2013 Fiscal Year Annual Research Report
前がん状態にみられる細胞老化とゲノム不安定性における複製ストレス応答機構の役割
Project/Area Number |
23501257
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
山下 孝之 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (10166671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 司 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (10323643)
関本 隆志 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (20436322)
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Keywords | Yファミリー・ポリメラーゼ / 発がん遺伝子 / DNA複製 / ゲノム不安定性 |
Research Abstract |
活性化がん遺伝子による異常なDNA複製は、発がん過程を促進するゲノム不安定性の主な原因として注目を集めている。 このようなD NA複製は二重鎖切断を生じ、その組換え修復のエラーを介して、遺伝子の欠損、増幅、再構成などを引き起こすと考えられる。一方、 発がんに関連するゲノムの変化には点突然変異が大きな役割を果たしているが、がん発生の過程で変異率の上昇する可能性やその仕組 みは十分明らかではない。Yファミリー・ポリメラーゼ(Y-Pol)は忠実度の低いDNA複製酵素であり、損傷乗越えDNA合成への関与はよく 知られているが、それ他の高次構造を取るDNAの複製への関与が報告されている。私達はヒト細胞にがん遺伝子サイクリンEを過剰発現 すると、DNA再複製にともないreplisomeにY-PolのひとつであるPol-etaが動員されることを見出した。ヒト細胞U2OSにおいてgeminin をノックダウンし、G2期停止からDNA再複製による高倍数体が出現するモデル系を用いて、Pol-etaの働きを追究した。本細胞において 、DNA再複製している細胞に特異的にreplisomeへのPol-etaの動員が見られた。また、DNA再複製による新規合成DNA鎖にPol-etaが結合 することが生化学的手法によっても確認された。さらに、RNAiによるPol-etaの発現抑制は、S期のDNA合成には影響しないが、再複製 におけるDNA合成速度を有意に抑制することが明らかになった。これらの結果は、DNA再複製にPol-etaが関与することを示唆する。また、 私達はcyclin EによるDNA再複製がPol-eta発現抑制によって低下すること、ヒト初代内容細胞においてパピローマウイルス発がん蛋白E6/E7を発現による再複製部位にもPol-etaが動員されることも証明した。これらの結果は、活性化がん遺伝子が引き起こすDNA 再複製にPol-etaがおそらく他のY-Polと協同して関与することを示唆し、がんゲノムの不安定性の分子機構を理解する上で新しい知見を提供する。
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Research Products
(6 results)