2012 Fiscal Year Research-status Report
関東平野の起源に関わる上総層群基底黒滝不整合の成因と形成プロセス
Project/Area Number |
23501246
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山崎 晴雄 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (70260784)
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Keywords | 黒滝不整合 / 上総層群 / テフラ層序 / 関東平野 / 形成プロセス / 海底地すべり |
Research Abstract |
日本の堆積盆地には、鮮新世末(3Ma頃)に不整合が形成されていることが多い。これらは、海底地すべりによって一度堆積した地層が削り取られたことで堆積物の欠如が形成された可能性がある。しかし、地すべりの原因は3Ma頃の汎世界的な気候寒冷化とする考えが多いが、深海コアデータからは急激な寒冷化は認識されていない。一方、プレート運動の転換などによる広域的な地殻変動が原因の可能性があるが、具体的な証拠はない。この問題を解決するには、不整合の形成プロセスと時期を明らかにする必要がある。 そこで本研究では房総半島の黒滝不整合について、その形成時期や形成プロセスを解明することとした。形成時期は不整合を最初に覆う水中堆積火山灰層(テフラ)の同定対比から発生時期を推定する。また、形成プロセスは同時期に地すべりが発生した範囲をテフラから識別すると共に、海底地すべりと不整合が両方観察できる福島県浜通地域の仙台層群富岡層を調査し、地すべり形成プロセスを解明して、房総半島の黒滝不整合と比較することとした。 平成24年度は野外調査を行い、火山灰試料の採取や地質構造の観察を行う予定であったが、平成23年3月11日の東北大震災以降、野外調査を予定していた福島県の富岡町や浪江町等が原発事故により立ち入り禁止になり、24年度もその状態が継続した。また、山崎の個人的な事情だが、寝たきりの父親(24年12月死亡)の在宅介護を行っていたため、遠方での野外調査等ができなくなってしまった。そのため、野外調査は近隣の三浦半島や関東平野西部のみで行った。その結果、これらの地域では、テフラ堆積時期の連続性からみて鮮新世末の三浦層群池子層とその上位の上総層群浦郷層の間には不整合が認められないことが判った。現在、時間的な連続性確認のため両層のテフラを詳細・分析対比中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.寝たきりの父親(平成24年12月28日死亡、92歳)を家族と在宅介護していたため、出張等で長期に家を空けることができず、そのため野外調査にほとんど出られず、さらに分析に必要な火山灰試料を採取することができなかった。 2.調査地域が福島県富岡町、浪江町に含まれており、福島第一原発事故により立ち入り禁止区域となっているため、野外地質調査が全く実施できず、試料採取もできなかった。 3.火山灰試料の化学分析を従来からの慣例で安価で外注していたが、分析実施企業の合併、合理化により、契約の見直しがあり、従来の8~10倍の金額を求められた。それでは十分な数の分析ができないため、分析項目を減らす、あるいは他の分析機関を探すなどの検討を行った。しかし、国内ではどの機関でも外注金額はあまり変わらず、分析外注実施が困難になった。そのため、予算執行が遅れてしまった。現在、外国企業への化学分析外注を検討しているが、会計上の処理等に問題が残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は房総半島・三浦半島において、黒滝不整合の有無の確認。不整合の上位及び下位層準に挟まれるテフラの対比、堆積時期の特定を行う。また、富岡町等では立ち入り禁止が解除されたので、福島県浜通地方の鮮新世末から前期更新世のテフラ調査を再開したい。さらに、これらの地域に分布する広域テフラの編年情報を得るため、東北地方や中部地方に分布する鮮新世~前期更新世の巨大火砕流堆積物の調査も実施する。 黒滝不整合の形成時期に関する地域的な分布情報を集めて、不整合の形成プロセスについて考察を行う。 分析に関しては、外注先を早急に決め、滞留している火山灰の純化作業、分析待ちICP発行分析試料の処理を進める。そして、分析データに基づいてテフラの同定・対比をを行って、黒滝不整合形成時期および不整合形成プロセスの詳細な把握に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に繰越額が生じたのは1.予定していた野外調査実施が遅れ、2.同時に試料分析(火山灰純化およびICP分析外注)の発注等が遅れたためである。そのため25年度の早い時期にこれらを実施する。使用予定額は本年度残金556,117円と25年度直接交付金1,100,000円の合計1,656,117円 細目 物品費 600,000円 内訳 コピー・プリンター消耗品 25万円 PCソフト 20万円野外調査用具・実験関係消耗品等 15万円 旅費 300,000円 内訳 野外地質調査・試料採取調査旅費 謝金 100,000円 内訳 実験補助アルバイト その他 656,117円 内訳 火山灰純化作業外注 20万円、ICP分析外注 35万円 レンタカー借損料・有料道路料金等 106,117円
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Research Products
(7 results)