2013 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア沿岸開発に伴う海底地形及び海況の変化の解明
Project/Area Number |
23510009
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上原 克人 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (80223494)
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Keywords | 東シナ海 / 南シナ海 / 海洋環境変動 / 海岸線変化 / 中国 / 沿岸開発 / 海洋モデル |
Research Abstract |
最終年度に当たる本年度は、渤海の流況変化の数値シミュレーションと南シナ海の海底地形データ構築を行った。 過去2年間に得られた成果から、東シナ海の中でも地形改変の潮汐への影響が渤海で最も顕著であることが判明したため、当該海域の過去40年間における潮流以外に関する流況変化を数値シミュレーションにより調べた。その結果、埋め立てが急速に進行した天津市沿岸で岸沿いの流れが弱まり、土砂堆積による地形変化が生じた黄河デルタではデルタ東方の菜州湾において海流の循環パターンが従来の反時計回りから時計回りに変化したことが示唆され、これらの現象は衛星画像からも判読可能であった。現在、東シナ海に関する海洋研究の大部分は地形改変前の海岸線・海底地形を用いて行われているが、特に渤海に関しては最新の地形データを使用しないと正しい評価ができない可能性があることを本研究は示している。渤海は九州沿岸を含む東シナ海全体の生物生産にとって鍵となる海域の一つであり、中国経済の中心でもあるだけに今回の成果は中国の海洋環境変動の推定精度向上に寄与することが見込まれる。今後は数値モデルの空間解像度の向上を目指すほか、中国沿岸の河川からの流出物質の拡散過程に地形変化が与えた影響などを検証する予定である。 一方、これまでの研究を通じて、東シナ海の潮汐には台湾海峡を通じた南シナ海の潮汐の影響が大きく関与していることがわかってきた。そのため、南シナ海の沿岸潮汐推定の精度向上を目指し、当該海域の海底地形データセットも合わせて構築した。最新の海図などの情報を参照して得られた地形データを用いることで、既存の海底地形データを使用する場合に比べ、沿岸域の潮汐の推定精度が向上することが明らかになった。南シナ海は太平洋とインド洋をつなぐ重要な海域であり、今回の成果は当該海域のシミュレーション精度の向上に大きく寄与することが期待される。
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