2013 Fiscal Year Research-status Report
53BP1によるDNA二重鎖切断端の運動性亢進は、末端結合修復能を向上させるか
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23510067
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
橋本 光正 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (70293975)
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Keywords | 53BP1 / Rad18 / テロメア / TRF2 / DNA二重鎖切断端 / 非相同末端結合修復 / CO-FISH / T-SCE |
Research Abstract |
53BP1は、特にG1期細胞において、DNA二重鎖切断(Double strand break:DSB)の非相同末端結合修復に関与する。本研究は、テロメア非保護のDNA断端の運動性を指標として、53BP1がどのようにして非相同末端結合修復活性を亢進させているのか、Rad18の関与はどうか、その機序と調節機構の全容を明らかにする。 研究成果 1. 非保護テロメア端の末端結合修復と53BP1、Rad18の関係(1)実験系の構築について、染色体末端結合修復について、その結合の方式を定量的に評価する系を構築した。 具体的には染色体末端保護タンパクTRF2のsiRNAを用いて染色体末端を露出した状態を誘導し、その末端の結合修復活性をTelomeric PNA FISHを用いて定量的に測定する系を構築した。(2)53BP1-/-MEF、Rad18-/-MEF、野性株MEFを用いた非保護テロメア端の結合能についてRad18-/-MEFは野性株MEFと同等の結合能を示した。53BP1-/-MEFの結合能は著しく低下することを示した。 2. 非保護テロメア端の末端結合修復と細胞周期依存性(1)Chromosome Orientation (CO)-FISHによる末端結合の細胞周期依存性CO-FISHを用いて、末端結合の細胞周期依存性を検討した。その結果、Rad18-/-MEF、野性株MEFにおいて、末端結合の約80%はcromosome type、約20%はchromatide typeの結合であった。1の結果と合せてRad18による末端結合の関与は認められないと考えられる。(2)53BP1-/-MEFにおいて、CO-FISHの結果から、T-SCE(テロメア末端姉妹染色体分体組換)が高頻度に起こることがわかった。このことは、極めて相同性の高い部位における組換修復の機構を検討する上で重要な知見を与えてくれるものと考えられる。3) 53BP1-/-MEFにおいて、CO-FISHの結果を詳細に検討すると、lagging strandとleading strand、lagging strand同士、leading strand同士のT-SCEに大差は認められなかった。このことから、T-SCEは細胞周期依存性はないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時点に考えた実験系の構築は予想通りの進行となった。Telomere RPA FISH、Chromosome Orientation FISHによる染色体末端結合能の解析および染色体末端の変異解析は予定通り進行した。またRad18-/-MEFと53BP1-/-MEFにおいて、申請時点に予想した実験結果とは異なる結果が得られたが、その実験結果はDNA二重鎖切断の修復モデルを考える上で、新しい機構を想起させるものであった。現在、その結果を基に、新しい機構モデルを立てて、それを検討中である。また上述の通り、53BP1-/-MEFにおいて、CO-FISHの結果を詳細に検討すると、lagging strandとleading strand、lagging strand同士、leading strand同士のT-SCEに大差は認められなかった。このことから、T-SCEは細胞周期依存性はないと考えられる。これらの実験結果から、53BP1による組換え抑制機構、及び他の53BP1と複合体を形成するDNA修復酵素との相互作用を構築している。
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Strategy for Future Research Activity |
53BP1-/-MEFにおいて高頻度に観察されたT-SCEについて、その機構を明らかにすること。具体的には、現在、構築中あるいは構築済みの53BP1機能ドメインは細胞に戻し、T-SCEを調べ、その機構を担う部位を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、実験計画では、予期しない実験結果が得られた。各種DNA修復遺伝子欠損細胞において、染色体末端融合の差異が観察されると予想していたが、Rad18-/-MEFにおいて、野生型との大きな差は観察されなかった。さらに553BP1-/-MEF細胞において、全く予想していなかったT-SCEが高頻度に観察された。これらの結果を受けて、計画開始時の仮説を修正し、新たなモデルを構築したため、計画完了が遅れ、次年度使用額が生じた。 物品費として740,000円を充てる。購入品としては、培養生物に関するもの、分子生物学実験に関するもの、蛍光顕微鏡などに適宜充当する計画である。
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Research Products
(3 results)