2011 Fiscal Year Research-status Report
社会人分散協調学習における知識共有プロセス構造化・可視化ICTシステムの研究
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23501097
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
比嘉 邦彦 東京工業大学, 大学院イノベーションマネジメント研究科, 教授 (50282877)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | CSCL / 議論構造可視化 / サービス工学 / 認知的存在感 / ソーシャルプレゼンス / メタ認知 / ファシリテーション / 参加型ファシリテーター |
Research Abstract |
分散協調学習における知識共有プロセス構造化・可視化の有効性を検証するため、グループ学習支援システム(GMSS)の利用データを収集・分析し、教育効果を高めるICT活用方法を3つの視点から研究した。1 議論構造の研究: (1)意見連鎖の構造分析 - 技術経営に関するビデオを視聴後、提示テーマに基づく「GMSSによる遠隔非同期型」と「一般的なディスカッション形式の同期集合型」の2種類の議論展開の実験データを収集し、議論構造の差異を分析した。(2)議論構造指標の分析 - 先行研究調査で収集した属性区分と(1)の実験データを用い、議論の論理性や全体構造を定量化するための個別発言属性の検討に着手した。(3)教育効果指標の考察 - サービス科学・工学分野で提唱される顧客満足度の概念を援用し、「学習継続意欲」「他者推奨」を、議論を含む教育プログラムの効果指標として提案した。2 GMSS利用時のソーシャルプレゼンス(以下、SP)概念の検討: 先行研究調査でSPは認知的存在感との相関が高いという知見が得られた。実証実験によりGMSSを利用した議論は認知的存在感を高め、議論の実質化を促進することを検証した。議論の実質化の評価指標としてメタ認知能力を用いた。また、SPの定量的な検証のため、Gunawardena and Zittleが使用したSPに関する調査を実施した。3 ファシリテーターの介在に関する研究: GMSS上の議論でファシリテーターが存在する効果を検証した。参加者にファシリテーターの役割説明を行い、役割を担った受講生のほうが積極的な議論への関わりが見られ、グループ全体としても議論が活性化する傾向が見られた。議論開始前にファシリテーターの自覚を促す説明が議論活性化に有効である可能性が示唆された。また、先行研究調査により、本研究におけるファシリテーターの定義化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究調査、実証実験による仮説に対するデータ収集、関連学会での研究情報の収集を行い、平成24年度以降の調査研究に必要な準備を整えることができた。一部の研究テーマにおいては、想定した知見が得られ、学会での成果発表も行った。また、GMSSの利用実績など本研究における分析に必要な分析ツール(分析用画面、csv出力対応など)を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度で得た研究成果をもとに、実際に運営するコースプログラムで実施適応し、各研究仮説の検証に必要な研究データを収集、分析する。1 議論構造の研究:「議論」の分類区分を策定し、それぞれが追求すべき教育効果とその評価指標を整理する。「議論」に関する評価尺度として、量的指標(発言数や階層数など)だけではなく質的指標(論理性や実質性など)も研究対象とし、実証データで検証する。2 GMSS利用時のSPの研究:SPに関する調査項目とGMSSの機能の有効性に関する調査結果を分析し、SPと相関が高いGMSSの機能を明らかにする。上記分析結果をもとに、再度、実証実験を実施し、GMSSを利用した議論がSPと認知的存在感を高め、メタ認知能力を高めることを検証する。3 ファシリテーターの介在に関する研究:ファシリテーターの介在に関する「具体的な効果の測定(理解度の測定、認知度の測定)」「介在方法の検証」「議論の活性化と実質化といった効果の定義づけ」を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度からの次年度使用額については、当初計画より各種学会、研究会への参加数が少なく、旅費などの執行分に繰越が生じた。平成24年度は、「日本認知科学会」など新たな関係領域の学会や国際学会などに参加し、必要な研究情報を収集する。
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Research Products
(3 results)