2013 Fiscal Year Annual Research Report
PISAの数学的リテラシー論の分析と日本の数学教育への批判的摂取についての研究
Project/Area Number |
23501034
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
小寺 隆幸 京都橘大学, 人間発達学部, 教授 (80460682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浪川 幸彦 椙山女学園大学, 教育学部, 教授 (20022676)
小田切 忠人 琉球大学, 教育学部, 教授 (00112441)
井上 正允 佐賀大学, 文化教育学部, 教授 (00404111)
伊禮 三之 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (00456435)
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Keywords | PISA / 数学的コンピテンシー / デンマークの数学教育 / 数学の授業の改革 |
Research Abstract |
前年度までのPISAの検討をふまえ、最終年度はデンマーク視察に取り組んだ。PISAの数学的コンピテンシーはデンマークのニス教授の理論に基づいており、10年来、氏は教育省とともにコンピテンシーを育む授業創りを進めている。訪問し、その実際を見ることができた。ニス教授や教育省の考え、4つの学校の授業の様子と現場教師の意見などは、冊子「数学的コンピテンシーを伸ばし民主主義の担い手を育むデンマークの数学教育」にまとめた。 そして3年間の取り組みの成果を伝えるために、福井大学大学院教育学研究科教育内容・教材開発研究会と共催で2月15日にシンポジウムを福井大学で行った。その報告書「数学リテラシーと日本の数学教育―PISAの数学的リテラシー論を批判的に摂取しながら現実世界に開かれた数学教育を創造するために」は6月に発行予定である。 この3年間、PISAの調査問題の批判的分析、PISA2012のフレームワークの検討、日本の数学教育の問題点の掘り下げ、学校での授業研究などに取り組む中で到達した数学教育改革の方向性を次の4点にまとめておく。①PISAも指摘するように民主主義の担い手としての市民にとって、批判的思考に基づく数学的リテラシーは必須である。とりわけ3.11以降の日本社会にとってその育成は喫緊の課題である。②数学的リテラシーの育成には現実の問題をとりあげて生徒自身が数学化サイクルを回る授業創りが不可欠である。③数学的リテラシーはテストで測れるものではなく、PISAも全国学テも様々なひずみを生み桎梏になっており、廃止すべきである。④全員一律の目標で「できること」を目指す授業から、一人ひとりが「考える」過程を大事にする授業へと日本の数学教育は一歩踏み出す時である。それを考える上で、個々の数学的コンピテンシーを育むことを目標に、生徒相互の対話と協同を大事にするデンマークの授業創りから学ぶ点も多い。
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Research Products
(14 results)