2012 Fiscal Year Research-status Report
脳の活性化から見る英語Computer-Basedテスト画面背景色の効果
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23501171
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 敦子(慶祐敦子) 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10337678)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江藤 香 日本工業大学, 工学部, 助教 (70213551)
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Keywords | Web-based test / 画面背景色 / 脳機能測定 / NIRS / 英文法 / リスニング |
Research Abstract |
本研究では、Web-basedの英語テストの画面背景色が試験受験者のスコアに影響するのか,また受験者の脳活動に差をもたらすのかを探るため実験を行った.本年度ではWeb-basedテストの画面背景色として,先行研究でスコアが高かった青色と頻繁に用いられる白色を用い、文字色は黒とした.実験では光トポグラフィを用い受験者の脳局所の活動を観察し,どの脳内部位がWeb-basedテストの受験中に活性化されているかを知る手がかりとした.使用した光トポグラフィチャンネル数は52で,言語活動中枢の左脳を計測した.昨年度と同様に英語文法テストを用いるとともに,英語リスニングテストについても調べた. 英語文法テストの実験では,20代の右利きの男女11名を被験者とし,昨年度の実験で得られた13名のデータとともに分析を行った.この実験では,被験者の英文法問題の正答率は青色背景のほうが白色背景の場合より高く(青=59.17%,白=49.727%),またレストタスクとして挿入した丸を数えるタスクでの正答率も青色背景のほうが高かった(青=95.00%,白=78.33%).また,この差は男性被験者のほうが大きいことが認められた.英語リスニングの実験では,右利きの20代男女33名を被験者として実験を行った.英語問題とレストタスクともに、2色の間に大きな際は見られなかった(リスニング問題:青=90.30%,丸数え:白=89.09%青=72.32%,白=68.89%).光トポグラフィから得られた2次元画像では,いずれの背景色においてもブローカ野付近で高いHb濃度昇が見られたが,白色背景で問題を解いた場合のほうが視覚に関連するブロードマン8野付近を含む広い領域でHb濃度が高くなる傾向を観測した.この結果は,青色背景で英語問題を解いた場合のほうが,視覚などへの負荷が少なく,より問題に集中できる可能性を示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度では,青色背景と白背景のみを対象として黒文字で出されるWeb-basedの英語問題での背景色の効果を光トポグラフィ観測から検証した.平成22年度に提出した申請書では,検証する背景色は青系と白のほかに,赤,黄,緑,うす青,ピンク,うす黄,うす緑を予定していた.しかし,脳計測では個人差が大きく,分析精度を上げるためには1色あたりの被験者数を増やす必要があるため,研究代表者が行った先行研究で平均点が高かった青色系背景とWeb-basedテストで頻繁に用いられる白背景のみを対象とした.文法問題について,うす青背景での実験も予定していたが,ほぼ同様レベルの問題を用いるため,被験者が問題に慣れてしまうことを考慮し24年度に行うこととした.うす青背景の実験用の英語文法問題は23年度に作成済みであり、本年度にはパイロットスタディを行って本実験で想定される問題点を精査し,リスニング問題の一部を変更した. 24年度の研究では,英語文法のWeb-basedテストの得点が背景色で異なるかの検証と受験者の脳機能の光トポグラフィ測定を行うことができ,一定の結果が得られた.問題を注視する時間が長い文法問題では背景色の間でスコアと脳活性に大きな差異がみられること,注視時間が短いリスニング問題では差が少ないという違いがみられた.この視覚野への負担の違いは,光トポグラフィの測定結果とともに,Web-basedテストの背景色がスコアに影響する可能性を示唆した.また,実験結果からは,文法問題の場合には男女で問題の正答率に差異があることが分かった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では,23・24年度と同様の手順でうす青背景のWeb-based英語文法を用いて白背景との差を検証する.次に,英語のリスニング力を測るWeb-based testについても被験者数を増やした分析のため,24年度同様の実験を行う.また,被験者の脳血流量変化を23・24年度の実験と同じ光トポグラフィーで計測する.Web-based testスコア結果を分析し背景色で点数に違いがあるかを検証し,血流量変化が脳のどの部位で起こるのか,最も活性化される部位と背景色の関係について分析を深める.23・24年度で行わなかった時系列での脳活性変化と差分法での分析を進める.言語の音韻と文法処理の脳部分は離れているため,文法とリスニング問題の実験での結果比較を更に行い,背景色の影響は英語の問題の種類で異なるのかを検証する. 22・23年度の実験結果を踏まえてfMRIでの脳機能測定を行い,光トポグラフィー実験結果の精査を行う.文法もリスニングも語彙と文章理解が関与していることから,光トポグラフィーで得られた被験者の脳活性パターンを,文法,音韻,語彙の処理を行う脳の部位との関連から検証する.そのためには,活性化している脳の位置を精査する必要がある.光トポグラフィーでは分解能が高くないため,部位の特定にはfMRIを用いた方が望ましい.パソコン画面の背景色検証という実験の性格上,多くの被験者数でのfMRI実験は難しいため,光トポグラフィ-データへの参照としてfMRI測定を行う予定である.これらの結果から,多くのWBTやe-learning教材で用いられている黒文字,白背景が良い色の組み合わせなのかについて結論を得たい. 研究成果をKES,情報処理学会,人工知能学会で発表予定である.共同研究者との打ち合わせ,和歌山大学と北海道大学での脳機能測定研究者との研究ミーティングを予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた,うす青背景での実験を25年度実施に延期したため,この実験への参加被験者と実験補助者への謝金を,24年度予定した謝金予算の繰り越しから充当する.また,白と青系の背景色から得られたデータを分析するためのソフトを購入する予定であったが,うす青背景からのデータが得られていないので,この予算についても25年度に支出する.また,24年度の研究結果発表が年度末に近かったため研究代表者の所属機関内での会計処理の都合から,発表した学会研究会の旅費を本研究予算からは支出しなかった.この旅費支出にあたる予算を,本年度は研究打ち合わせのための旅費および人工知能学会全国大会参加旅費に充てる予定である. 24年度に得られたWeb-basedテストスコアの違いを脳機能から精査するためには,試験問題を解いている間に活性化している被験者の脳部位の位置を確定する必要がある.現在用いている光トポグラフィでは解像度が20mmと分可能が高くないため,活性化されている部位の制度の高い特定にはfMRIを用いた方が望ましい.パソコン画面の背景色の検証という実験の性格上,多くの被験者数での実験は難しいが,本年度にfMRIを用いた脳機能測定を計画しており,fMRIを使用するための費用とオペレータへの謝金に研究費を使用する予定である.また,脳機能の変化を分析するには光トポグラフィで得られたデータをタスクを行っている際のタイミングと対応させるための作業が必要であり,この分析の熟練者への謝金支払いを計画している.
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Research Products
(11 results)