2011 Fiscal Year Research-status Report
太陽光発電に対するフィード・イン・タリフ制の経済評価と統合的促進策の研究
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23510058
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ドイツ / 再生可能エネルギー / 固定価格買取制 / 風力発電予測 / 給電データ / 系統連系 / Balancing Energy |
Research Abstract |
再生可能エネルギー電力(以下、再エネ)の固定価格買取制度(feed-in tariff、以下、買取制)について、ドイツと日本の制度を比較し、日本の買取制が考慮すべき点を明示した。(1)買取価格と収益性、(2)分担金算定方法、大規模電力使用者への分担金減免、(3)送電配電業者の系統拡張義務、風力と太陽光発電の系統連系の実態、(4)風力発電の供給過剰時における給電制限、予備供給力確保対策、(5)発電・送電分離政策、(6)再エネに対する公的低利融資を分析した。 ドイツの多くの再エネ投資では、IRR7%~10%、太陽光発電の年間売電収入比率(システム価格に対する年売電収入比率)は10%~13%である。他方、分担金の上昇により、大規模電力消費者の減免を拡大した。送電配電業者に再エネの優先接続を義務づけ、発電・送電を分離し、送電会社に系統拡張義務を課している。2011年には、NABEG(送電網拡大促進法)を整備した。風力発電の供給過剰に対応する給電管理(給電制限)、需給調整のための風力発電給電予測システム、給電情報の開示制度を整備した。予備力確保のために、Regelleistung(入札制度による予備供給力調達制度)を整備している。KfW 銀行による低利融資が融資リスクを低減させている。 研究業績 (1)竹濱朝美(2011)、「再エネ普及のカギは買い取り価格,参考になるドイツの先進性」、エコノミスト、2011 年9 月6 日号、pp.84-86。 (2)竹濱朝美・梶山恵司(2011)、「再生可能エネルギー買い取り制度(FIT)の費用と効果」、植田和弘・梶山恵司編著、「国民のためのエネルギー原論」第7章所収、pp.195-223、日本経済新聞社。 (3)竹濱朝美(2012)、「再生可能エネルギー電力買取制の制度設計上の考慮点― ドイツEEG の費用と効果の分析から」人間と環境、38巻1号、pp.13-25、日本環境学会。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね、順調に進行している。(1)ドイツと日本の買取制制度設計の分析では、ドイツ側でEEG会計についての適切な協力者を得ることができ、作業が進んだ。分担金算定方法において、ドイツでは買取制の収入と費用を計算する方式であるのに対して、日本では、回避可能費用を差し引く方式である。このため、日本方式のほうが分担金が高くなりやすいことが判明した。これについては、今後発表する。 (2)ドイツの送電業者Amprion社のバランシング・エネルギー担当者、電力技術者からよい協力を得られたため、風力発電予測システムの誤差率、風力発電の出力変動に対する需給調整方法の調査が進んだ。ドイツでは一日前に風力発電、太陽光発電の給電予測が開示される。給電データの分析により、これらの予測誤差は非常に少ない(平均5%程度)。需給バランス調整において、予測システムが非常に効果を発揮していることが明らかになった。これらについて一部の研究成果は、人間と環境(日本環境学会)38巻1号に発表した。 (3)再生可能エネルギーの系統連系においては、送電業者が系統の需給バランスをどのようにして維持しているかについて給電データの分析が必要である。ドイツTrier Applied Science University、IFAS研究所との協力により、給電データの分析方法の解説を得たため、給電データの入手方法と分析が可能になった。ドイツ北部では、冬場には地域の電力需要を遙かに上回る給電量が風力から給電され、南部に送電していること、風力発電の給電量の変動の速度、変動幅の大きさ、1日前予測の精度が明らかになった。これらの一部は発表済みである。送電会社Amprion社から良い協力が得られたため、バランシング・エネルギー(予備供給力)の入札方式について分析が進んだ。これについては、2012年6月、日本環境学会、研究発表大会で発表する。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ドイツの買取制と再生可能エネルギー長期目標について分析を行う。(1)EEG2012年の改正、再エネ電力直接販売制度、グリーン電力インセンティブを調査する。(2)買取制分担金の算定方式について、日本とドイツの比較を行い、回避可能費用の妥当性について考察する。電力集中型企業に対する分担金減免条件を確認する。(3)再生可能エネルギーの系統連系の実態、系統安定化対策、送電・配電業者の系統拡張義務、送電業者の系統拡張費用を調査する。ドイツ北部では風力発電供給力が電力需要を上回っているため、系統拡張と系統安定化対策、需給調整状況を調査する。(4)需給バランス調整に関する給電管理(給電制限)、風力発電予測システムの精度、Regelleistung による供給予備力調達の入札制度を調査する。風力発電の給電データから風力発電依存度を確認する。 2)ドイツ環境省の再生可能エネルギー政策担当者、InfEエネルギー経済分析シンクタンク担当者、送電会社AmprionおよびEnBWの担当者、Trier Applied Science UniversityのProf. Hartard、 Prof. Heck、同大学IFAS研究所研究員Dr. Synwoldt 氏、ドイツ太陽光発電協会BSW-Solar、Fraunhofer ISEの再生可能エネルギー政策担当者、再エネ発電事業Juwi社の公共事業担当者などから協力を得る。経費は、ドイツにおける現地調査旅費に使用する。 3)日本の再生可能エネルギー導入の地域事例を分析する。関西地域と東北の震災被災地で再生可能エネルギーの導入の事例調査を実施し、これに基づき、再生可能エネルギー導入の建設コスト、系統連系コストを確認する。本年度は、太陽光およびバイオマス発電に関する導入事例から、いくつかの投資タイプごとに建設コストを確認する。経費は、国内旅費に使用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)ドイツ再生可能エネルギー導入事例の調査。ドイツ北部での風力発電調査、南部マインツ地域での太陽光発電とバイオマス発電事例の調査、バイオマス村の調査のため、10日間、フランクフルト~関空往復、航空運賃(25万円×1回)。交通ガイド兼レンタカー運転手への謝金+レンタカー代または燃料代(5万円程度)。 (2)ドイツ太陽光発電および風力発電の給電データの分析に関する研究会参加(Trier Applied Science University, IFAS研究所での参加を予定)、BSW-Solar、送電会社Amprion社訪問調査。10日間、フランクフルト~関空、航空運賃(25万円×1回)。フランクフルト~ベルリン往復、ドイツ特急電車代(約4万5000円程度と予測)。 (3)関西地域での再生可能エネルギー導入事例の調査(滋賀県東近江、京都府美山町など)。交通費+レンタカーまたは車燃料代(1万円程度)。 (4)岩手県での再生可能エネルギー導入事例の調査。5泊、盛岡~京都駅、新幹線往復代。22,980円×往復×2回。(5)日本環境学会発表(別府大学)、16,010円×往復×1回。(6)研究会参加、資料収集旅費。京都~東京、12,710円×往復×5回×1泊。(7)以上の経費については、まず交通費に執行する。宿泊費の不足が発生する場合は、自己負担とする。(8)風力発電の給電データ処理について、データ処理会社に委託する。データ処理を依頼する理由は、15分間隔×1年分の送電データ、風力発電給電データ、太陽光給電データは非常に大きなCSVデータであるため、エクセル作業が可能なように、データ加工を依頼する。約5万円程度を予測。
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Research Products
(6 results)