2012 Fiscal Year Research-status Report
創作意欲を喚起する高専導入教科としての簡易電気自動車キットを用いた教育手法の評価
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23501040
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Research Institution | SALESIAN POLYTECHNIC |
Principal Investigator |
齊籐 純 サレジオ工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40450118)
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Keywords | PBL教育 / 電気自動車 / ものづくり教育 / 導入教育 |
Research Abstract |
年度の研究内容は,本実習テーマの資料の充実,学生の評価・報告の能力向上への試み,自己採点の導入の試み,出張授業への適用とした. 簡易電気自動車キットは部品の組み合わせが多岐に渡り,その作業は安全性に直結する.資料は組み立て方法に加え,ボルト類を実寸で図示するなど工夫した.これにより組み立て間違えを削減でき安全性を向上でき,さらに口頭説明の頻度・時間を削減でき指導の効率化ができた. 従来から作業報告・性能評価を個人レポートで報告させているが,評価・報告能力の向上のために,本校電気工学科の全教員に対して設計コンセプト・作業過程・性能評価を報告させるグループ発表を試行した.指導担当外の教員も聴講するため丁寧な発表が要求されるが,積極的に発表に取り組む姿勢が確認できた. ものづくり教育での成績評価は各自の能力差がある中で取り組む姿勢を適正に評価することは難しい.そこで実習目標を細分化して達成度を学生自身に自己採点させ,それを成績評価に反映する手法を試行した.自己採点の結果は妥当な内容であり本手法の有効性が明らかとなった. 電気エネルギーの体験的理解の出張授業を小中学生対象に3回実施した.内容は電力に関する講義と電動カートに試乗する90分構成とした. 加速感と消費電力を関連付けた体感的理解を促す目的で,モータ消費電力と同程度の消費電力の家電製品名を表示するメータを開発して導入した.アンケートでは全授業・全受講者が面白かったという回答で,試乗した生徒の98%が電気エネルギーの大きさを体感的に理解できたという回答が得られた.特に電気エネルギーの認識については中学生の多くが「興味の対象外」から「電気エネルギーを理解することは生活にも役に立つ」に変化した.このことから出張授業の主目的を達成できており,本研究の簡易電気自動車キットを用いた教育手法は出張授業にも適応できることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本実習テーマを教育プログラムとして確立するために内容充実や安全性への改善に取り組んでいる.昨年度の研究にてハードウェアに起因する課題は成果を上げている.今年度はソフトウェア面の改善として実習用資料を充実し,安全性向上と技術指導の効率化といった成果が得られた.また作業パート以外の充実については,評価・報告の能力向上に重点を置き,実習結果の報告会を試行した.報告会では学生たちの積極的な取り組みが確認でき,今後の指導内容に報告手法の教授を追加することで高い教育成果をあげられるものと予測される結果が得られた.また,ものづくり教育のプログラムとしての成績評価方法も検討しており,一つの手法として実習目標に対する達成度の自己採点を導入した.学生らはこれに対し自己の努力を採点し,その内容は妥当なものであった.これらの試行の結果により,今後の実習テーマのプログラム改善に有用な資料を得ることができた. 本実習テーマをもとに工学教育を受ける以前の小中学生を対象に,理系・工学への興味付けとエネルギーの体験的理解に焦点を当てた出張授業用を実施した.授業前は大半の生徒にとって興味の対象外であった電気エネルギーが,体感的理解を通じて電気エネルギーの理解が生活に役立つといった認識に変化させることができた.主目的を達成することができ,本研究目標である低学年時の教育における興味付けについての有効性が確認できた. あわせて実習後に実施している学生の目標達成度のアンケートにおいては,本研究の試作期から続けて,非常に高い満足度とともに電気エネルギーの体感的理解についてほぼ全員から達成できたという回答が得られている.この結果は,本実習テーマの主目的である創意工夫の喚起と電気エネルギーの体感的理解が達成できている裏付けであると考えられる. 今後も企画,評価,報告などの総合力向上のプログラムを策定していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
本教材を用いた実習課題としては車両製作面と体感的教育については学生の取り組みや満足度を含めて成果を得ることができている.今年度は複合的な能力(特に評価・報告)の育成のためにいくつかの手法を試行し,概ね予測通りの成果が得られており,今後の改良に向けての有効な資料が得られた.この資料をもとに次年度は実習テーマについては作業パート以外のプログラムの充実を図り,本校での実習テーマの改善としては一区切りとする予定である.また,本実習テーマを実施してから試作期をあわせて5年目になるため,2~5年生にアンケートを実施し,本教育プログラムの導入教育としての効果について考察する. 次年度にて本研究の研究成果の社会還元・普及事業の取り組みとして,「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」での公開授業「電気のエネルギーってどのくらい? 電動カートに乗って体験しよう!」(HT25101)に採択されている.同公開授業は中学生を対象として,内容は本研究の実習テーマの縮小版としてものづくりから試乗による電気エネルギーの体験的理解についてまでを実施する予定である.これにあわせてキットの改良と公開授業用の資料を充実させる.ここでの受講者の反応や作業過程を観察することで改善に反映し,本教育プログラムを指導教員の技術レベルに依らずに実施可能できるようにすることを目指し,最終的には中学生を対象とした短期集中講座等で展開できるプログラムとして提案していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実習で使用している簡易電気自動車キットの故障部品の修復・再製作をする.また,出張授業における教育効果をより高くするために,乗車していない生徒に対してもエネルギーを可視化する目的でテレメトリーの導入を検討しており,研究費の一部を必要な装置購入にあてる予定である. 本実習テーマと出張授業との取り組みと教育効果について学会発表(日本工学教育協会,高専教育フォーラムを予定)をするとともに,学会でのディスカッションを経て,それを含めた内容で工学教育分野の学会誌に論文を投稿する予定である. 上記内容について物品購入,資料製作,論文投稿,出張授業・学会発表の旅費等で使用する計画である.
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Research Products
(4 results)