2011 Fiscal Year Research-status Report
表面海水の酸性化に伴うサンゴ石灰化に対する影響評価
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23510029
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
大出 茂 琉球大学, 理学部, 教授 (20117568)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 海洋科学 / 環境質定量化・予測 / 環境対応 / 環境分析 / 二酸化炭素鵜 / タイ / サンゴ礁 / 海洋酸性化 |
Research Abstract |
大気二酸化炭素濃度の増大に伴う海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響について研究を行った。サンゴが生息している海水のpHが低下し、アラゴナイト(炭酸カルシウム)に対する飽和度(Ω)が低下するとサンゴ石灰化速度の低下が無機化学(速度論)的見地から予想できる。したがって、沖縄、タイのサンゴ礁観測調査を行い、海水の化学分析からサンゴ礁の石灰化と飽和度(Ω)の関係に関するデータを得た。また、琉球大学の実験室および沖縄のサンゴ礁タイドプールをフィールドとしてサンゴ飼育実験を行い、サンゴ礁の石灰化と飽和度(Ω)に関する研究を行った。実験室のサンゴ飼育実験から海水pHの低下、すなわち海水のアラゴナイトに対する飽和度(Ω)の低下に伴って、サンゴ石灰化は低下することが明らかになった。さらに、サンゴ骨格結晶に含まれる微量元素および同位体分析を行ってサンゴが生息していた海の環境(温度、pHなど)指標となる元素、同位体に関する検索を開始した。サンゴ骨格中のフッ素、ホウ素(陰イオンとして溶存)がサンゴが生息していた海水の炭酸イオン(pHとリンク)に規定される可能性があるというデータを得た。サンゴ骨格中のホウ素含量とpHの関係に関する研究成果は、すでに国際学術雑誌へ論文として公表した。その論文作成過程で、サンゴ骨格中の陰イオンと海水pHの関係は、まったく研究例がなく、今後の研究課題であることが明らかになった。本研究の1つの目的はサンゴ骨格の化学、同位体分析からサンゴが生息していたサンゴ礁海水のpHおよびサンゴ石灰化の時のpHを推定することであり、そのような研究を通して、海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響を定量的に評価できるよう研究を展開中である。さらなる研究が必要とされる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンゴ骨格中の微量元素および同位体分析からサンゴ礁環境(温度、pH)指標となる元素、同位体を検索する研究を開始した。特に、サンゴ骨格中のホウ素含量がpH指標として使える可能性を検討し、研究成果を国際学術雑誌へ投稿し、受理された。計画した沖縄及びタイのサンゴ礁観測調査を行い、海水の化学分析からサンゴ礁の石灰化と飽和度(Ω)に関するデータが得られた。また、シェフィールド大学、マックラード教授とレーザー照射質量分析に対する共同研究を展開した。現在、得られたデータを解析中である。これらの研究を通して、海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響を定量的に評価できるよう研究を展開中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果をもとにして、沖縄およびタイのサンゴ礁において昨年度と同様にサンゴ礁観測調査を継続発展させる。タイでのサンゴ礁観測調査は、チュラロンコン大学、キングモンキット大学、ブラハー大学との共同研究として行う。沖縄およびタイのサンゴ礁観測調査では、サンゴ礁海水のpHおよびアルカリ度測定を行い、サンゴ礁の海水とサンゴを採取し、実験室に持ち帰る。サンゴが石灰化している時のpHを解明するために、表面電離型質量分析計(TIMS、琉球大学に平成8年度に設置)を使って、サンゴ骨格中のホウ素同位体比の測定を行う。ホウ素同位体から求めたpHとサンゴ礁で測定したpHを比較検討する。さらに、水深1000メートル(水温5度)に生息する深海サンゴおよび有孔虫1個体中のホウ素同位体比をTIMSを使って測定し、同位体交換平衡定数Kの値を推定する。正確な同位体交換平衡定数Kの値を決定することは非常に意義がある研究である。また、サンゴ骨格(アラゴナイト結晶)中に含まれる微量元素をICP-MS(琉球大学に設置)を使って測定し、サンゴが生息していた海の環境(温度、pH)指標となる元素、同位体の検索を続ける。このような継続研究を通して海成炭酸塩を材料とした古pHメ-タ作成を試み、海水酸性化がサンゴ石灰化に与える影響を定量的に評価できると考えられる。さらに、研究成果を公表し、論文作成の準備をする。 沖縄でのサンゴ採取、移植には沖縄県水産課の承認、許可が必要である。研究にサンゴ採取が必要な時には申請し、許可を得る予定である。タイでのサンゴ礁調査では、常に行動を共にするタイの共同研究者が政府に申請し、許可を受ける予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
沖縄およびタイのサンゴ礁において昨年度と同様のサンゴ礁観測調査を継続発展させる。サンゴ礁において海水のpHおよびアルカリ度測定を行い、サンゴ礁の海水とサンゴを採取し、実験室に持ち帰る。サンゴ礁調査には大学院生の調査補助を必要とする。サンゴ礁で採取した試料の分析には、表面電離型質量分析計(TIMS、琉球大学に平成8年度に設置)を使って、サンゴ骨格中のホウ素同位体比を測定する。ホウ素同位体から求めたpHとサンゴ礁で測定したpHを比較検討する。さらに、深海サンゴおよび有孔虫1個体中のホウ素同位体比をTIMSを使って測定し、同位体交換平衡定数Kの値を推定する。また、サンゴ骨格(アラゴナイト結晶)中に含まれる微量元素をICP-MS(琉球大学に設置)を使って測定し、サンゴが生息していた海の環境(温度、pH)指標となる元素、同位体を検索する。上記の継続研究を計画している、したがって、旅費、ガラス電極等消耗品費、大学院生への調査補助謝金、傭船費用等に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)