2012 Fiscal Year Research-status Report
成熟T細胞腫瘍で強く発現するケモカイン受容体CCR7の発現制御機構の解明
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23501273
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 隆志 近畿大学, 薬学部, 教授 (60319663)
樋口 智紀 近畿大学, 医学部, 助教 (00448771)
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Keywords | CCR7 / c-Myb / ATL / CTCL |
Research Abstract |
これまでに我々は、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)及び皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)におけるケモカイン受容体の発現とその役割について報告してきた(Blood 2002, Oncogene 2008, 他4報)。我々の研究はATLの細胞起源や組織浸潤を説明するだけでなく、CCR4発現に関わる転写因子FRA-2がこれらの腫瘍細胞の増殖にも関与する新規発がん遺伝子であることも明らかにした。また我々はATLでのCCR7発現がリンパ節浸潤と相関することを報告したが(Blood 2000)、CCR7発現に関わる転写因子やその転写因子のATLやCTCLでの発がん機構との関係は不明なままであった。そこで昨年度は、ATL及びCTCLにおけるCCR7の転写活性化領域を決定した。しかしこの領域には既知の転写因子のDNA結合配列と高い相同性を示す部分がなかったことから、ATLでのCCR7発現を誘導する転写因子の同定には至らなかった。そこで本年度はこの新規DNA結合配列・GAGGAGに結合する転写因子の同定を試みた。まず、CCR7非発現細胞株を用いた転写因子の再構築実験では、Sp1、c-Myb、C/EBP、C/EBPbはCCR7の転写活性を上げなかった。また、DNA pull-down assayとMALDI/TOFMSを用いたタンパク解析によって、zinc-finger proteinを含む数種類の転写因子が得られた。さらにATL及びCTCLとは異なるT細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)の細胞株JurkatでのCCR7の発現には違う転写活性化領域が関与することも明らかにした。以上の解析から、ATLやCTCLでのCCR7発現にはT-ALLとは異なる転写因子が関与し、その転写因子はこれまでATLやCTCLで発現が知られている転写因子とは異なるものであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度我々は、1)CCR7プロモーター上に存在する新規DNA結合配列・GAGGAGの特定、2)この配列に結合する転写因子の候補群の抽出、3)CCR7発現におけるこのエレメントのATL及びCTCL特異性を明らかにした。しかしながら、GAGGAG配列に結合する転写因子の同定の過程で、yeast one-hybrid法での転写因子の同定は今回のDNA結合配列には不向きであることがわかり、また、DNA pull-down assayにおいてはPyruvate kinase isozymes M1/M2 など間接的には発現に関連する可能性をもつが転写因子そのものではないものが検出されるなど、実験系の安定化に多くの時間を費やさざるをえず、予定していたCCR7転写因子の同定までには至らなかった。したがって、次年度は本年度において十分に実行できなかった研究計画も含めて遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は実験系の安定化に多くの時間を費やさざるをえなかったため、ATLやCTCLでのCCR7発現に関わる転写因子の同定には至らず、十分に研究計画を進めることができなかった。しかし、候補となる転写因子も幾つか得られている。よって、次年度はまずCCR7発現制御因子の同定を行う。方法としては、CCR7非発現細胞株に候補となる転写因子の発現ベクターを導入する再構築実験、同定したDNA結合配列の点変異解析系によって候補転写因子の絞り込み、chromatin immunoprecipitation assayによるインビボでの特異的結合の確認、等を用いてCCR7の発現制御に関わる転写因子の決定を試みる。これらの実験系は当該研究施設にてその基盤となる手技はすでに構築されているため、立ち上げに必要な時間と技術面は問題ない。次に同定した転写因子がATLやCTCLで発現していることを臨床検体を用いた免疫組織染色などによって検討する。最後に、同定した転写因子のATLやCTCLにおける機能を強制発現系やsiRNAによる発現抑制実験などを用いて解析する。以上のように、次年度計画を一部変更したが、CCR7発現制御に直接的にかかわる転写因子の同定を軸とする本研究目的には影響せず、研究計画全体での大幅な変更は生じない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究計画の実行において、必要となる機器は当該研究施設にてすでに整備されているため新たに購入する必要はなく、主に必要となる研究経費は細胞培養や解析に使用する試薬、キット、siRNA、免疫組織染色に用いる抗体などの消耗品費にある。次年度も、本年度と同様に研究費は主に消耗品の購入に使用する。
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