2012 Fiscal Year Research-status Report
河川水系のネットワーク構造に着目した気候変動・人間活動の河川環境への影響評価
Project/Area Number |
23510026
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮本 仁志 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50283867)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道奥 康治 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40127303)
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Keywords | 流域管理 / 河川環境 / 河川水系ネットワーク / 河道位数 / 流量 / 河川水温 / 生態系 / 水資源 |
Research Abstract |
河川は源流から河口に至るまでツリー状のネットワーク構造でつながる.そのため,流域への様々な環境負荷に対して河川環境の応答を理解するには,そのインパクトが水系ネットワーク上でどのように伝播し,河川環境がどの程度変化を受けるのかを評価することが重要となる.研究代表者らはこれまで,河川水系の幾何構造に着目した解析を行い,流域環境の統合管理のための評価手法として河道位数を用いたネットワーク型の解析モデルが非常に有効であることを明らかにしてきた.本研究課題では,これをもとに気候変動や人間活動の複合インパクトが河川環境に及ぼす影響を明らかにする.今年度は,(1)河川環境の水系ネットワークモデルの精緻化,(2)自然・社会環境変化から生み出される環境インパクトのシナリオ設計,の2つの具体的項目に対して以下のような研究成果を得た. (1) 試験流域である揖保川で現地観測を継続し,流域規模で河川水温の時空間変動特性を詳細に分析した.それより本年度は特に,季節変化・空間変化と遅れ時間をもって河道にはいる横流入水温の数理モデルを検討した.この横流入水温モデルによって,これまでは冬期において過小評価されていた水温の再現性が大きく改善され,あわせて流域規模の河川水温形成における基底流出水温の重要性が示された. (2) 試験流域である揖保川を具体的な対象として念頭におき,環境インパクトのシナリオ設計を行った.自然環境変化では,IPCC第4次報告書やそれ以降の気候モデルにおける将来の降水量・気温の推定値を統計分析した.社会環境変化では,過去と現在の土地利用データから小流域ごとの土地利用変化をもとめ,それらと河川水温との相関分析を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初,(1)試験流域における流域規模での河川水温の時空間変動特性の解明,(2)河川水温に関する水系のネットワークモデルの精緻化,(3) 気候変動による自然環境変化のシナリオを設計,の3つを目標に研究を推進してきた.研究実績の概要に記述したように,これらは概ね達成できたと考えている.ただし、(1)河川水温の流域変動特性については,昨年度に引き続き現地観測を中心にフィールドワークを重視したため,気象擾乱やダム・井堰の影響,水田利用による影響,降雪・融雪時の水温変化など,より踏み込んだ実証分析までには至っていない.その一方で,(2)水系ネットワークモデルの精緻化では,新しい横流入水温の数理モデルの導入により,水系全体にわたって年間を通して十分な精度で水温分布が推定できるようになり,水系ネットワークモデルが完成された.これらに関しては当初計画どおりの進展をみている.以上より,今年度の総合的な達成度としては,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成25年度には,それまでの研究成果をもとにして河川水系のネットワークモデルを用いて気候変動・人間活動が河川環境へ及ぼす影響を評価する.自然・社会環境変化のシナリオに,ダム・堰などの社会基盤整備の有無を加えた統合シナリオを作成し,再構築された新しい河川水系ネットワークモデルを用いて環境インパクトに対する流量・河川水温の応答を明らかにする.降水量・気温などの気候変化に対する応答はもとより,水田・農耕地などの土地利用変化やダム・堰の有無などが複合的に作用する場合の環境応答を系統だてて評価し,ネットワーク上での各要因の相対的な影響を明らかにすることを目指す. 年度末には,本研究計画で得られた成果を纏めることによって水系ネットワークモデルの長所と改善点を示し,本モデルを流域統合管理の主幹解析ツールに発展させるための今後の研究方針をまとめる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に,(1)流域観測,(2)データ分析,(3)成果発表,(4)その他経費で構成される. (1)流域観測に関する研究費は,試験流域に約30カ所ある観測サイトについて年間数回の観測計画を円滑に実行するために必要な旅費,消耗品,観測補助・データ整理謝金,などを予算計上している.(2)データ分析に関する研究費は,本年度購入したワークステーションを用いて,分析結果の保存に必要な消耗品,資料印刷費などを予算計上している.(3)研究成果発表に関する研究費は,研究成果を国内外の学会にて報告する経費として旅費を,紙上発表するための経費として英語論文校閲費,研究成果発表費用を予算計上している.(4)その他の研究費は,研究実施に必要な論文資料の別刷費,会議費,交通費などを予算計上している.なお,今年度の未執行予算はごく小額であり,次年度予算のいずれかに組み込む予定である.
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Research Products
(14 results)