2012 Fiscal Year Research-status Report
習熟度が異なる学習者混在クラスにおけるWBT学習支援システムが及ぼす効果の研究
Project/Area Number |
23501188
|
Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
倉本 充子 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20352031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西田 晴美 東京農業大学, 生物産業学部, 准教授 (10556054)
|
Keywords | 英文理解力 / 自律学習習慣 / WBT学習支援 / 異なる習熟度 / 半構造化面接 |
Research Abstract |
平成23年度内に実施した2グループにおけるコンピュータによる英文理解力テスト、心理調査、リーディングスパンテスト、質問紙調査、半構造化面接で得られたデータの質的分析結果を踏まえ、理解力テストで追加すべき項目および半構造化面接において修正すべき調査項目を検討し、平成24年度に前年と同条件の学習者1グループに対しての追加調査実験を行った。前年度までの調査により、収集したデータの相互の関連を総合的に比較検討し、対象者がテストに解答するまでのプロセスを探ることで、本研究において開発したコンピュータによるタイプBの英文理解力テストが、限られた時間内で実施の可能な学習者の英文理解力を予測するテストとして、十分な説明力があることがあきらかとなった。しかし、日常におけるパッセージレベルでの英文理解力との関連をさらに追及するために、3パラグラフ・9文から成るパッセージの理解度テストを加えて追加調査する方針とした。 また、「訓練により得たストラテジーを効率よくその後の学習計画に転移させることの重要性」が、パイロット研究で判明していることを踏まえ、より学習者の心的働きと理解度の関連を調べるため、面接項目の半構造化部分にストラテジーに関する質問項目を追加した。 2年間における個別の条件を持つ学習者らの現状をつぶさに調べるGTA 理論に基づく質的分析を踏まえ、授業に参加する異なるレベルの学習者への適正な個別助言モデル作成に向け、少数の調査対象者から、授業現場での汎用に適するように、コンピュータテストのWBT配信を整えた。認知モデルの観点から、言語学習の成功に必要な、教室内外での学習者自身の自律学習習慣の形成を補助するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に2グループを対象に実施したことにより、学習者の既習外国語語彙の保持量や運用力の差異、メモリースパン容量の程度、過去の学習経験の差異などがもたらす英文理解度への心的働きが明らかとなった。これらの結果を踏まえ、さらに必要な異なる角度からの調査項目を加えて、1グループでの調査実験を実施することができた。初級から中級上位までの異なるレベルの学習者特徴を掴むことができ、今後の汎用化に向けてテストのWBT配信の準備も整った。 外国語の習得は、母語の習得とは異なり、生活的概念として自然に身につくものではなく、科学的概念の発達のように最近接発達領域 (Vygotsky、 1978)、つまり、学習者の現今の力を少し超えた範囲で有効に行われるものであるため、個々の学習者の現今の力+1の環境を整える必要がある。当該調査実験により、資料に基づくアドバイスで学習者自身が納得できる、次のステップへの適切なスキャフォールディング環境を整える準備ができた。具体的には、20~50名程度の担当授業の参加学習者に対する適切な助言を発信するため、大規模な時間をかけた英語力テストではなく、低コストかつ短時間で行なえ、なおかつより良く個人の英語理解力を予測し、説明しうるデータを得ることが可能なテスト形式を見出した。 平成19~21年度に取り組んだ『英語自律学習支援システムによる音読・シャドーイング指導の系統的研究』で検証した、初中級学習者に対するWBT利用のシャドーイング指導効果を踏まえた学習素材の開発をすすめ、異なる英語スキル学習者の混合した授業運営において、実際に使用している。
|
Strategy for Future Research Activity |
24年度のデータをもとに、GPA理論に基づき、学習者の心的影響を含める個人差要因のさらなる分析を進める。その結果により、今年度までに開発した理解度テストの脆弱さの修正に加え、広くEFL学習者を対象とするシャドーイング法を含む形態でのフィードバック重視型の練習課題の追加作成を行う。これらの課題には、研究目標のひとつである語彙頻度別単語認識課題の完成を含め、課題の第一義である「習熟度が異なる学習者混在クラスにおける」授業内個別助言の可能性を具体的に提示する予定である。この目的のもと、コンピュータによる英文理解力テスト、心理調査、リーディングスパンテスト、質問紙調査、半構造化面接で得られたデータの質的分析に加え、本研究により開発した低コストかつ短時間で行える英語力理解度テストをおおよそ100名の学習者を対象として実施する。その結果を分析し、「習熟度が異なる学習者混在クラスにおける」実運用において、個別学習者へのアドバイス項目や配信方法の適正度を詳しく調査する。また、24年度までに修正を加えたWeb上でのテストに関するオンラインでの心理状況調査アンケートも同時に実施し、特徴ある回答者に対する追加調査(半構造化面接)を進めていき、教室内外で学習者が自ら取り組む学習活動に着目し、これを支援する体制を整えたいと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として、今後の推進方策で述べた約100名を対象とする英語理解力テストのデータ収集や分析に必要な分析ソフトウェアや各種統合ソフトウェアを購入する予定である。また、同時に収集するデータの記録用メディアおよび開発している英語理解力テスト配信や練習課題などの修正および新たな課題作成のため、学習者が使用する最新版PCに適応する課題作成や配信条件を検証するため、最新のPCの購入も予定している。さらに、国内・国外で実施の研究会・学会参加などのための旅費を主な使用予定費目とし、前年度からの繰り越しと合わせ、研究分担者らと分かち、使用する。
|
Research Products
(13 results)