2011 Fiscal Year Research-status Report
災害脆弱性評価に向けた日本の沖積平野の地形形成モデルの構築
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23501238
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
須貝 俊彦 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90251321)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 沖積低地 / 活断層 / 津波 / 地震性沈降 / 縄文海進 / 古地震 / 河床縦断面形 / 地下地質 |
Research Abstract |
日本全国、北海道から本州、四国、九州に分布する主要35河川を研究対象として、既往研究のレヴューを行い、今から2万年前ころの最終氷期最寒冷期の低海水準期における河床縦断面形を復元し、その関数形に関するデータベースを構築した。さらに、これらの河川の沖積層に含まれる海成層の堆積範囲とその層厚分布についても、データベース化を行った。その結果、最終氷期の河床縦断面形の定量的記載を日本で初めて行った。さらに、最終氷期最寒冷期に砂礫が現河口よりも陸棚側まで運搬されていた可能性を指摘した。濃尾平野と関東平野の事例研究も行い、濃尾平野においては、前進性デルタの頂置層の堆積頂面である潮間低地を指標として、完新世における地震性傾動・沈降現象を検出するとともに、沖積平野が陸地であり続けるためには、長期的には氾濫原堆積物の累重が不可避であることを明らかにした。関東平野においては、沖積層地下の埋積地形面群の詳細復元を行い、とくに、中川低地と荒川低地とで、縄文海進時の波蝕台の形成に大きな差異があること、それが海進の時空間的規模の違いを反映していること、そうした地域差の要因として、後背地からの土砂供給の活発さが、重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存文献のレヴューが順調に進んだので、沖積層のマクロな分布特性を掌握する課題を達成できた。一方で、フィールドワークに基づく、ケーススタディが予定どおりには進捗しなかった。主たる理由は東日本大震災が発生し、三陸海岸地域の小規模な沖積低地の集落が壊滅し、その被害状況を緊急調査する必要が生じたことである。この調査は緊急性を要したことに加え、当該年度の科研の個別課題とはやや目的がことなるとはいえ、本科研の研究課題のおおもとをなす基本課題としては一致しており、沖積低地の災害脆弱性を正しく評価し、減災に役立てるために是非、必要な調査であった。この調査の経験は、3カ年を通しての本科研課題の成果に反映させることができると考える。以上を鑑み、おおむね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ジオスライサーまたはパーカッション式コアラ―を用いたフィールドワークを実施し、沖積層最上部泥砂層を対象として、地質試料を連続サンプリングする。試料の、含水比測定、粒度分析、元素分析、鉱物分析を行い、年代試料が得られた場合はあ、その測定も行って、軟弱地盤の形成プロセスならびに、形成範囲の分布限界に関する実証的なデータ収集・解析をすすめる。東日本大震災以後の研究動向を踏まえて、可能であれば、人工改変が及んでいないと推定される地表付近の試料を高密度で採取し、津波堆積物や液状化の痕跡などの存否を検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
地層を採取可能な装置を購入し、現地調査旅費を十分確保して、堆積物の分析を進め、完新世後期における沖積平野の地盤変動の実態解明を進めるとともに、昨年度到達した、河川データベースの改良を図り、縄文海進時の海岸線位置データの解析を進めて、軟弱地盤伏在予測モデルの構築へ向けた取り組みを進めたい。
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Research Products
(12 results)