2013 Fiscal Year Research-status Report
河川水温変動シミュレーションを用いた全国の淡水魚類に関する自然再生支援システム
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23510037
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
亀山 哲 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 主任研究員 (80332237)
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Keywords | 河川水温 / 水文モデル / 釧路湿原 / 気候変動 / GIS / 釧路川 / 自然再生 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
研究3年目のH24年度では、対象流域である北海道釧路川流域において、GISデータベースの構築を進めるとともに、そのデータを入力条件とした水文モデル(分布型降雨流出モデル)のパラメータフィッティングと精度向上を試みた。現地観測については河川水温モニタリングを継続し、データセット拡充(長期化)を進めた。計算は2011年~2012年とし、水位・流量・水温の再現を行った。今年度はさらに将来予測シナリオとして、気温・降水量において各条件を設定し、その影響評価を開始した。主な実績としては次の3点である。 1. 水生生物の生息情報のデジタル化については、既存生物データ(水辺の国勢調査データ等)に加え、流域圏の釣り人が報告する釣果データを2013年度分まで整理した。 2.河川水温モニタリングにおいては継続的にデータロガーの回収・再設置を行い、連続的な観測データをGISデータとして整理した。全観測地点は合計約40地点であり,現在も記録継続中である。 3.再現計算におけるシナリオは、気温上昇が2012年と比較して+2℃、+3℃、+4℃の条件。降雨量については2012ベースに対して115%の増加を設定した。 研究成果の一部を国際学会The 3rd Biennial Symposium of the International Society for River Science, August5-9, 2013 Beijing, Chinaにおいて口頭発表した。発表タイトルはFlow and Water Temperature Simulation with Future Scenario for Nature Restoration in the Kushiro Watershed, Japan。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は融雪出水・秋の季節降雨共に規模が非常に大きく、湿原の水位が平常時よりもかなり高い状況が続いた。この影響で現地調査は困難を極め、水温ロガーの回収には非常に危険が伴う状況であった。回収率は概ね65%程度であった。再設置は予定通り進めているため、今後は現地モニタリングを継続するとともに、より長期的なデータからモデルパラメータの精度を高めより正確な再現計算を行予定である。 水文モデルの開発も順調に進み、精度の向上とともに、各種の将来シナリオを組み込んだ再現計算を開始する事が出来た。予測値のばらつきはほぼ想定内であり、今後より長期的な観測データの利用によって予測精度の向上が期待できと考えている。今後は更なるモデル推定精度向上のため、土地利用データの高度化・降雨郷土条件の多様化等を含め年間流況解析さらに進める方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度以降は水温変動シミュレーションにおいてシナリオベースの解析を進める予定である。特に気温上昇と降雨量変化、また河道付近の日射社団条件なども視野に入れモデルの高度化を進める予定である。具体的には気温上昇が極端な場合や河畔林の伐採に伴う河道内への日射量の増大等も含め再現計算を行う。また継続中の水温データのモニタリングについては今年度も解析と並行して行い、最長で3年以上の連続データの取得を目指す。また研究成果については順次成果に応じて、口頭発表・誌上発表を目指す方向である。生物生息情報の整理の面では専門家らによる聞き取りに加え、水産業関連機関等からも情報を収集し、特に経年的な定量性のあるデータの入手を行う予定である。 今後の推進方策としては、より詳細な流域の土地利用条件を設定して再現計算を行うと共に、流域内の生態系サービスを高められる形での変化シナリオを各種設定し、結果を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2013年度は次年度使用額として8万4千円程度を繰り越すという形となった。これは主に現地調査に関わる旅費について、早割等の航空券等を利用し、積算との差額が出たためである。 次年度使用額の執行にあたっては、特に水温ロガーや現地調査消耗品代また専門書籍等の購入に充当する予定である。
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