2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23510004
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
戸田 任重 信州大学, 理学部, 教授 (60291382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 裕一 信州大学, 山岳科学総合研究所, 准教授 (80311330)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 硝酸塩汚染 / 地下水 / 窒素安定同位体比 / 年代解析 / 人工的不活性ガス / 六フッ化イオウ / トリチウム |
Research Abstract |
長野県南部天竜川沿い集落の地下水硝酸塩汚染解析において、窒素安定同位体比(δ15N)による汚染源の解析と同時に、人工的不活性ガスのクロロフルオロカーボン類(CFCs)、六フッ化イオウ(SF6)およびを放射性水素同位体トリチウム(3H)用いた地下水年代解析を実施した。 調査地の水道水源用井戸(4本)、家庭用井戸(3本)、調査用井戸(2本)の硝酸態窒素濃度は3.2~17.7mgN/L、δ15Nは2.7~7.5‰であり、汚染源として化学肥料由来窒素が51~79%、堆肥由来窒素が18~45%と推定された。 井戸水のCFCs濃度は、一部の井戸を除き、過去の大気濃度よりも数倍高く、地下水の涵養・流動過程で、大気以外の起源(地域的な人為起源)が付加したことが示された。そのため、CFCsは地下水の年代解析には使えなかった。一方、井戸水のSF6濃度は0.28~2.64 f mol/kgで、概ね大気の溶解平衡濃度の範囲内であった。SF6による年代解析では、地下水の滞留時間(2011年現在)は1~32年間と推定された。水源用井戸(4本)および調査用井戸(1本)については、放射性水素同位体トリチウム(3H)も測定した。これらの井戸水の3H濃度は1.2~3.2TUであり、いずれの地下水も1953年の大気核実験開始以降の降水に由来していることを示し、SF6による年代解析の妥当性を裏付けた。水道水源用および調査井戸(いずれも30m以上の深井戸)の地下水の硝酸態窒素濃度は、滞留時間が20年弱(17~18年)で極大を示した。 人工的不活性ガスによる年代解析を併用した、窒素安定同位体比による地下水の硝酸塩汚染解析は国内初であろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素同位体比による汚染源の解析、人工的不活性ガスの一つである六フッ化イオウ(SF6)による年代解析が計画通り進行した。SF6による地下水年代は、放射性水素同位体トリチウム(3H)分析による年代解析とも矛盾せず、その妥当性が裏付けられた。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年度の不活性ガスの委託分析費用が予想より少なく済んだので、その費用も加え2012年度は調査地点数を増やす。2011年度に調査していない水道水源用井戸5本に加えて、ミソベタ層(難透水層)下部に達する家庭用井戸の追加調査を行う。その地下水について、窒素安定同位体比(代表者:戸田担当)、不活性ガス(SF6、委託分析)、フェナントレン類(分担者:宮原担当)の測定を行う計画である。 観測地点数を増やすことで、地下水年代と硝酸塩濃度・窒素同位体比等との関係をより明瞭にし、今後の地下水硝酸塩汚染の動向を予測できるようにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として、水質一般分析、窒素安定同位体比の分析、人工的不活性ガスの委託分析に使用する。調査・分析に伴う、調査旅費・分析補助経費(人件費)の支出も含む。前年度は、人工的不活性ガスの委託分析経費および人件費(謝金)が予想よりも少なくて済んだため、約50万円の残額が生じた。その残額も合わせ、今年度の調査地点数を増加させる計画である。
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