2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23501266
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
古賀 文隆 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (10285851)
|
Keywords | 癌幹細胞 |
Research Abstract |
転移のある膀胱癌患者に対する治療は、シスプラチン主体の多剤併用全身化学療法が標準的に行われる。全身化学療法により、約7割の患者が良好な腫瘍縮小効果を示すが、殆どの症例で治療継続にもかかわらず病勢が進行し癌死に至る。近年、「癌には高い腫瘍形成能を有すごく少数の癌幹細胞が存在し、癌幹細胞が腫瘍形成の根源である」とする癌幹細胞理論が提唱されており、様々な癌腫で癌幹細胞の存在が報告されている。癌幹細胞理論に基づくと、上述の現象は、「膀胱癌の大部分を占める非幹細胞成分はシスプラチン主体の化学療法に反応するものの、治療耐性を有す少数の癌幹細胞集団が腫瘍再増大の元となり、患者を死に至らしめる」と考えることができる。ヒト膀胱癌細胞株から癌幹細胞の条件を満たす細胞を同定・分離し、膀胱癌幹細胞のシスプラチン耐性を確認し、その分子生物学的背景を解析の後、耐性克服の可能性を検討した。また、p63発現との関連を見た。 結果: ・CD44陽性ヒト膀胱癌細胞(5637細胞)は、癌幹細胞の要件である1)球状コロニー形成能、2)マウス皮下での高い腫瘍形性能、3)自己複製能、を満たす細胞集団であった。親細胞株がp63蛋白を強発現するのに対し、CD44陽性膀胱癌細胞集団はそのp63発現が消失していた。 ・膀胱癌幹細胞(CD44陽性膀胱癌細胞)は、非癌幹細胞(CD44陰性細胞)と比較して、高いシスプラチン耐性を示した。 ・膀胱癌幹細胞の治療耐性関連蛋白の発現プロファイルをみると、非癌幹細胞と比較して、著明に高いAktおよびErk活性を示し、シスプラチン治療耐性の一因と考えられた。 ・ヒートショックプロテイン90 (Hsp90) 阻害剤は、in vitro, in vivoともに、膀胱癌幹細胞のシスプラチン感受性を増大させた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)p63の癌治療耐性における役割 上述のように、p63の欠失が膀胱癌のシスプラチン抵抗性と関連する可能性が示唆された。膀胱温存を主目的に化学放射線療法を受けた浸潤性膀胱癌患者の膀胱癌組織のp63発現と治療効果との関連を見たが、有意な関連を見出せなかった。 2)p63の転移における役割 膀胱癌の肺転移マウスモデルを用いたp63の転移における役割の解析を今後予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウス肺転移モデルを用いた膀胱癌転移におけるp63の役割の解析 p63発現を欠失するUMUC3のマウス尾静注・肺転移モデルを作成し、p63を強制発現させたUMUC3-p63細胞との肺転移発生頻度の相違を調べる。同様の実験を、p63の強発現を示す5637細胞と、5637から抽出した膀胱癌幹細胞(p63発現欠失)についても行う。肺転移モデルの作成が困難な場合は、尾静注で高率に肺転移を来すメラノーマ細胞株(B16)の親細胞株と p63導入細胞株とで、肺転移能を比較する。転移能に差を認めた場合、転移関連蛋白の発現プロファイルの相違を調べる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の各実験に研究費を使用する予定である。具体的には以下の通りとなる。 1)実験用ヌードマウス 2)トランスフェクション試薬 3)培養試薬各種 4)蛋白発現解析用試薬各種 など
|