし、本モデルは使用実績がないことから、発症の安定性やその程度を検証する必要があった。このように平成23年度はモデルの検討を主に実施し、飼育時の経過観察、血液及び肝臓組織を用いた評価を行った。 その結果、STAMマウスは健常マウスに比べ、増体重の低下が観察された。また、血清生化学検査値であるAST、ALT、TG、TCHOなどの結果から、明らかな肝機能障害や脂質代謝異常が観察された。さらに組織学的検査においては、ヒト診断方法であるNASスコア(スコア5以上がNASH)にて評価したところ、この結果からもNASHに至る予後不良の肝障害であることが確認された。 以上の結果から、STAMマウスは安定的に作製可能であり、肝障害はヒトに類似したNASHモデルであることが認められた。さらに、同時に作製したフルクトース誘発NASHモデルと比べてもより明確な肝障害の発症が確認された。 以上の結果を踏まえ、本年度以降、本モデル用いてNASHに至る予防や治療に関する食生活の改善効果を検討する予定である。また、初年度において新規な疾患モデルに関する貴重な結果を得たといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成23年度は、新規なヒトNASHモデルであるSTAMマウスを用いることとし、本モデルの有用性を検証した。すなわち、経過観察に加えて、血液及び肝組織における血清生化学検査値や組織学的検査にて、肝障害の程度を確認した。 作製の結果、モデルとして安定的に作製できること、血清生化学検査値の結果から明らかに肝障害を呈していること、ヒトNASHに極めて類似した肝組織像を観察することができた。以上のことから病態モデルとして有用であるとの結論に得たことから、計画は概ね達成していると評価した。 ただし、肝臓の組織学的検査はHE染色のみであり、スダン染色や免疫染色による病理組織学的検査は未実施であること、このうち免疫染色は酸化ストレス状態を観察するため抗8-OHdG 抗体及び抗4-Hydroxy-2-Nonenal抗体を用いたABC法にて実施する予定であったが、これは現時点で実施中であり、この部分は未達成である。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓の組織学的検査はHE染色のみ実施した。発症には酸化ストレスが関与するとのことから、今後、スダン染色に加えて免疫染色による病理組織学的検査を実施する。このうち免疫染色は抗8-OHdG 抗体及び抗4-Hydroxy-2-nonenal抗体を用いたABC法にて実施する。 次いで、平成24 年度は食事因子を考慮する目的で、緑茶もしくはアルコール除去ワイン(プロアントシアニジン溶液)を、病態動物に比較的早期から摂取させ、NASH発症に及ぼす影響を検証する。また、肝局所における病変の抑制がフリーラジカル消去に由来するのかを解明する目的で、電子スピン共鳴(ESR)を用いたフリーラジカル産生量及びESR-CTを用いた生体画像解析法にて評価する。加えて、肝組織中の炎症性サイトカインの活性化mediator である転写因子及び肝星細胞の活性化(免疫染色)を測定する。前者は炎症性サイトカインの産生抑制を遺伝子レベルで解析する目的でAP-1m-RNA 量を測定する。後者は肝繊維化への進展状況を観察する目的で免疫染色にて肝星細胞の活性化を測定する。 いずれも連携研究者の承諾を得ており、ESRによる測定は九州大学薬学部大学院山田先生、及び免疫染色は久留米大学医学部田中芳明教授との共同研究で実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の研究費はマウス購入代や生体資料分析用試薬代などであり、ほとんどが消耗品費である。一方、測定設備等は先の連携研究者がいずれも保有しており、本研究の実施にあたり新規な設備費は発生しない。 その他、出張旅費や書籍代などが発生する予定である。
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Research Products
(1 results)