2012 Fiscal Year Research-status Report
抗がん剤による抗腫瘍免疫応答活性に関わる分子機構の解明
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23501283
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
地主 将久 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40318085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉山 裕規 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (10253147)
千葉 殖幹 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 博士研究員 (20550023)
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Keywords | 国際情報交換 |
Research Abstract |
抗がん剤刺激により自然免疫応答を抑制する因子をスクリーニングした結果、樹状細胞上に発現誘導されるTIM-3 (T cell immunoglobulin and mucin domain 3)を同定したため、その役割について解析した。TIM-3は、IL-10, VEGF, Arginase-Iなど多彩な腫瘍側因子により発現亢進が認められ、Toll-like receptorやRig-I-like helicaseなど細胞質センサーを認識する核酸リガンド刺激によるIFN産生能を、顕著に抑制する機能を有することを同定した。さらにその分子機構を詳細に検証したところ、TIM-3は炎症性腫瘍微小環境で高産生されるHMGB-1と結合することで、HMGB1-DNA複合体形成を阻害することが判明した。HMGB1-DNA複合体は核酸のエンドゾーム輸送に重要であり、TIM-3による競合阻害により複合体形成が阻害されることで、自然免疫シグナルを遮断することを明らかとした。さらに、CD11c-DTRとTIM-3欠損骨髄細胞移植によるキメラマウスの検証により、樹状細胞上のTIM-3は、抗がん剤を介した細胞死に伴い遊離する腫瘍由来内因性の核酸を介した自然免疫応答を抑制することでその抗腫瘍効果を抑制すること、さらにTIM-3とHMGB1相互作用を標的とした阻害抗体投与により、抗がん剤の効果を劇的に改善することを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
抗がん剤による治療応答を抑制する免疫学的因子として申請書が以前に同定したMFG-E8の機能解析に限定せず、本研究で実施した網羅的なスクリーニングで新たにTIM-3による自然免疫応答抑制と抗がん剤治療抵抗性の分子連関を新たに明らかにし、世界的に高い評価を得た (Chiba S et al., Nature Immunology, 2012)。以上より、当初の計画以上の進展、業績を得ていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究にて得られたTIM-3以外の免疫制御因子のいくつかについて、腫瘍内での発現変化、自然免疫やミエロイド細胞による抗原提示能に及ぼす影響について検証する。また阻害抗体併用による抗がん剤の抗腫瘍効果に与える影響を細胞培養系やin vivoでの動物実験モデルでの実験にて明らかにしていく。以上の検証により抗がん剤応答を修飾する免疫学的因子の各々の役割やクロストーク、相乗応答などを解析することで、宿主免疫応答を介した癌治療応答性修飾能の全体像を把握することを最終年度の課題とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MFG-E8やTIM-3のほかの免疫制御因子として、TIM-4やOX40の関与を明らかにしていること、これらの包括的検証の準備に時間を要すると判断されたため、当初予定していたアッセイを平成25年度に実施することで延長し、検討することにした。具体的には、その機能解析を遂行するための研究資材、たとえば標的分子を阻害するsiRNAベクターの作成、阻害抗体ハイブリドーマ作成、免疫染色や遺伝子定量(PCR)を目的とした抗体、プライマーの購入および実験動物購入費など、そのすべてを実験に使用する消耗品購入費として充てることとする。
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