2012 Fiscal Year Research-status Report
太陽光発電に対するフィード・イン・タリフ制の経済評価と統合的促進策の研究
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23510058
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
竹濱 朝美 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60202157)
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Keywords | 再生可能エネルギー / 太陽光発電 / 固定価格買取制 / 優先接続義務 / 系統拡張義務 / 系統連系 / 出力抑制 / 分担金減免 |
Research Abstract |
①ドイツと日本の固定価格買取制の制度設計、および太陽光発電の普及効果を比較した。日本の買取制には、再生可能エネルギーの優先接続、電力系統の拡張義務、発電送電分離が欠落している。一般電気出力抑制規定では、ドイツでは、電力系統の負荷過大や隘路発生の回避を理由とする出力抑制については、系統運用者の負担において、再エネ業者に対し損失所得の経済的補償を行なう。これに対して、日本では事業者に系統拡張義務が課していないため、年30 日までの出力抑制には経済的補償が無く、原子力に回避措置の義務もない。日本では再生可能エネルギー電源の優先接続、優先給電義務がないため、一般電気事業者が送電配電網の系統容量の限界を理由に、連系容量を制約できることになっており、結果的に、接続契約の締結を事実上制約できる構造になっている。 ②再生可能エネルギーの系統連系にむけた制度設計を探るため、ドイツの風力発電と太陽光発電の系統連系について、給電データを分析した。ドイツでは、風力と太陽光の出力、24時間前出力予測、当日取引、出力抑制について、系統運用者に15分間隔の給電データを開示させている。太陽光と風力を合わせて、年間最大出力で23GWを給電し、風力給電は最大で国内load の44%(50hertz区域:122%、Tennet区域:76%)に達する。ドイツの風力発電の出力予測の誤差は5%以下、太陽光の予測はこれより誤差が大きい。日本の一般電気事業者は風力発電の連系は系統安定性を脅かすとの議論が強く、風力の系統連系に厳格すぎる上限(系統利用可能量)を設定する。しかし、実際にどの程度の風力が給電されているかについて、根拠となる15分間隔給電データを開示していない。情報の透明性確保に向けて、給電データの開示制度が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①再生可能エネルギーの固定価格買取制の制度設計に関する日独比較を実施した。日本の買取制には、系統運用者(一般電気事業者)に系統拡張義務が無いこと、出力抑制に対する補償義務が不十分であることが問題である。ドイツのエネルギー事業法(EnWG)の関連条項について、ヒアリングを実施した。これらについては、「ドイツの再生可能エネルギー買取制の費用と効果」として、上園昌武編「先進事例から学ぶ再生可能エネルギーの普及戦略」本の泉社出版などに発表した。 ②日本の電力会社の間では、大量の太陽光発電の系統連系が系統安定性を脅かすとの意見が多数あることから、風力発電及び太陽光発電の予測システムの精度とその給電情報の開示体制、出力抑制の状況を分析した。これについては、風力エネルギー学会で発表した。ドイツの送電会社、配電会社の給電データの分析方法について、日本の風力エネルギー関係者、ドイツの送電会社配電会社のエンジニアから好意的な協力を得られたため分析が進んだ。 ③国内の再生可能エネルギーの導入に関しては、系統連系が障碍になることが大きいことから、太陽光、小水力の地域事例について、系統連系の問題点をヒアリングした。ドイツでは、配電網に給電される風力と太陽光の電力が過剰の場合、高圧の配電網または送電網に逆潮流させているのに対して、日本では配電網変電所での逆潮流を認めない系統連系技術規則であること、配電網変電設備における電圧調整装置が未整備であること、系統連系手続きが複雑かつ不統一であることが問題である。これについては、国内再生可能エネルギー事業者から協力をアドバイスを得ることができた。 ④再生可能エネルギー買取制の費用と原子力発電費用の比較について、Reforem Meetingで発表した。ベルリン自由大学関係者との新しいネットワークをつくることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①電力多消費企業への減免措置について日本とドイツの買取制の比較分析を行なう。再生可能エネルギーの普及と分担金の上昇のバランス、企業減免のバランスについて、ドイツの経験と比較分析を行なう。 ②日本の再生可能エネルギー普及では系統連系の障碍が大きい。再生可能エネルギーを最大限に給電していることについて、15分間隔などで給電データを開示させ、透明性を確保する制度が必要である。ドイツの風力太陽光の給電データを分析し、系統連系の実態、出力予測システムの精度、情報開示体制を確認する。これを通じて、日本の買取制に給電データ開示体制の整備を提案する。 ③再生可能エネルギー電源が系統に最大限に給電されるためには、優先接続規程とともに、一般電気事業者による安易な出力抑制を防止する仕組みが必要である。供給過剰時の出力抑制とその補償制について、日本の買取制度とドイツのEEGおよびエネルギー事業法EnWGの比較分析、出力抑制補償ガイドラインの翻訳を行なう。 ④日本の風力、太陽光発電の高圧系統連系、および低圧系統連系の問題点を事例調査に基づき抽出する。具体的には、a)系統連系にかかる電気品質の技術基準とバンク逆潮流の規程について、ドイツの系統運用の実態と日本の運用方法の違い、接続技術規則の比較分析を行なう。b)各電力会社の系統連系の接続基準書およびその情報開示と連系申し込み手続きを分析する。c)系統連系にかかる電気品質の確保にかかる技術基準、単独運転検出装置の品質認証について調査する。系統連系手続では、一般電気事業者から、電気品質の確保、特に単独運転検出機能の品質について厳格な要求が出る。小水力、地熱発電では、単独運転検出機能の認証制度が未整備であることが、普及の障害になっている。これについて調査する。以上について、ドイツと日本の事例調査、ドイツの送電業者、配電業者へのヒアリングにより分析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①ドイツ送電会社、配電会社、再エネ発電業者への調査の旅費、宿泊費(予算の50%)。特に、ドイツ送電会社(Amprion, 50hertzなど), 自治体電力公社 Nordersted Stadwerke、Rhein Energy など配電会社への調査、風力発電協会、太陽光発電協会BSW-Solar, 研究機関(Ecofys 他)、ネットワーク規制庁(Bundesnetzagentur)などへの調査旅費。 ②海外研究発表会のための旅費・宿泊費(予算の約20%、REFORM Mmeeting, 他) ③日本の再生可能エネルギー事業者および環境NPOヒアリングの旅費、宿泊費(予算の10%)。特に岡山エネルギー未来の会、JAG国際エナジー、福島県内の再生可能エネルギー導入事例、別府、大分県の地熱、太陽光発電事業の調査など。 ④国内学会発表のための旅費、宿泊費(予算の10%。日本消費経済学会、日本流通学会、風力エネルギー学会など) ⑤英文校閲料、原稿の編集校正アルバイトのための謝金(予算の10%)。ドイツエネルギー事業法EnWG、EEG法の系統連系規程、出力抑制規程の条項の翻訳の校閲作業について、ドイツ語専門家への謝金支払いに支出する。ドイツの太陽光および風力の給電データの読み取り方法に関する指導に対して、ドイツ送電会社専門家に支払う謝金に支出する。
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Research Products
(10 results)