2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501252
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
渡辺 和之 立命館大学, 文学部, 非常勤講師 (40469185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, 非常勤講師 (30401425)
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Keywords | ネパール / 交易 / 畜産物 / 羊毛 / 肉 / 乳製品 / 都市と農村 |
Research Abstract |
平成24年には、東部地域と中部低地における畜産物の流通を把握することを目的に、双方の地域の村と首都カトマンズで調査をおこなった。東部低地では、代表者の調べるオカルドゥンガの村で生産する羊毛敷物の流通を調べた。その生産者は年々減少していること、その理由は羊毛の生産者である羊飼いが少なくなり、羊毛が入手しづらくなったことがある。ところが、今回首都カトマンズで調べた所、村と同じ製法の敷物を、カトマンズではチベット産やニュージーランド産の羊毛を用いて作っている人がおり、交易が伝統文化の存続を強めていることがわかった。また、中部低地では、研究分担者の橘が彼の調査地であるチトワンにおいて、狩猟採集や定住農牧に関わるチェパンが利用する畜産物を調査した。その結果、コウモリ猟などで得た野生動物の肉や彼らが飼う家畜の肉などの利用法や流通過程が明らかになった。チトワンでは近年、村の近くにバザールが出来きてそこに山のチェパンが肉を売りに行くようになった。また、近年ではチェパンも首都カトマンズや海外出稼ぎへ行くことが多くなり、都市を訪れる際には村の鶏肉をおみやげに持って行くと重宝されるなどの情報が得られた。なお、平成24年にはこれまでの調査でわかった成果をドイツのケルンでおこなわれた国際地理学会と、カトマンズでおこなわれた国際シンポジウムで発表した。また、ドイツでの研究発表の帰途、ネパールとの比較のため、現在でも羊の移牧が見られるルーマニア、ブルガリア、ギリシャにより、羊の移牧と畜産物の利用法を視察してきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始当初に構想した計画と比べ、現在までの所、ほぼその目的を達成している。ただし、調査を進めて行くうちに以下に述べる点でさらに補充調査が必要と考えられる点が生じてきた。(1)東部低地産の羊毛交易の調査では、チベット産やニュージーランド産の羊毛をどのようにカトマンズで仕入れるのか、卸売市場に関する調査が必要である。(2)中部低地産の鶏肉が首都で重宝される背景には、首都ではブロイラーが主流だからである。首都の養鶏場を訪れ、その肉や卵とはどのような環境で育つのか、もし山の鶏を商品として輸送した場合、首都ではコストに見合う商売が見込まれるのかなど、疑問が生じた。(3)これまでの調査で首都まで流通する羊毛、鶏肉などの事例を集めたが、乳製品については、まだ調査をおこなっていない。首都圏の集乳事情、外国人向けのチーズの流通事情に関する調査をおこなうと同時に、村で生産された乳製品はどこまで流通するのか明らかにする必要がある。以上の点は、平成25年度に補充調査をおこなう必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、これまでの調査で明らかになった点の補充調査をおこなうと同時に、研究成果の公開に向けて論文を執筆する。また、必要に応じ、ネパール国内だけではなく、絨毯など羊毛製品の流通調査のため、中国チベット自治区などの羊毛生産地でも補充調査をおこなうことも視野に入れている。以上の調査をふまえ、幹線道路の物流事情を分析するとともに、その流れとは逆に山地から地域を越えて流通する商品の流れはどのような条件のもとで地域外、首都圏、国外にまで流通するのかを分析する。また、似たような条件下でも異なる選択が見られる場合、なぜ差異が生じるのかを考察することで、人々にとって何が好ましい交易なのか、その多様な交易のあり方の幅を明らかにする。本研究の研究成果は、毎年、日本地理学会、人文地理学会、現代インド研究会などで順次発表し、投稿論文を執筆してゆくが、最終年度には、日本語、及び英語で報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度では、上にあげた補充調査をおこなうため、海外旅費(ネパール×2人分)を計上した。また、研究成果を国内外の学会で発表するための経費として海外旅費(イギリス×2人分)、国内旅費(東京×2人分)を計上した。また、物品費として、図書購入代や文献複写代などを計上するとともに、報告書の出版経費も雑費として計上した。
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Research Products
(13 results)